×鳴門

アカデミーへの在籍期間は、基本的に6年。
ただし優秀な者ならば、飛び級も可能である……が、オレは飛び級する気はない。
これ以上優秀になっちまったら、マジでダンゾウに取っ捕まって、暗部に連れていかれそうだし。
そんなわけだから、オレは授業を適度にサボりながら、テストを無難にこなしている。
なんつー作業ゲー……。
退屈なことこの上ない。
アカデミーの屋上、陽の当たる暖かい場所に寝転んで、うとうとと微睡みながら、オレは授業が終わるのを待っていた。
教室には影分身と式神術の応用をした強化版影分身を置いてあるから、サボりがバレることは十中八九ない。

「紫紺ー、お昼御飯どーするー」

オレが隣で寝ている紫紺に間延びした声で訪ねると、紫紺は薄目を開けてパタリと尻尾を振る。

「このままここで食えば良いだろう」
「そうだなぁ……」
「それよりもお主、次の授業はどうするのだ?出るのか?」
「ん゙ー、体術だし、出るかなぁ」
「そうか……、む……?」
「あ゙あん?誰か来やがったなぁ」

人の気配を感じて、むくりと起き上がった。
人が気持ちよく寝ている時に、一体誰だ?
オレが隠れたその直後に、ドアが開いて子どもが入ってきた。
……子どもっつっても、オレと同学年のクラスメート……しかもよくふざけて目立っている奴だった。
名前は確か、うみのイルカとか言ったか。

「えーと……ここらで良いかな」

そんなことを言いながら、イルカはドアの側に座り込む。
ごそごそと取り出したのは弁当……って授業サボって早弁かよ。

「どーする紫紺。移動するかぁ?」
「ふむ……そうするか」

オレと紫紺は屋上から退避する。
因みにドアからだとバレるので、屋上の縁からの飛び降り退避である。
忍者ってのはスゴいもんで、チャクラを足に集中させ、壁に吸着させることで垂直歩行が出来るのだ。
さっさと地面まで降り、近くの木の上に場所を陣取る。

「ここなら次の授業の場所にも近ぇし、丁度良いなぁ」
「……昼もここか?」
「お゙う」

アカデミーでのオレの生活は、とても平和に平穏に流れていく。
……平和が過ぎて暇、ってのが悩み事とは、幸せだな。
明日からはサボっている間に何をするか考えてこよう。
そんなことを考えながら、昼休みは過ぎ、そして体術の授業が来た。
初めの内は型の練習、他に軽い組手とか……まあ退屈なのが色々と。
今日で3回目の授業だった。

「今日は何人かに組手を行ってもらおうと思う」

先生の一言で、生徒たちは一気に興奮する。
そんな中でオレは気付かれないように一人ため息。
それが気付かれてしまったのか、それとも偶然か、先生はオレを指差すと笑顔で言った。

「じゃあ鬼崎、始めにお手本として、先生と一緒に組手をしなさい」
「……はーい」

気だるい声で答え、オレはノロノロと立ち上がった。
あー、何で選ばれたのか、彼の目を見たら、何となくわかった。
こいつ、オレを痛め付ける気だ。
面倒くせぇな……弱い奴を手加減して黙らせるってのは……。
張り付けたような笑顔の男に、オレは目に剣呑な光を携えて向き合ったのだった。
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