if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
「なぁんんでぇ!!話さなかったんだぁ!この脳ミソおが屑スットコドッコイドカス馬鹿野郎がぁ!!!!!」
「あだっ!いたたたた!!ちょっ、待てってスクアーロ!ただの夢だと思ってたんだから仕方ないだろ!」
シモン・コザートは生き延びていた。
ボンゴレ1世は裏切ってなどいなかった。
全ては、D・スペードの仕組んだ罠で、シモンを狙ったのはボンゴレを唯一無二のマフィアに仕立て上げるため、邪魔物を排除するための策略だったのだと。
真実を知ってしまったアーデルハイトからは、炎真を助けて、と託された。
元よりそのつもりだったけれど、エンマの元へと走る脚には力が、覚悟が籠る。
とは言っても、夜は訪れ、そしてその間は、綱吉達も歩き回ることは出来なくなる。
そして焚き火をおこし、開けた場所で腰を下ろした時になって、判明してしまったのだ。
初代ボンゴレと初代シモンの記憶を見ていたことを、山本がスクアーロに全く話していなかったことを。
そして今、怒っているらしいスクアーロに、山本はポカポカと頭を叩かれまくっている。
リボーンは読心術のスキルがあるから、綱吉達の見せられている記憶もほとんど察することが出来ていた。
だがスクアーロだけは正真正銘初耳だ。
初耳というより寝耳に水だし、ついでにいうなら耳に入った水は山本の仕業と言える。
「んなもん普通気が付くだろうがぁ!初代ガッツリ出てんじゃねぇかぁ!初代出た段階で『あっ、もしかして!』ってなんだろぉ普通!しかもシモンだのなんだのと関係の深いワードも出まくってて気が付きませんでしただぁ!?」
「ごめんって!ホントごめん!だからもう叩くなってば!」
「ざっけんなドカス!それがわかってりゃあもっといろいろ準備してあの胡散くせぇゾンビ野郎の隙もつけてたかもしんねぇのによぉ!」
「いたっ!今のはひでぇーって!鼻に当たったのな!」
「知るかボケがぁ!……い"っ!」
座ってからずっと、プンスカと効果音が付きそうな怒りようだったスクアーロだが、その手が山本の頭より高い位置で急に止まる。
食い縛った歯の間からは呻き声が漏れ、空いた片方の手は脇腹に添えられている。
「ちょっ、大丈夫スクアーロ!?」
「そんなに動くから~、じっとしてねーと傷口開いちまうのな」
「てめっ、やっぱり傷治ってねーのかよ!」
「ちょっと横になれ、傷が開いたらオレらじゃどうにも出来ねーからな」
「ううううるせぇ……。まだ限界までは一歩遠いぞぉ」
「あと一歩で限界じゃん!ちょ……休んで休んで!」
むすっと頬を膨らませて、スクアーロが渋々寝袋の上に横になる。
その姿にはどことなく幼さも感じられるが、だからと言って綱吉達が……いや、獄寺が警戒を解くことはない。
「テメー、そんな体でマジで何しに来たんだ?さっきも……」
「……オレの仕事は山本武の監視と、ついでにクローム髑髏へのVG(ボンゴレギア)の受け渡し。それだけだぁ」
「それだけって……」
それだけ、と言うには、スクアーロは無理をしすぎだ。
常人であれば死んでいるような傷にも関わらず、ろくに療養もせずにこんなところにまで来る。
確かに山本を連れてきたことは、ツナ達にとってプラスに働いた。
何より、彼らの去り際にクロームへとVGを渡したことは、きっと勝利への大きな足掛かりになる。
骸だって、きっとD・スペードへと反撃する機会をうかがっている。
反撃に欠かせないVGが手に入ったのは大きい。
……でも本当に、この役目はスクアーロが背負わなきゃならなかったんだろうか。
「というか、どうやって霧のVGを?あれはボンゴレが保管しておくって……」
「あ"あ?……あー、あれはまあ、友人がな」
「へ?」
「あ、小唄さんだよな!そっかー、あの人が盗んできてくれたんだな!」
「なっ、ぬす……!?」
山本の口からさらりと出てきた言葉に、呆然とする。
盗んだ、とは。
「え?え……?盗んだの?」
「……違う、持つべき者に渡しただけだぁ」
「それっぽいこと言ってますけどやっぱりボンゴレから盗んできたんですよね!!?」
それ以上は何も言わないスクアーロに、綱吉は現実逃避をし始める。
彼女を心配していた気持ちは既にどこかへと吹っ飛んでいた。
下手をしたら今頃ボンゴレは大騒ぎだろうに。
この悪びれてもいない銀髪頭を引っ叩けば、少しは反省してくれるだろうか。
「盗んだにしろ借りたにしろ、スクアーロのお陰で、クロームにVGが渡せたのは悪くねーぞ」
「まあ、そうかもしれないけどさぁ」
納得は行かないが、確かに助かってはいる。
それ以上の追求はやめにして、これからのことを話し合うこととした。
「山本とも合流出来たし、クロームは操られてるみたいだけど……でもVGは渡せた」
「これなら、正気に戻ったときにも戦えるな」
「それに、D・スペード。シモンファミリーを騙して、陥れようとしたのはアイツだった……」
ずっと迷って、心には濃い霧がかかっていたけれども、ようやく腹が決まった。
全ての黒幕はD・スペードだった。
ならば、あいつを倒す。
「倒すべきは、D・スペードだ!!クロームはもちろん、古里炎真も助けるんだ。友達だから」
友達を助けたい。
結局答えはそこにあった。
口に出して言えば、その答えは更なる確信として……さらに強固な『誇り』として、胸の中に結び付く。
そして、その想いに答えるように、指輪が光り、横にナッツが現れた。
今まで呼んでも呼んでも出てこなかったのに、今さらになってなんで?
リボーンが言うには、ナッツは大好きなエンマと戦うのを拒否していたんじゃないか、ということらしい。
確かに、ナッツはちょっと頑固なところがあるからなぁ。
でも、ナッツは出てきてくれた。
オレが、オレの弱い心を見付けて、自分の覚悟を決めた今、ナッツはオレの言葉に答えてくれたのかもしれない。
正直、父さんがエンマの家族を殺したって言われたことには、まだ心につっかえたままだ。
それでも、信じてみようと思ったのだ。
助ける。
クロームも、エンマも、必ず助けるのだ。
オレが決意を固めるのに、ナッツも呼応するように吠えた。
「ガウッ!」
ナッツはとことこと駆けていって、オレ達に背中を向けて横になってるスクアーロに近付いた。
ぺしっと前足で背中を叩く。
「い"っ!」
「な、ナッツ!駄目だろ!」
オレの決意とか何にも関係なかった。
ナッツはただ珍しい人がいることに気がついて、好奇心のままに近寄ったらしい。
というかまさか、弱ってることがわかってて近付いたのか?
自分のアニマルリングだけれども、こいつ酷い奴だな……。
「んだよ、お前ら揃いも揃って。放牧してんじゃねぇ」
「次郎は家の中でしか放し飼いしてねーだろ?」
「そう言えばヒバリもよく放し飼いにしてるな」
スクアーロは顔を顰めながらゆっくりと寝返りを打つ。
ナッツはその目の前でおろおろと慌てている。
自分から突っ込んどいて、こいつ本当に度胸があるんだかないんだか。
当のスクアーロは、ナッツに怒る様子もなく、ぼんやりとしたまま据わった目でオレ達を眺めながら、ビクつくナッツの頭を撫でる。
「明日は早くから移動し始めるんだろぉ。とっとと寝たらどうだぁ」
「そ、そうだね。ほら、ナッツも戻れよ!」
「グルルゥ~」
「あーもう、甘えるなってば」
普段は人見知りするくせに、スクアーロに頭を撫でられて、ナッツはご満悦の様子だ。
スクアーロもスクアーロで、気持ち良さそうにナッツのたてがみに指を通して、甘えるナッツを不快に思っている様子はない。
「ほっといて良いんじゃねぇか?」
「……スクアーロは?ナッツのこと、頼んでも良い?」
「お前が良いなら」
「スクアーロ動物好きだもんなー」
山本いわく動物好きらしいスクアーロは、眩しそうに目を細めながら、ナッツの喉を撫でて甘やかしている。
スクアーロが良いって言うなら、良いんだろう。
ナッツを任せたまま、オレ達も横になる。
思ってた以上に疲れてたんだろう。
髪の束を猫じゃらしの代わりにして、ナッツと遊んでいる彼女を見ながら、オレもすぐに眠りについた。
「あだっ!いたたたた!!ちょっ、待てってスクアーロ!ただの夢だと思ってたんだから仕方ないだろ!」
シモン・コザートは生き延びていた。
ボンゴレ1世は裏切ってなどいなかった。
全ては、D・スペードの仕組んだ罠で、シモンを狙ったのはボンゴレを唯一無二のマフィアに仕立て上げるため、邪魔物を排除するための策略だったのだと。
真実を知ってしまったアーデルハイトからは、炎真を助けて、と託された。
元よりそのつもりだったけれど、エンマの元へと走る脚には力が、覚悟が籠る。
とは言っても、夜は訪れ、そしてその間は、綱吉達も歩き回ることは出来なくなる。
そして焚き火をおこし、開けた場所で腰を下ろした時になって、判明してしまったのだ。
初代ボンゴレと初代シモンの記憶を見ていたことを、山本がスクアーロに全く話していなかったことを。
そして今、怒っているらしいスクアーロに、山本はポカポカと頭を叩かれまくっている。
リボーンは読心術のスキルがあるから、綱吉達の見せられている記憶もほとんど察することが出来ていた。
だがスクアーロだけは正真正銘初耳だ。
初耳というより寝耳に水だし、ついでにいうなら耳に入った水は山本の仕業と言える。
「んなもん普通気が付くだろうがぁ!初代ガッツリ出てんじゃねぇかぁ!初代出た段階で『あっ、もしかして!』ってなんだろぉ普通!しかもシモンだのなんだのと関係の深いワードも出まくってて気が付きませんでしただぁ!?」
「ごめんって!ホントごめん!だからもう叩くなってば!」
「ざっけんなドカス!それがわかってりゃあもっといろいろ準備してあの胡散くせぇゾンビ野郎の隙もつけてたかもしんねぇのによぉ!」
「いたっ!今のはひでぇーって!鼻に当たったのな!」
「知るかボケがぁ!……い"っ!」
座ってからずっと、プンスカと効果音が付きそうな怒りようだったスクアーロだが、その手が山本の頭より高い位置で急に止まる。
食い縛った歯の間からは呻き声が漏れ、空いた片方の手は脇腹に添えられている。
「ちょっ、大丈夫スクアーロ!?」
「そんなに動くから~、じっとしてねーと傷口開いちまうのな」
「てめっ、やっぱり傷治ってねーのかよ!」
「ちょっと横になれ、傷が開いたらオレらじゃどうにも出来ねーからな」
「ううううるせぇ……。まだ限界までは一歩遠いぞぉ」
「あと一歩で限界じゃん!ちょ……休んで休んで!」
むすっと頬を膨らませて、スクアーロが渋々寝袋の上に横になる。
その姿にはどことなく幼さも感じられるが、だからと言って綱吉達が……いや、獄寺が警戒を解くことはない。
「テメー、そんな体でマジで何しに来たんだ?さっきも……」
「……オレの仕事は山本武の監視と、ついでにクローム髑髏へのVG(ボンゴレギア)の受け渡し。それだけだぁ」
「それだけって……」
それだけ、と言うには、スクアーロは無理をしすぎだ。
常人であれば死んでいるような傷にも関わらず、ろくに療養もせずにこんなところにまで来る。
確かに山本を連れてきたことは、ツナ達にとってプラスに働いた。
何より、彼らの去り際にクロームへとVGを渡したことは、きっと勝利への大きな足掛かりになる。
骸だって、きっとD・スペードへと反撃する機会をうかがっている。
反撃に欠かせないVGが手に入ったのは大きい。
……でも本当に、この役目はスクアーロが背負わなきゃならなかったんだろうか。
「というか、どうやって霧のVGを?あれはボンゴレが保管しておくって……」
「あ"あ?……あー、あれはまあ、友人がな」
「へ?」
「あ、小唄さんだよな!そっかー、あの人が盗んできてくれたんだな!」
「なっ、ぬす……!?」
山本の口からさらりと出てきた言葉に、呆然とする。
盗んだ、とは。
「え?え……?盗んだの?」
「……違う、持つべき者に渡しただけだぁ」
「それっぽいこと言ってますけどやっぱりボンゴレから盗んできたんですよね!!?」
それ以上は何も言わないスクアーロに、綱吉は現実逃避をし始める。
彼女を心配していた気持ちは既にどこかへと吹っ飛んでいた。
下手をしたら今頃ボンゴレは大騒ぎだろうに。
この悪びれてもいない銀髪頭を引っ叩けば、少しは反省してくれるだろうか。
「盗んだにしろ借りたにしろ、スクアーロのお陰で、クロームにVGが渡せたのは悪くねーぞ」
「まあ、そうかもしれないけどさぁ」
納得は行かないが、確かに助かってはいる。
それ以上の追求はやめにして、これからのことを話し合うこととした。
「山本とも合流出来たし、クロームは操られてるみたいだけど……でもVGは渡せた」
「これなら、正気に戻ったときにも戦えるな」
「それに、D・スペード。シモンファミリーを騙して、陥れようとしたのはアイツだった……」
ずっと迷って、心には濃い霧がかかっていたけれども、ようやく腹が決まった。
全ての黒幕はD・スペードだった。
ならば、あいつを倒す。
「倒すべきは、D・スペードだ!!クロームはもちろん、古里炎真も助けるんだ。友達だから」
友達を助けたい。
結局答えはそこにあった。
口に出して言えば、その答えは更なる確信として……さらに強固な『誇り』として、胸の中に結び付く。
そして、その想いに答えるように、指輪が光り、横にナッツが現れた。
今まで呼んでも呼んでも出てこなかったのに、今さらになってなんで?
リボーンが言うには、ナッツは大好きなエンマと戦うのを拒否していたんじゃないか、ということらしい。
確かに、ナッツはちょっと頑固なところがあるからなぁ。
でも、ナッツは出てきてくれた。
オレが、オレの弱い心を見付けて、自分の覚悟を決めた今、ナッツはオレの言葉に答えてくれたのかもしれない。
正直、父さんがエンマの家族を殺したって言われたことには、まだ心につっかえたままだ。
それでも、信じてみようと思ったのだ。
助ける。
クロームも、エンマも、必ず助けるのだ。
オレが決意を固めるのに、ナッツも呼応するように吠えた。
「ガウッ!」
ナッツはとことこと駆けていって、オレ達に背中を向けて横になってるスクアーロに近付いた。
ぺしっと前足で背中を叩く。
「い"っ!」
「な、ナッツ!駄目だろ!」
オレの決意とか何にも関係なかった。
ナッツはただ珍しい人がいることに気がついて、好奇心のままに近寄ったらしい。
というかまさか、弱ってることがわかってて近付いたのか?
自分のアニマルリングだけれども、こいつ酷い奴だな……。
「んだよ、お前ら揃いも揃って。放牧してんじゃねぇ」
「次郎は家の中でしか放し飼いしてねーだろ?」
「そう言えばヒバリもよく放し飼いにしてるな」
スクアーロは顔を顰めながらゆっくりと寝返りを打つ。
ナッツはその目の前でおろおろと慌てている。
自分から突っ込んどいて、こいつ本当に度胸があるんだかないんだか。
当のスクアーロは、ナッツに怒る様子もなく、ぼんやりとしたまま据わった目でオレ達を眺めながら、ビクつくナッツの頭を撫でる。
「明日は早くから移動し始めるんだろぉ。とっとと寝たらどうだぁ」
「そ、そうだね。ほら、ナッツも戻れよ!」
「グルルゥ~」
「あーもう、甘えるなってば」
普段は人見知りするくせに、スクアーロに頭を撫でられて、ナッツはご満悦の様子だ。
スクアーロもスクアーロで、気持ち良さそうにナッツのたてがみに指を通して、甘えるナッツを不快に思っている様子はない。
「ほっといて良いんじゃねぇか?」
「……スクアーロは?ナッツのこと、頼んでも良い?」
「お前が良いなら」
「スクアーロ動物好きだもんなー」
山本いわく動物好きらしいスクアーロは、眩しそうに目を細めながら、ナッツの喉を撫でて甘やかしている。
スクアーロが良いって言うなら、良いんだろう。
ナッツを任せたまま、オレ達も横になる。
思ってた以上に疲れてたんだろう。
髪の束を猫じゃらしの代わりにして、ナッツと遊んでいる彼女を見ながら、オレもすぐに眠りについた。