×鳴門

朝、布団から起き上がった時、オレは何故か泣いていた。
頬に触れると、冷たい水滴が手につく。
自分が泣いていたのだと、すぐにわかった。
夢でも見ていたのだろう。
覚えてなかったけれど、たぶんそうなんだろうと、予想する。
初めてのことではなかった。
ごくたまにだけれども、きっと気付かぬ内に過去を思い返して、涙を流してしまうのだろう。

「お゙い、オレはもう……」
「いや、無理はするな。オレの配慮が足りなかった」
「コウヤ君はまだまだ子どもなんだから、我慢しちゃダメだよ」
「ゔ……おう……」

こういうことは初めてではなかった。
だが、誰かの前で、っていうのは初めて。
目を覚ましたとき、フガクとヤスツナは、酷く心配そうな顔をして、オレのことを覗き込んでいた。
そして現在、何がどうしてそうなったのか、オレはフガクにおんぶされ、ヤスツナを送るために歩いていた。

「考えてみれば、例え鬼崎一族の天才でも、お前はまだ子どもだ。任務についても、その他についても、無理をさせ過ぎた」
「木ノ葉のお偉いさんは、いったい何を考えてるんですかね!こんなちっちゃい子に無理させて!」
「オレは何ともねぇ……」
「何ともなくないだろう」
「フガクさん、コウヤ君のこと、ちゃんと見ていてあげてくださいね!」
「わかっている」
「待ってくれ、オレがわかってない。どうしてこうなったぁ」

なにこれ、何なんだこれ。
オレを背負って歩くフガクは、何故かやたらと責任感じてるし、ヤスツナは怒ったようにぶちぶちと文句言ってるし。
別に木ノ葉であったこととか、昨日のこととか、何にも関係ないと思うんだけどなぁ。

「オレ平気だもん……」
「良いから大人しく背負われていろ」
「あ、ここっす、オレの宿。送ってくれてありがとうございました!」

むぅっと唇を尖らせて、フガクの背中にしがみついている内に、ヤスツナ達が泊まっている宿へとついた。
昨日は遅くなってしまったから、ヤスツナはオレ達の宿に泊まらせていた。

「また会いに行きます!二人ともお元気で!」
「じゃあなぁ」
「またな」

彼とは色々あったけれど、別れは案外あっさりで、オレ達はその宿にすぐに背を向けて、木ノ葉へと帰るために歩き出した。

「なあ、やっぱり自分で歩いて……」
「黙って掴まってろ」
「……はい」

行きと違って、帰りはあっという間に木ノ葉へとつく。
つく頃にはもう夜だったけれど、二日かけた行きと比べれば、だいぶ短い。

「あのさ、フガクさん……?」
「なんだ?」
「そろそろ降ろしてほしいなー、なんてー……」
「このまま火影邸まで行くぞ」
「マジで!?」

里についても、フガクさんはオレを降ろしてはくれなかった。
これはいったい、何て拷問だ。
というか、フガクあんた、こんなキャラじゃあないだろう。
なんで強面のお兄さんが、六歳児おんぶしてんの?
シュールすぎるだろ!
そしてそのシュールな状態のまま、オレ達は火影邸に到着する。

「火影様、入ります」
「ちょっ!まっ……このままかぁ!?このまま入るのかぁ!?」
「何か問題でもあるのか?」
「ないのか!?逆に聞くけど、ないのかぁ!?」

制止するオレの声も聞かず、フガクは執務室へと入る。
ここに来るまでは、時間帯的にちょうど誰もいない時だったのか、人に会うことはなかったんだが、執務室なら確実に誰かいる。
そしてオレ達が執務室へと入った瞬間。

「ああ、フガクさ……ぶふっ!?」
「な……」

中で火影と話していたらしきミナトが盛大に噴き出し、火影も絶句したのだった。
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