×鳴門
さて、オレはここ2週間ほど人から離れて生活していたせいで忘れかけていたのだが、そろそろ里は春である。
春……出会いと別れの季節、花咲く季節、目覚めの季節、……入学式の季節。
そう、忘れていたが、オレは忍者アカデミーへの入学を控えていたのだった。
忍服以外のモノは揃っていたから、気付いたその日に慌てて忍服を買いに行き……、いや、行こうとしたが追い返される気がしたので、家中の布やら何やらをかき集めて自分で作った。
こんな時こそのヴァリアークオリティー。
あっという間に服は完成した。
中華っぽい感じの、そこそこ自信作のそれを着て、今日、オレはアカデミーの入学式を迎えたのであった。
「皆さんは今日から、この教室で共に学ぶ仲間です!仲良くしましょうね!」
「はーい!」
子どもって元気が良い。
オレはついていけるだろうか。
若い男の教師の言葉に、周りの子ども達が揃って返事をする。
オレの返事は尻切れトンボに彼らの声に掻き消されていった。
これでも前世、小学校ちゃんと通ってたんだけどな……。
なんかこれ、生まれ変わる度についていけなくなりそう。
「それでは皆さん!隣の人とご挨拶しましょうね!」
遠い目をするオレにはお構いなしに教師の話は続いていて、何だか知らんが自己紹介し合う流れになっているらしい。
隣の男の子と向き合って、まずはお互いお辞儀。
「オレ、うみのイルカ!よろしくな!」
「……鬼崎コウヤ、よろしくな」
と、まあこんな具合に、快活そうな少年と挨拶を交わしたのだった。
* * *
「それでは、授業を始めましょうね!」
早速授業が始まったわけだが、オレは1つ、疑問な事があった。
教室中、どこを見渡しても男子しかいない。
忍ってのは女性の人口がそんなに少ないのだろうか?
初めての授業は座学で、数学らしきものをやっているのだが、……うん、人生3回目ともなれば、これくらい朝飯前である。
つまり、暇だ。
オレは紫紺を封印してある石を手で弄びながら、気付かれないように小声で話す。
「なあ、ここ女の子一人もいねぇんだけど。忍って女は普通ならねぇのかぁ?」
『無知め。女の忍は通称くの一と言う。別クラスなのではないのか?入学式の時には女もいただろう』
「……いたような、いなかったような」
思い返してみれば、いたような気もする。
なら別クラス、なのか?
でもそれなら、何故オレだけこっちに……
『……お主、男として登録されているのではないのか?』
「え」
『入学の手続きをしたのはミナトという奴なのだろう?あやつ、お前を男だと思い込んでいたようだが』
「あ……」
『それならお主が、くの一とは別クラスにいることも納得いくだろう』
「ああ……」
紫紺に指摘されて、一気に脱力した。
そうだ……そうだった。
考えてみれば、ミナトはずっとオレを男だと思っていたようだった。
おかしいなぁ、里には性別、女で登録してあるはずなんだけど。
「……まあ、男の方が都合良いし」
『訂正しないのか……。まあ我には関係のないことだが、後悔しても知らんぞ』
「……うぅん、ミナトには後で聞いてみようかなぁ」
『それが良かろう』
そう結論付け、オレは周りに合わせて適当に教科書を捲った。
事前に少し見たけれど、内容大体わかるんだよなぁ。
早く忍術の授業にならないだろうか。
思わず吐いたため息が、重たく机に落ちたのだった。
春……出会いと別れの季節、花咲く季節、目覚めの季節、……入学式の季節。
そう、忘れていたが、オレは忍者アカデミーへの入学を控えていたのだった。
忍服以外のモノは揃っていたから、気付いたその日に慌てて忍服を買いに行き……、いや、行こうとしたが追い返される気がしたので、家中の布やら何やらをかき集めて自分で作った。
こんな時こそのヴァリアークオリティー。
あっという間に服は完成した。
中華っぽい感じの、そこそこ自信作のそれを着て、今日、オレはアカデミーの入学式を迎えたのであった。
「皆さんは今日から、この教室で共に学ぶ仲間です!仲良くしましょうね!」
「はーい!」
子どもって元気が良い。
オレはついていけるだろうか。
若い男の教師の言葉に、周りの子ども達が揃って返事をする。
オレの返事は尻切れトンボに彼らの声に掻き消されていった。
これでも前世、小学校ちゃんと通ってたんだけどな……。
なんかこれ、生まれ変わる度についていけなくなりそう。
「それでは皆さん!隣の人とご挨拶しましょうね!」
遠い目をするオレにはお構いなしに教師の話は続いていて、何だか知らんが自己紹介し合う流れになっているらしい。
隣の男の子と向き合って、まずはお互いお辞儀。
「オレ、うみのイルカ!よろしくな!」
「……鬼崎コウヤ、よろしくな」
と、まあこんな具合に、快活そうな少年と挨拶を交わしたのだった。
* * *
「それでは、授業を始めましょうね!」
早速授業が始まったわけだが、オレは1つ、疑問な事があった。
教室中、どこを見渡しても男子しかいない。
忍ってのは女性の人口がそんなに少ないのだろうか?
初めての授業は座学で、数学らしきものをやっているのだが、……うん、人生3回目ともなれば、これくらい朝飯前である。
つまり、暇だ。
オレは紫紺を封印してある石を手で弄びながら、気付かれないように小声で話す。
「なあ、ここ女の子一人もいねぇんだけど。忍って女は普通ならねぇのかぁ?」
『無知め。女の忍は通称くの一と言う。別クラスなのではないのか?入学式の時には女もいただろう』
「……いたような、いなかったような」
思い返してみれば、いたような気もする。
なら別クラス、なのか?
でもそれなら、何故オレだけこっちに……
『……お主、男として登録されているのではないのか?』
「え」
『入学の手続きをしたのはミナトという奴なのだろう?あやつ、お前を男だと思い込んでいたようだが』
「あ……」
『それならお主が、くの一とは別クラスにいることも納得いくだろう』
「ああ……」
紫紺に指摘されて、一気に脱力した。
そうだ……そうだった。
考えてみれば、ミナトはずっとオレを男だと思っていたようだった。
おかしいなぁ、里には性別、女で登録してあるはずなんだけど。
「……まあ、男の方が都合良いし」
『訂正しないのか……。まあ我には関係のないことだが、後悔しても知らんぞ』
「……うぅん、ミナトには後で聞いてみようかなぁ」
『それが良かろう』
そう結論付け、オレは周りに合わせて適当に教科書を捲った。
事前に少し見たけれど、内容大体わかるんだよなぁ。
早く忍術の授業にならないだろうか。
思わず吐いたため息が、重たく机に落ちたのだった。