if群青×黒子、違う世界の人たち

「オレに任せろ、良い案があるぞ!」

そう言うリボーンを見たスクアーロは、直ぐ様手のひらを突き付けて叫んだ。

「丁重にお断りする!!」
「それを更にお断りだぞ」

火花を散らす二人の間に綱吉が割って入り、それ以上の諍いは起こらなかったが、二人の雰囲気は……と言うよりスクアーロの雰囲気は険悪である。

「お久しぶりっすリボーンさん!」
「大きくなったのなー!」
「もうお前らと同じくらい大きいぞ」

虹の呪いが解けてから2年。
5年もすれば元に戻る、というチェッカーフェイスの言葉通り、元アルコバレーノ達は凄まじいスピードで成長していった。
現在のリボーン達の見た目は、綱吉達と同年代であり、山本も既に小僧という呼び方はしていない。

「で、なんだよ、突然現れて!しかも良い案があるぞーとか言われても、嫌な予感しかしないんだけど!?」
「カテキョーに生意気な口聞いてんじゃねーぞ、ダメツナ。良い案ってのは勿論、その『天才』達に近付くための案だぞ」

どや顔で語り出すリボーンに、綱吉の顔はどんどん渋いものになっていく。
リボーンにとって『良い』ものは、大抵の場合、綱吉にとって『悪い』ものであるからだ。

「一応聞くけど、どんな案なんだ?」
「簡単だぞ。お前らが転入生として『天才』達の学校に潜入すれば良いだけの話だ」
「いや、何でだよ!!俺達だって高校あるし、そんな突然の転校、周りの人になんて説明すれば良いんだよ!?てか護衛対象にも絶対に怪しまれて、距離おかれたりするって!」
「そこらへんはまあ、スクアーロが頑張って考える」
「テメーで考えろこのドカスがぁ!」

再び火花を散らす二人に、ついに綱吉も額に青筋を浮かべた。

「いい加減にしろよ!特にリボーン!!毎回トラブルだけ投げて放ったらかすのやめろよな!!」
「チッ。言うじゃねーかダメツナの癖に」
「いくらオレがダメツナでも、今は責任ある立場なんだ……。悪いけどリボーンの言われるがままにはなれないからね!」
「チッ、つまんなくなったな」

舌打ちをするリボーンにビビりながらも、結局綱吉はチラリとスクアーロを窺って問い掛ける。

「えっと……スクアーロはどうすれば良いと思う?」
「……オレに振るなよ」
「ご、ごめん!」
「おいテメースクアーロ!沢田さんが聞いてんだから素直に答えろ!」
「るせぇなぁ!……ソイツの意見に同意するのは癪だがぁ、それも1つの手だとは思うぜぇ」
「そっか……。でもあんまり派手には動けないし、誰が行くかはしっかり考えないとだね」
「加えて、一人一人がバラけることになる。ターゲットを守りながら、一人でもバレないように戦えるほどの実力がある奴でなければならねぇ……」

スクアーロに任せきりではなく、自分でもしっかり考えなければ、と意気込む綱吉。
その横でスクアーロは、パラパラと資料を捲り、その中にある1ページを示して、机の真ん中に置いた。
その資料は、それぞれの高校の位置関係を示しているらしい。
東京の学校が3校、他には神奈川に、秋田に、京都……。
遠い学校で、味方の少ない時に襲われた場合、仲間に助けを求めるのは難しい。

「京都と秋田に行く人は、特に気を付けないとだよね」
「簡単には助っ人に行けねーしなぁ」
「ならそのどちらかには、沢田さんが行った方がいいかも知れませんね!残ったもう片方は……シモンに頼むなんてどうですか!?」
「アイツらなら強いから安心だな!」

シモンと綱吉達を抜いて、残る枠は4つ。

「オレ達ヴァリアー幹部も、つぅかオレも、教師として忍び込むことが可能だぁ」
「あ、ありがとう……!それと、バジル君も協力してくれるって言ってたし……。後は、白蘭達と骸達……アルコバレーノの皆も手伝ってくれる……のかな?」
「オレ含めて、アルコバレーノ達が簡単に手を貸すと思うか?」
「ああ、オレが間違ってました……」

あの個性的な奴らが、そう簡単にこちらのお願いを聞いてくれるとは……思えない。
リボーンにしろ、他の元アルコバレーノにしろ、見返りが怖い上に常識が欠落しているため、一般人に溶け込むことは出来なさそうである。

「出来るなら小回りの利く奴、二人以上をそれぞれの学校に配置してぇな。例えば……、赤司のいる洛山高校。ここには沢田と山本を回す」
「おい待て!オレを忘れてんじゃねーのか!?」
「獄寺、テメーの攻撃は目立つ。学校の外部からサポートした方が良い」
「獄寺君、頼めるかな?」
「10代目のご命令とあらば喜んで!!」
「だから10代目じゃないって!」

申し訳ありません!と地面に頭突きをする獄寺は置いておき、スクアーロはその他の配置を考える。

「なら、シモンは秋田の陽泉高校かぁ。神奈川の海常高校は、笹川とバジルに行かせるか。東京の3校は……、オレとベル、白蘭達ミルフィオーレ、六道とクロームをそれぞれ割り振るかぁ」
「あ、それなんだけど……」

戦闘の可能性を考えれば、スクアーロが上げたメンバーが妥当なところだろう。
そのメンバーを聞いて、綱吉は手をあげて発言した。

「スクアーロには誠凛高校に行ってもらいたいんだけど……」
「誠凛?桐皇じゃなくてか?」

ちなみに誠凛は火神のいる高校、桐皇は青峰のいる高校なのだが、優先度的に言えば、潜入に慣れていて戦闘でも小回りの利くスクアーロならば、桐皇に行くのが妥当なはずだ。

「誠凛ってところが、一番危ないような気がして……。その、勘なんだけど……」
「……いや、テメーの勘はブラッド・オブ・ボンゴレ、超直感の能力だぁ。そう言うなら、オレが誠凛に行く。残りは桐皇と秀徳か」
「危ないところなら、バリバリ戦闘タイプの白蘭達よりも、敵を煙に撒ける術士の方が良いんじゃねーのか?」
「じゃあ骸達に桐皇に行ってもらおう!」

それぞれの潜入する先は決まった。
綱吉達はこれから京都へ行く。
気合いを入れて、立ち上がろうとしたときだった。

「そんなお前らにプレゼントだぞ」
「って……はあ!?何これ!!」

今まで黙っていたリボーンが、突然口を開いたかと思うと、机の上にバラバラ、と何かをぶちまけた。
髪留め、眼鏡、ウィッグ、カラコン、エトセトラエトセトラ……。
これは……、

「変装グッズだ!」
「スゲー!鼻眼鏡とかあるのな!」
「変装ってか仮装じゃん!」
「面白そうだから、これの中からかそ……変装して潜入すると良いぞ」
「自分でも仮装って言い掛けてる!!」
「スクアーロには女教師のコスプレグッズを用意したぞ」
「……死に方に希望があるなら聞くぜ」
「だから喧嘩するなってばぁぁあ!!」

彼らがそんな喧嘩をしている一方で、獄寺が冷静にシモンやバジル、ミルフィオーレに応援を頼む為に連絡を取っていたことに、山本は大きな成長を感じていたとか、何とか。
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