if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
その女はとにかく赤かった。
服も靴も髪も瞳も、全部全部が鮮烈なほどの赤だった。
スクアーロは後々知ることとなるのだが、彼女こそは裏世界では知らぬもののいない豪傑。
文字列そのまま危険を意味するシグナルレッド、人類最強の請負人、死色の真紅、哀川潤であった。
彼女達が遭った当時、哀川潤はまだ十代であったが、その時点で既に、向かうところ敵無しであったことは言うまでもない。
「いやー、このビルの連中がヤバいクスリを売り捌いてたらしくてな。そのクスリを回収するって仕事を請け負ったんだ。でもまさか、匂宮と被るとはなー。ついてねーぜ」
「そりゃこっちの台詞だぜ人類最強。まさかあんたと被るなんて、今日はとことんついてねーや」
そんなことを嘯く二人だったが、間違いなくこの場で一番ついていないのは一般人代表スペルビ・スクアーロだ。
昼間は殺し名一の忌み者零崎に遭遇し、夜には人類最強と匂宮の人喰いに出会ってしまったのだから。
だが同時に一番運が良いのも彼女かもしれない。
こんなそうそうたるメンバーに遭遇しておきながら、未だにピンピンしているのだから。
それは、ある意味幸運だと言える。
「つーわけで、お薬の場所聞かなきゃならねーから、あたしも同行させてもらうぜ」
「はあ?マジかよ」
「そっちのお姉ちゃんも同行すんなら別に良いだろー?一人も二人も大して変わりはしねーって」
スクアーロ一人なら、出夢の仕事に何の支障も来さないだろう。
だが増えるもう一人が『入った建物が必ず崩壊する女』である『あの』哀川潤なのだ。
もちろん出夢は良い顔をしなかったが、どうせ嫌と言っても着いてくるのだ、この赤色は。
仕方なしに、嫌々ながら、渋々と、頷く。
そして変わりに1つ気になることが出来た。
「え、なになに?お兄さんじゃなくてお姉さんだったわけ?」
『お姉ちゃんも』と、哀川潤は確かにそう言った。
人類最強の言うことだからきっとそうなのだろう。
それに何より、ヘルメットで表情は隠れていたが、その全身でスクアーロは驚きを表していた。
それが、彼女が女であることの何よりの証拠に思えた。
「うん?何たらたらしてんだよお前ら。ちゃっちゃと行こーぜ」
「あ?わかったわかった。ほら、行くぜお姉さん」
「あ、ああ……」
真っ赤な人類最強と、可愛らしい殺し名序列第1位の秘蔵っ子殺し屋に挟まれて、肩を出来るだけ小さく縮めるようにしたスクアーロは、大人しく二人に付き従っていった。
* * *
階段を上がって、歩を進める彼女達を待ち受けていたのは、どこから沸いて出たのか、大量の黒服の男達だった。
階下であれだけ大きな音を立てて騒いだのだから、敵が気付くのも当たり前だろう。
彼らは見たところ、それなりに実力のある奴らなのだろうが、この程度ならスクアーロでだって余裕で勝てていた。
ましてや哀川潤と匂宮出夢の前に、彼らの存在など無意味に等しかった。
哀川潤の手によって、体格の良い男達が、木の葉か何かのように吹っ飛んでいく。
正に千切っては投げ、千切っては投げの大立ち回り。
そして匂宮出夢の腕が唸りを上げて肉をぶち抜く。
どちらの攻撃も、技術もへったくれもないただ単純な暴力だった。
その暴力に圧倒されて、彼女達の背後15mの地点から追いかけているスクアーロは、時たま忘れたように取り零されて、命からがら逃げ出そうとする黒服を捕まえて殺していく。
スクアーロがこのビルを根城にする者達を暗殺するためにかけた、全ての手間と時間が無慈悲に否定されているような気がした。
何だったんだ、オレのここ数日間の仕事は。
あの圧倒的なまでの力の前では、オレのしたことは全て無駄に終わってしまうのか。
そんなことを思うスクアーロは、この数十分のうちに5歳は老けたのではないだろうか。
「クソ!!貴様らボンゴレの者かっぐぁぁああ!?」
「なんだそのダッセー名前は?パスタか?あ?あたしはただの通りすがりの請負人だ!」
ボンゴレの名がダサいの一言の元に切り捨てられたことも突っ込みたいが、通りすがっただけでビルの連中を壊滅させるのか、請負人という奴は。
「ぎゃははは、こんなもんかよ。つまんねーな」
「ぎいっ!?」
「げぼぉあ!!」
えげつない、えげつないぜこの女二人。
敵の腹を抉り削って内臓を撒き散らして進む出夢を見ながら、スクアーロは無性に泣きたい気分に襲われていた。
あんなとんでもビックリな攻撃から逃れられる気がしない。
しかも二人いるって絶望的すぎる。
意味がないとわかっていても、彼女の嘆きは止まらなかった。
そうこうしている内に、ようやくターゲットのいる部屋に辿り着く。
人の気配も感じる。
自分達の放った刺客が、まさか3人の敵に壊滅させられたとは思いもよらないのだろう。
あれだけ破壊音を立てて近付いてきたのに、部屋の中からは談笑する声さえ聞こえてきた。
「んじゃー、いっちょド派手に行くとするか!!」
そう言って文字通りドアを突き破り、部屋の中の男達を薙ぎ倒していく哀川潤は、あっという間に敵を倒し終わると、部屋の奥の金庫を素手で抉じ開けて中のクスリを手に取った。
「ヤバいお薬、GETだぜ!!」
片手にクスリ、もう片手でピースマークを突きだし言った哀川潤だったが、残念ながらそこにポケ○ンネタを知っている者はいなかった。
服も靴も髪も瞳も、全部全部が鮮烈なほどの赤だった。
スクアーロは後々知ることとなるのだが、彼女こそは裏世界では知らぬもののいない豪傑。
文字列そのまま危険を意味するシグナルレッド、人類最強の請負人、死色の真紅、哀川潤であった。
彼女達が遭った当時、哀川潤はまだ十代であったが、その時点で既に、向かうところ敵無しであったことは言うまでもない。
「いやー、このビルの連中がヤバいクスリを売り捌いてたらしくてな。そのクスリを回収するって仕事を請け負ったんだ。でもまさか、匂宮と被るとはなー。ついてねーぜ」
「そりゃこっちの台詞だぜ人類最強。まさかあんたと被るなんて、今日はとことんついてねーや」
そんなことを嘯く二人だったが、間違いなくこの場で一番ついていないのは一般人代表スペルビ・スクアーロだ。
昼間は殺し名一の忌み者零崎に遭遇し、夜には人類最強と匂宮の人喰いに出会ってしまったのだから。
だが同時に一番運が良いのも彼女かもしれない。
こんなそうそうたるメンバーに遭遇しておきながら、未だにピンピンしているのだから。
それは、ある意味幸運だと言える。
「つーわけで、お薬の場所聞かなきゃならねーから、あたしも同行させてもらうぜ」
「はあ?マジかよ」
「そっちのお姉ちゃんも同行すんなら別に良いだろー?一人も二人も大して変わりはしねーって」
スクアーロ一人なら、出夢の仕事に何の支障も来さないだろう。
だが増えるもう一人が『入った建物が必ず崩壊する女』である『あの』哀川潤なのだ。
もちろん出夢は良い顔をしなかったが、どうせ嫌と言っても着いてくるのだ、この赤色は。
仕方なしに、嫌々ながら、渋々と、頷く。
そして変わりに1つ気になることが出来た。
「え、なになに?お兄さんじゃなくてお姉さんだったわけ?」
『お姉ちゃんも』と、哀川潤は確かにそう言った。
人類最強の言うことだからきっとそうなのだろう。
それに何より、ヘルメットで表情は隠れていたが、その全身でスクアーロは驚きを表していた。
それが、彼女が女であることの何よりの証拠に思えた。
「うん?何たらたらしてんだよお前ら。ちゃっちゃと行こーぜ」
「あ?わかったわかった。ほら、行くぜお姉さん」
「あ、ああ……」
真っ赤な人類最強と、可愛らしい殺し名序列第1位の秘蔵っ子殺し屋に挟まれて、肩を出来るだけ小さく縮めるようにしたスクアーロは、大人しく二人に付き従っていった。
* * *
階段を上がって、歩を進める彼女達を待ち受けていたのは、どこから沸いて出たのか、大量の黒服の男達だった。
階下であれだけ大きな音を立てて騒いだのだから、敵が気付くのも当たり前だろう。
彼らは見たところ、それなりに実力のある奴らなのだろうが、この程度ならスクアーロでだって余裕で勝てていた。
ましてや哀川潤と匂宮出夢の前に、彼らの存在など無意味に等しかった。
哀川潤の手によって、体格の良い男達が、木の葉か何かのように吹っ飛んでいく。
正に千切っては投げ、千切っては投げの大立ち回り。
そして匂宮出夢の腕が唸りを上げて肉をぶち抜く。
どちらの攻撃も、技術もへったくれもないただ単純な暴力だった。
その暴力に圧倒されて、彼女達の背後15mの地点から追いかけているスクアーロは、時たま忘れたように取り零されて、命からがら逃げ出そうとする黒服を捕まえて殺していく。
スクアーロがこのビルを根城にする者達を暗殺するためにかけた、全ての手間と時間が無慈悲に否定されているような気がした。
何だったんだ、オレのここ数日間の仕事は。
あの圧倒的なまでの力の前では、オレのしたことは全て無駄に終わってしまうのか。
そんなことを思うスクアーロは、この数十分のうちに5歳は老けたのではないだろうか。
「クソ!!貴様らボンゴレの者かっぐぁぁああ!?」
「なんだそのダッセー名前は?パスタか?あ?あたしはただの通りすがりの請負人だ!」
ボンゴレの名がダサいの一言の元に切り捨てられたことも突っ込みたいが、通りすがっただけでビルの連中を壊滅させるのか、請負人という奴は。
「ぎゃははは、こんなもんかよ。つまんねーな」
「ぎいっ!?」
「げぼぉあ!!」
えげつない、えげつないぜこの女二人。
敵の腹を抉り削って内臓を撒き散らして進む出夢を見ながら、スクアーロは無性に泣きたい気分に襲われていた。
あんなとんでもビックリな攻撃から逃れられる気がしない。
しかも二人いるって絶望的すぎる。
意味がないとわかっていても、彼女の嘆きは止まらなかった。
そうこうしている内に、ようやくターゲットのいる部屋に辿り着く。
人の気配も感じる。
自分達の放った刺客が、まさか3人の敵に壊滅させられたとは思いもよらないのだろう。
あれだけ破壊音を立てて近付いてきたのに、部屋の中からは談笑する声さえ聞こえてきた。
「んじゃー、いっちょド派手に行くとするか!!」
そう言って文字通りドアを突き破り、部屋の中の男達を薙ぎ倒していく哀川潤は、あっという間に敵を倒し終わると、部屋の奥の金庫を素手で抉じ開けて中のクスリを手に取った。
「ヤバいお薬、GETだぜ!!」
片手にクスリ、もう片手でピースマークを突きだし言った哀川潤だったが、残念ながらそこにポケ○ンネタを知っている者はいなかった。