×鳴門

結論から言おう。
オレは2週間の間に、意外と多くの人に心配を掛けていたらしい。
あのはたけカカシって野郎にも、心配されていたというのも意外だったけど、それ以上に驚いたのはやっぱりエンが心配してくれたことかな。
だってそれまでオレは、奴の名前も知らなかったわけだし、彼は暗部らしく動物の面をしているから、今もエンの顔は知らないわけだし。

「いらっしゃい、オビト、リン」
「コウヤ!」
「コウヤ君!!大丈夫だったの!?」
「あ゙あ、心配掛けて、すまなかった」

次の日、リンを連れてオビトが来た。
ちょうどお昼頃。
オレは二人を招き入れ、食卓へと案内する。
二人を座らせた後、部屋の奥に声を掛けた。

「エンー、ご飯運ぶの手伝ってくれー!」
「何で、何でオレがお前にコキ使われなけりゃならない!」
「お願いしてるだけだけど……」

ぶつくさ言いながら手伝ってくれるんだから、エンは面白い。
エンに驚いて目を見張る二人は置いといて、オレは昼飯のオムライスを5人分運ぶ。
エンは飲み物を運んでくれた。
もはやこの家のお手伝いさんである。
とても助かる。

「えーと、コウヤ?その人は?」
「え?うちのお手伝いさん……」
「違う!コイツを見張ってる暗部だ!」
「あ、暗部がエプロン着て配膳するの?」
「っ……!!!」

エンは今気付いたって顔をする。
今までナチュラルに手伝っていたもんだから気付かなかったらしい。
いや、気付けよ。
敢えて指摘しなかったオレも悪いけどよぉ。

「オレは……オレは何をして……!!」
「ほら、落ち込んでねーでさっさと飯食おうぜ」
「そーだな!美味そうなオムライス……って、おいコウヤ、一皿多くねーか?」
「え?」

オムライスは卓上に5皿。
オレとエン、オビト、リン……。

「紫紺ー、飯だぞー」
「食べる!」
「うぉおっ!?」

ずぼぉっ!と顔を出した紫紺がいたのは、オビトの服の中だった。
まあ妖怪ってだけあって、紫紺は黙ってると、どこにいてもあまり気付かれない。
陰陽師とか、主従契約をしているオレは別だけどな。

「お前っ……見ないと思ったらそんなところにいたのかよ!!」
「紫紺ちゃんそんなところにいたの!?キャー!もふもふー!!」
「むぎゃー!?」

紫紺がリンに襲われているが、まあ大丈夫だろう、……たぶん。

「……昼飯、食おうぜ」
「……」

エンがコクリと頷き、オレ達二人は一緒に手を合わせて食べ始めた。
いや、ほら、3人は忙しそうだから。

「どうだぁ?なかなか美味いだろぉ」
「……まあまあだな」
「へへ、なら良かった」

隣に座るエンの体に頭を擦り付ける。
血の匂い、火薬の匂い、薬草の匂い。
前に嗅いだときと、火薬の匂いは変わらなかったけど、血の匂いと薬草の匂いは薄くなっていた。
たぶん、怪我をしていたのだろうと思う。
どうしてそうなったのか知らないが、治ってきているようで何よりだ。

「擦り寄るな、擦り寄ってくるなよ、邪魔くせぇ」
「ちぇっ」

そう言われて、渋々頭を離して席に行儀よく座る。
何口かオムライスを食べて、水を飲む。
自分で言うのもなんだけど、なかなかの出来映え、美味い。

「……怪我は」
「うん?」

エンが、小さな声で呟いた。

「怪我は、大したことない」
「……そっか」
「……それと、オムライス」
「オムライス?」
「まあまあと言ったが、美味い、ぞ」
「!……嬉しいな、それは」

誰かに、自分の料理を美味いと言ってもらえるのは嬉しい。
今まではオビトやリンだけだったけど、この間はクシナさんと料理作れたし、エンとも一緒に食べられたし……。
こうして、増えていくのは心地良いなぁ。

「で……アイツらいつになったら食べ始めるんだろうなぁ」
「……知るか」

オレ達が食べ終わるまで、オビト達は紫紺とじゃれ続けていた。
紫紺がその後拗ねて引きこもったこと は、言うまでもないだろう。
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