×鳴門

はたけに料理を教える約束をした、その翌日、早速オレの家には、ミナト班の3人が集まっていた。
ちょうど今日は3人とも休みらしいしな。
ちなみにリンは、オビトが声を掛けてくれたらしい。

「んじゃあ、早速始めるぜ」
「コウヤ君、お料理上手だもんね。楽しみだなぁ!」

リンやオビトは、結構頻繁に遊びに来てくれるから、オレの料理の腕もよく知っている。
昨日までオレの家には一度も遊びに来たことがなかったはたけが、いつも通りクールな様子で問い掛けてきた。

「で?最初は何作るの?」
「ゔむ。事前にリサーチをした結果、はたけ、お前の好物がサンマの塩焼きと茄子の味噌汁だと言うことが判明したぁ」
「ちょっ……そんなことどうやって調べたの!?」
「お前の諜報能力気持ち悪いな!」
「気持ち悪いとか言う奴には教えてやんねーぞぉ」
「わー!悪かった、悪かったって!」

オビトはいつも通りにあしらって、オレは今日のメニューを発表した。

「そう言うわけなので、今日は天ぷらを作ろうかと思う」
「何でオレの好物調べた結果、オレの嫌いなもの作ろうと思ったんだ!?」
「人は好き嫌いを克服してこそ、一人前になれるんだぁ。甘えてんじゃあねぇぞ」
「お前なんでそんな偉そうなの!!」
「お前じゃねぇ、先生と呼べぇ。それと、次からは手を挙げてから発言するようにするんだなぁ、はたけ……いや、カカシ訓練生」

ビシィッ!と指差した先で、はたけは……いや、カカシはぐぬぬ、と悔しそうに呻いている。
ふふふ、今日はオレが教える側だから、オレの方が断然立場的に強いのだ。

「でもオレ、天ぷら食べられないし」
「アレルギーって訳じゃねぇんだろ。安心しろぉ。超うまい天ぷらの作り方、教えてやるからよぉ」
「……」

信用できません、という顔をされるが、そんなのに一々構う気はない。
オレは不満そうなカカシを置いて、テーブルの上に食材を広げた。

「さて、今回用意する食材は……、ここを見れば一目でわかるなぁ」
「コウヤ君、そこは全部口に出して確認するものじゃない?」
「面倒だから、カットで」

まあほらあれだ。
天ぷら粉とか、海老とか芋とか、卵とか。
まあ大雑把にそんな感じで色々と用意した。
用意した食材の下拵えを教えながら、オレは何となしに問い掛けた。

「そう言えばよぉ、何で突然料理を教わりたいなんて言ってきたんだ?」
「え?」
「オレはてっきり、お前には嫌われてるんだと思っていたがぁ……」

初めて会った時がアレだったのだ。
嫌われてないと思う方が、難しいだろう。
カカシは少し考えてから、むっつりと不機嫌そうな顔をする。

「別に……そんなの一々、お前に言う必要ないだろ」
「ちょっとカカシ……、そんな言い方よくないよ?」
「いや、言いたくねぇならそれで良い。聞いたところで、どうこうする気もねぇしなぁ」
「コウヤお前……大人だな……」
「普通だろ、こんなの」

肩をすくめて、その話はそこで打ち切る。
まあきっと、彼のプライドに関わる問題だったのだろう。
詳しい事なんざわかりゃあしねぇが、とりあえずはそう考えておくことにする。
さて、そんなことを話している間に、気が付けば美味しそうな天ぷらと、ついでにサンマの塩焼き、そして味噌汁が出来上がる。
味噌汁の具は、残念ながらナスではなく、豆腐とわかめ、油揚等々のスタンダードな味噌汁だが、……うん、なかなかいい出来だと思う。
ちなみに、作ったのは天ぷらがカカシとリンの共同。
サンマはカカシが、味噌汁はリンが単独で作って……あ?オビト?
奴は端からやる気はなかったらしく、始終詰まらなそうに茶を啜っていた。
ここでカッコいい包丁捌きの一つや二つ見せることができたら、リンの気もちょっとは引けるだろうになぁ。

「さて、じゃあ早速食おうぜ……」

テーブルに揃った料理を見て、オレがそう言った時、突然玄関のチャイムが鳴った。
来客なんて珍しいな、などと思い、首を傾げながらドアへと向かう。
敵意は……感じられない。
この世界にはインターホンにカメラなんてついてないし、悲しいことに今の身長では覗き穴にも届かないので、玄関を開けてみるまで、来客の正体はわからないのだ。
ミナトやクシナさんではない。
あの人達はカギが開いてようが掛かってようが、平気で家に上がってくるからな。

「はーい、誰ですか……フガクさん?」
「……久しぶりだな」

ドアの外にいた予想外の人物に、オレは驚き目を見開く。
なぜフガクがここに……?
少し考えて、恐る恐る尋ねる。

「オレ、何かまずいことした?」
「心当たりがあるのか?」
「ないから今、困ってる」
「……安心しろ。今回来たのは、ごく個人的な用事だ」
「?そう、か……?」

よくわからないが、そういうことらしかった。
42/62ページ
スキ