if群青×黒子、違う世界の人たち
「未来の世界で、僕は言ったよね。真6弔花は『常人離れした"覚悟"を持った人間』って」
「そんなことも、言っていたなぁ」
白蘭は、口の中でマシュマロをガジュリと噛み潰し、隣に座る人物に向かって言葉を投げ掛ける。
その人物……スペルビ・スクアーロは、面倒臭そうに相槌を打った。
白蘭は彼女の様子に気を悪くした様子も見せず、マイペースに話を続ける。
「僕が死んじゃった後には、桔梗が言ってたんだってね。『我々は世が世なら各分野で天下を取った人間だ』ーって」
「らしいなぁ」
「あ、スクアーロちゃんはその時気絶してたんだっけ♪」
「お前のせいでな」
「そうだったっけ?」
「……カッ捌く!」
「ちょーっ!ここで暴れないでよ!」
アハッ♪と惚けて笑った白蘭に、剥き出しの殺気を向ける彼女を宥めたのは、この部屋の主である沢田綱吉であった。
懐からナイフを取り出そうとするスクアーロを必死で止めた後、ケラケラと笑う白蘭に向き直って、彼なりに精一杯の怖い顔をする。
「白蘭も!あんまり人をからかったりするのやめろよな!」
「綱吉クンに言われちゃったら、やめてあげちゃおうかな?」
「オレに言われなくてもやめてくれって!」
頭を抱える綱吉の姿を見て、スクアーロも落ち着いたらしい。
不機嫌なことを隠しもせず舌打ちをしたが、逸れてしまった話を戻すために、白蘭に続きを促した。
「で、言いたいことは?さっさと言え」
「うん、僕が言いたいのはね、リングを使う戦士として優秀な子って言うのは、『才能と強い感情』を持ってるってことなんだよね。覚悟=感情って言っても良いかも?」
「才能と……強い感情……」
綱吉は白蘭の言葉を繰り返す。
スクアーロは、目を細めただけだ。
白蘭はその笑みを更に深めて、真6弔花について話を続けていく。
その笑みは、まるで悪魔のような微笑みだ。
「僕の場合は、自分が目立たないためにも、世間に埋もれてしまった才能を探して、その子達に僕への忠誠っていう強い感情を植え付けた。自分で言うのもなんだけど、僕相当ゲスいよね~」
「本人達は、救われたと思ってんだろぉ」
「僕スクアーロちゃんのそーゆー割り切ったとこ好きだよー?ま、それはそれとして、僕の場合は『異常な忠誠』をエネルギーにして、彼らを最強の戦士に仕立て上げたわけ。でも、別の感情でも、真6弔花並みの戦士を仕立てる事は、不可能じゃないんだよね♪」
「別の感情って……?」
白蘭の言葉に盛大に顔をしかめるスクアーロの隣で、綱吉は恐る恐る、白蘭に質問する。
その顔を見るに、綱吉は直感的に白蘭の言いたいことは理解し始めているらしかった。
「例えば、XANXUSクンみたいな『途方もない憤怒』。若しくは、ヒバリクンみたいに『ムカつき』をエネルギーにする人もいるかもね。綱吉クンなら、『仲間を想う心』なのかな?でも、そういったお人好しな気持ちで、あそこまで強くなれる人なんて滅多にいない。真6弔花の皆だって、僕が心をガッシリ掴んで、依存させてたからこそ、あんだけの力が出せたんだもんね♪」
「……一理ある。人が何よりも強く抱きやすいのは、怒りだの、強欲だのっつーいわば『単純な感情』だ。例えば……」
「例えば……?」
スクアーロは、一瞬躊躇うように口を閉ざし、チラと綱吉を見る。
綱吉は、ほんの一瞬だけ合ったスクアーロの瞳を強い眼差しで見つめ返した。
覚悟は出来ている、ということか。
スクアーロは頷いて、口を開いた。
「例えば、将来有望な才能ある若者を誘拐し、気が狂うほどの拷問でもすれば、……その後に出来るのは、拷問によって強い憎悪を植え付けられた、狂った殺人人形だぁ」
「っ……、そんな、こと……」
「ある意味、今言ったのは僕がしたことと限りなくおんなじ事だよね。あの場合は、彼らに酷い事したのは運命とか、その他大勢の人間だけどさ。僕は彼らに、元々強い憎悪が備わっていたから、それに依存を上乗せさせただけ。それだけで、簡単に暴れさせる事が出来たんだよね♪」
つまりは、才能ある『素材』さえあれば、真6弔花のような狂戦士を作ることなど、容易、なのである。
そしてその才能ある『素材』を手に入れるには……。
「一般人の……それも、まだそれほど表に出てきてない、若い才能を狙うかな?僕なら、ね♪」
「まさか……そんなことする奴が……」
「いるわけない、と、思うのかぁ?」
「……」
綱吉の頭を過ったのは、自分が高校に入ってすぐの出来事である。
あの春、綱吉の高校入学に合わせて、9代目ボンゴレはマフィアボンゴレファミリーの解体を、正式に発表した。
予想通り、いや、予想以上に、その反発は強かった。
9代目と古くから親しくしている者達は、納得してボンゴレ解体へと力を貸してくれたが、その発表の数ヵ月後には、強硬に反対していたボンゴレ残党が結束し、手段を問わずに、力を振るい始めたのだった。
彼らの言い分はこうだった。
『マフィアの頂点であり、至高のボンゴレファミリーが滅びてはならない』
長い間……それこそ、10代目まで続くほどの年月を生きてきたボンゴレファミリーが、潰れることに納得いかないことはわかる。
だが、その言葉を聞いたスクアーロは、下らないと言うように鼻で笑っていた。
曰く、『今まで権力振りかざして、好き勝手やって来たことが出来なくなるから、怖がってんだろぉ』とのこと。
しかし、と彼女は言葉を続けた。
『奴らの中心にいる奴、あれはヤバイな』
ボンゴレ残党達の中心、そこにいたのは一人の男。
年齢は40半ばといったところか、白髪混じりの黒髪をオールバックにして、グレーの瞳は欲望にギラギラと輝いていた。
イエナ・ファットーリ。
それが男の名前である。
出たがりの老害、もとい、元々ボンゴレの重役であった老人達の影に隠れて、彼はニタニタと笑いながら、かつてのボンゴレを利用して、巨大な犯罪組織を作ろうと企んでいるらしかった。
「あの人なら、やりそうだよね……」
「悪い事して儲けたいなら、どう考えても綱吉クンは邪魔だからね♪」
「邪魔なら消す。そんでもって、次いでに戦力となる素材ゲット出来りゃ万々歳とか思ってんだろぉ。すげぇ殺してぇ」
「うん、落ち着こうかスクアーロ」
どうやらイエナのことは、ヴァリアーとしてボンゴレに入った当時から知っているらしく、彼女はイエナの話をする度に、眉間に深いシワを寄せている。
彼の事が相当嫌いらしい。
そんなスクアーロの眉間のシワを、後ろから指で揉んで解しながら、白蘭は話の道筋を戻した。
「そろそろ向こうも態勢が整って来ちゃう頃だと思うんだよね。だからこっちもちゃんと動き始めないと……不味いんじゃないかな♪」
「もう、冬だもんね……。えっと、向こうの様子とか……どんな感じなのかな?」
「残党と、そいつらが引き入れたチンピラやら、雇い入れた殺し屋やらの数が、もうだいぶ集まってきているなぁ。かなり邪魔したつもりだったが……指示系統も整ってきている。こちらもある程度、迎撃態勢は整えちゃいるがぁ……、如何せん人数が少なくてな」
白蘭にされるがままになりながら、スクアーロはやはり浮かない顔で答える。
残党……と言っても、相当な数の戦闘員が向こう側には残っていた。
対して、こちらにはボンゴレ10代目ファミリーとヴァリアーやチェデフなどのごく一部の元ボンゴレの組織だけ。
ただし、白蘭達ミルフィオーレやシモンファミリー、なんと六道一味が手を貸してくれるらしい。
「ヒバリさんも、何だかんだで助けてくれるみたいなんだ……。数は少ないかも知れないけど、戦力は十分あると思う。……オレが壊してしまったボンゴレを悪用させないためにも、罪のない人達を傷付けないためにも、これからも、協力してくれます、か?」
残党達が手段を選ばず動くことで、誰かが傷付くのならば、それは己の手で止める。
黒幕が、一般人を血と硝煙の満ちる世界へ引きずり込むと言うのなら、その人達を必死で守る。
「そーゆーと思ってたよ♪」
「狙われそうな人物については、調べついてるぜぇ」
「え!?はやっ!!」
ここで話をする前から、二人は既に動き出していたらしい。
驚きつつも、綱吉は頬を弛める。
「これからも、よろしくね!!」
スクアーロは照れ臭そうに、白蘭は無邪気に笑って、その言葉に頷いた。
「……そう言えばスクアーロ、ディーノさん、どうしてる?」
「……あ゙ー、あいつは、まあ。残党どもに上手く牽制かけてるみてぇだな。日本に行きたいって毎日ボヤいてるって、ロマーリオは言ってたが……」
「アハハ、ディーノさんらしいね」
折角聞かれないで終われそうだと思っていたところに突っ込まれて、スクアーロは渋い顔で答える。
最近は綱吉達に合わせて、ヴァリアーやチェデフはイタリアと日本を往復してばかりいる。
特にスクアーロは、ヴァリアーの中で唯一、マトモに綱吉達と話し合いができる貴重な人材であるため、日本に長居する羽目になっていた。
「会いたがってるんじゃないの?ディーノさん」
「……仕事なんだから、会えないのは仕方ねーだろーがぁ。別に、一生会えなくなる訳でもねーし」
ムッとした顔で言った後は、プイッと顔を背けて、丁度目前にいた白蘭の首根っこを掴んで引き摺った。
「お゙ら、面倒くせぇ右腕が帰ってくる前に、俺達は帰るぞぉ!」
「あー、獄寺クン達かぁ……。山本クンは普通なんだけど、獄寺クンって未だに警戒心剥き出しで来るよねー♪」
「山本も絡んできてしつこい」
「そんなこと言ったら可哀想じゃない♪」
「ア、ハハ……二人とも気を付けて帰ってねー……」
確かに二人の言ってることも納得できない訳じゃないんたけど……、山本は今の聞いたら拗ねそうだな。
綱吉はそんな感想を抱きながら、階段を上がっていく二人を見送る。
「まさか中学の頃は、オレが地下に基地つくって、マフィア連中を相手取るなんておっかない真似、するとは思ってなかったけど……」
きゅるっと椅子を回転させて、机に向き直る。
クアッと大きな欠伸をして、綱吉は満足そうに笑った。
「こんな風に、たくさんの人と協力していけるなら、心強いし、オレもたくさん、頑張れる……」
パチンと平手で頬を打ち、綱吉は気合いを入れ直して立ち上がった。
目の前のパソコンにはデータが送られてきていた。
スクアーロからのメール。
先程言っていた、狙われそうな人物についてのデータだった。
「絶対、守る」
静かな決意を、その内に秘め、綱吉は毅然とパソコンの画面を見据えたのだった。
「そんなことも、言っていたなぁ」
白蘭は、口の中でマシュマロをガジュリと噛み潰し、隣に座る人物に向かって言葉を投げ掛ける。
その人物……スペルビ・スクアーロは、面倒臭そうに相槌を打った。
白蘭は彼女の様子に気を悪くした様子も見せず、マイペースに話を続ける。
「僕が死んじゃった後には、桔梗が言ってたんだってね。『我々は世が世なら各分野で天下を取った人間だ』ーって」
「らしいなぁ」
「あ、スクアーロちゃんはその時気絶してたんだっけ♪」
「お前のせいでな」
「そうだったっけ?」
「……カッ捌く!」
「ちょーっ!ここで暴れないでよ!」
アハッ♪と惚けて笑った白蘭に、剥き出しの殺気を向ける彼女を宥めたのは、この部屋の主である沢田綱吉であった。
懐からナイフを取り出そうとするスクアーロを必死で止めた後、ケラケラと笑う白蘭に向き直って、彼なりに精一杯の怖い顔をする。
「白蘭も!あんまり人をからかったりするのやめろよな!」
「綱吉クンに言われちゃったら、やめてあげちゃおうかな?」
「オレに言われなくてもやめてくれって!」
頭を抱える綱吉の姿を見て、スクアーロも落ち着いたらしい。
不機嫌なことを隠しもせず舌打ちをしたが、逸れてしまった話を戻すために、白蘭に続きを促した。
「で、言いたいことは?さっさと言え」
「うん、僕が言いたいのはね、リングを使う戦士として優秀な子って言うのは、『才能と強い感情』を持ってるってことなんだよね。覚悟=感情って言っても良いかも?」
「才能と……強い感情……」
綱吉は白蘭の言葉を繰り返す。
スクアーロは、目を細めただけだ。
白蘭はその笑みを更に深めて、真6弔花について話を続けていく。
その笑みは、まるで悪魔のような微笑みだ。
「僕の場合は、自分が目立たないためにも、世間に埋もれてしまった才能を探して、その子達に僕への忠誠っていう強い感情を植え付けた。自分で言うのもなんだけど、僕相当ゲスいよね~」
「本人達は、救われたと思ってんだろぉ」
「僕スクアーロちゃんのそーゆー割り切ったとこ好きだよー?ま、それはそれとして、僕の場合は『異常な忠誠』をエネルギーにして、彼らを最強の戦士に仕立て上げたわけ。でも、別の感情でも、真6弔花並みの戦士を仕立てる事は、不可能じゃないんだよね♪」
「別の感情って……?」
白蘭の言葉に盛大に顔をしかめるスクアーロの隣で、綱吉は恐る恐る、白蘭に質問する。
その顔を見るに、綱吉は直感的に白蘭の言いたいことは理解し始めているらしかった。
「例えば、XANXUSクンみたいな『途方もない憤怒』。若しくは、ヒバリクンみたいに『ムカつき』をエネルギーにする人もいるかもね。綱吉クンなら、『仲間を想う心』なのかな?でも、そういったお人好しな気持ちで、あそこまで強くなれる人なんて滅多にいない。真6弔花の皆だって、僕が心をガッシリ掴んで、依存させてたからこそ、あんだけの力が出せたんだもんね♪」
「……一理ある。人が何よりも強く抱きやすいのは、怒りだの、強欲だのっつーいわば『単純な感情』だ。例えば……」
「例えば……?」
スクアーロは、一瞬躊躇うように口を閉ざし、チラと綱吉を見る。
綱吉は、ほんの一瞬だけ合ったスクアーロの瞳を強い眼差しで見つめ返した。
覚悟は出来ている、ということか。
スクアーロは頷いて、口を開いた。
「例えば、将来有望な才能ある若者を誘拐し、気が狂うほどの拷問でもすれば、……その後に出来るのは、拷問によって強い憎悪を植え付けられた、狂った殺人人形だぁ」
「っ……、そんな、こと……」
「ある意味、今言ったのは僕がしたことと限りなくおんなじ事だよね。あの場合は、彼らに酷い事したのは運命とか、その他大勢の人間だけどさ。僕は彼らに、元々強い憎悪が備わっていたから、それに依存を上乗せさせただけ。それだけで、簡単に暴れさせる事が出来たんだよね♪」
つまりは、才能ある『素材』さえあれば、真6弔花のような狂戦士を作ることなど、容易、なのである。
そしてその才能ある『素材』を手に入れるには……。
「一般人の……それも、まだそれほど表に出てきてない、若い才能を狙うかな?僕なら、ね♪」
「まさか……そんなことする奴が……」
「いるわけない、と、思うのかぁ?」
「……」
綱吉の頭を過ったのは、自分が高校に入ってすぐの出来事である。
あの春、綱吉の高校入学に合わせて、9代目ボンゴレはマフィアボンゴレファミリーの解体を、正式に発表した。
予想通り、いや、予想以上に、その反発は強かった。
9代目と古くから親しくしている者達は、納得してボンゴレ解体へと力を貸してくれたが、その発表の数ヵ月後には、強硬に反対していたボンゴレ残党が結束し、手段を問わずに、力を振るい始めたのだった。
彼らの言い分はこうだった。
『マフィアの頂点であり、至高のボンゴレファミリーが滅びてはならない』
長い間……それこそ、10代目まで続くほどの年月を生きてきたボンゴレファミリーが、潰れることに納得いかないことはわかる。
だが、その言葉を聞いたスクアーロは、下らないと言うように鼻で笑っていた。
曰く、『今まで権力振りかざして、好き勝手やって来たことが出来なくなるから、怖がってんだろぉ』とのこと。
しかし、と彼女は言葉を続けた。
『奴らの中心にいる奴、あれはヤバイな』
ボンゴレ残党達の中心、そこにいたのは一人の男。
年齢は40半ばといったところか、白髪混じりの黒髪をオールバックにして、グレーの瞳は欲望にギラギラと輝いていた。
イエナ・ファットーリ。
それが男の名前である。
出たがりの老害、もとい、元々ボンゴレの重役であった老人達の影に隠れて、彼はニタニタと笑いながら、かつてのボンゴレを利用して、巨大な犯罪組織を作ろうと企んでいるらしかった。
「あの人なら、やりそうだよね……」
「悪い事して儲けたいなら、どう考えても綱吉クンは邪魔だからね♪」
「邪魔なら消す。そんでもって、次いでに戦力となる素材ゲット出来りゃ万々歳とか思ってんだろぉ。すげぇ殺してぇ」
「うん、落ち着こうかスクアーロ」
どうやらイエナのことは、ヴァリアーとしてボンゴレに入った当時から知っているらしく、彼女はイエナの話をする度に、眉間に深いシワを寄せている。
彼の事が相当嫌いらしい。
そんなスクアーロの眉間のシワを、後ろから指で揉んで解しながら、白蘭は話の道筋を戻した。
「そろそろ向こうも態勢が整って来ちゃう頃だと思うんだよね。だからこっちもちゃんと動き始めないと……不味いんじゃないかな♪」
「もう、冬だもんね……。えっと、向こうの様子とか……どんな感じなのかな?」
「残党と、そいつらが引き入れたチンピラやら、雇い入れた殺し屋やらの数が、もうだいぶ集まってきているなぁ。かなり邪魔したつもりだったが……指示系統も整ってきている。こちらもある程度、迎撃態勢は整えちゃいるがぁ……、如何せん人数が少なくてな」
白蘭にされるがままになりながら、スクアーロはやはり浮かない顔で答える。
残党……と言っても、相当な数の戦闘員が向こう側には残っていた。
対して、こちらにはボンゴレ10代目ファミリーとヴァリアーやチェデフなどのごく一部の元ボンゴレの組織だけ。
ただし、白蘭達ミルフィオーレやシモンファミリー、なんと六道一味が手を貸してくれるらしい。
「ヒバリさんも、何だかんだで助けてくれるみたいなんだ……。数は少ないかも知れないけど、戦力は十分あると思う。……オレが壊してしまったボンゴレを悪用させないためにも、罪のない人達を傷付けないためにも、これからも、協力してくれます、か?」
残党達が手段を選ばず動くことで、誰かが傷付くのならば、それは己の手で止める。
黒幕が、一般人を血と硝煙の満ちる世界へ引きずり込むと言うのなら、その人達を必死で守る。
「そーゆーと思ってたよ♪」
「狙われそうな人物については、調べついてるぜぇ」
「え!?はやっ!!」
ここで話をする前から、二人は既に動き出していたらしい。
驚きつつも、綱吉は頬を弛める。
「これからも、よろしくね!!」
スクアーロは照れ臭そうに、白蘭は無邪気に笑って、その言葉に頷いた。
「……そう言えばスクアーロ、ディーノさん、どうしてる?」
「……あ゙ー、あいつは、まあ。残党どもに上手く牽制かけてるみてぇだな。日本に行きたいって毎日ボヤいてるって、ロマーリオは言ってたが……」
「アハハ、ディーノさんらしいね」
折角聞かれないで終われそうだと思っていたところに突っ込まれて、スクアーロは渋い顔で答える。
最近は綱吉達に合わせて、ヴァリアーやチェデフはイタリアと日本を往復してばかりいる。
特にスクアーロは、ヴァリアーの中で唯一、マトモに綱吉達と話し合いができる貴重な人材であるため、日本に長居する羽目になっていた。
「会いたがってるんじゃないの?ディーノさん」
「……仕事なんだから、会えないのは仕方ねーだろーがぁ。別に、一生会えなくなる訳でもねーし」
ムッとした顔で言った後は、プイッと顔を背けて、丁度目前にいた白蘭の首根っこを掴んで引き摺った。
「お゙ら、面倒くせぇ右腕が帰ってくる前に、俺達は帰るぞぉ!」
「あー、獄寺クン達かぁ……。山本クンは普通なんだけど、獄寺クンって未だに警戒心剥き出しで来るよねー♪」
「山本も絡んできてしつこい」
「そんなこと言ったら可哀想じゃない♪」
「ア、ハハ……二人とも気を付けて帰ってねー……」
確かに二人の言ってることも納得できない訳じゃないんたけど……、山本は今の聞いたら拗ねそうだな。
綱吉はそんな感想を抱きながら、階段を上がっていく二人を見送る。
「まさか中学の頃は、オレが地下に基地つくって、マフィア連中を相手取るなんておっかない真似、するとは思ってなかったけど……」
きゅるっと椅子を回転させて、机に向き直る。
クアッと大きな欠伸をして、綱吉は満足そうに笑った。
「こんな風に、たくさんの人と協力していけるなら、心強いし、オレもたくさん、頑張れる……」
パチンと平手で頬を打ち、綱吉は気合いを入れ直して立ち上がった。
目の前のパソコンにはデータが送られてきていた。
スクアーロからのメール。
先程言っていた、狙われそうな人物についてのデータだった。
「絶対、守る」
静かな決意を、その内に秘め、綱吉は毅然とパソコンの画面を見据えたのだった。