if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

「そう!それでそのシット・ピー!!って子、メチャメチャ変でさあ。お弁当なんてあんこだけだったんだよ!!」
「変わった奴がいるもんだなぁ」
「獄寺の言う通り、本当にUMAだったりしてな」
「お前までいう?」

獄寺と別れた後、綱吉、リボーン、スクアーロの三人で、道を歩いているときだった。
綱吉は自分の話を聞くスクアーロの表情が、少しは明るくなったように見えて、安心しながら角を曲がろうとする。
その時、聞くだけで痛くなるような、鈍い音が聞こえてきて、はっと道の向こうに目を向けた。

「金出せオラァ!!」

道のど真ん中で、並中生らしき男二人が誰かをリンチしている。

「!!ケンカ!?」
「っつーよりゃあ、リンチだなぁ」
「ど、どうしよう!!スクアーロ!あいつら止めなきゃ!!」
「……あのガキ、今朝校門近くで見かけた制服着てるなぁ」
「あっ!!あいつ!!大人しい方の転校生だ!!」

ああいう状況に慣れているのか、ダメージの少ない攻撃の受け方をしている少年に、スクアーロは少し眉をひそめる。

「スクアーロ!!あいつのこと助けて……」
「オレを頼るなぁ」
「ええーっ!!?」
「……まあ、今回だけは助けてやる」

そう言うと、スクアーロはふらりと曲がり角を通り過ぎ、スタスタとリンチをする二人に近づく。
そして徐に、彼らに声を掛けた。

「お゙い」
「ああ?なん……だばっ!?」
「テメー何しやが……あがっ!!」

そして、あっという間に二人の急所に拳を打ち込み、気絶して地面に這いつくばった二人に、悪びれた様子もなく言った。

「誰かにリンチするってことは、自分がぶん殴られても文句言えねぇってことだぁ。カスはカスらしく、家帰ってクソして寝てろぉ……って、もう聞こえてねぇかぁ?」
「つ、強っ……!!」
「ヴァリアーの作戦隊長なんだから、当たり前だぞ」
「それはそうだけどさ……改めて見ると……。山本、よくスクアーロと互角に戦ってたなぁ、って……」

自分に対して、綱吉が言っているのを聞きながら、スクアーロはため息を吐く。
奴はヴァリアーのことをなんだと思っているのか。
そしてチラリと視線を下に向ける。
リンチをされていた転校生が、呻きながら起き上がろうとしている。
駆け寄ってきた綱吉が、彼に向かって手を差し伸べた。

「あの、大丈夫だった!?」
「……」

転校生は、無言のまま綱吉の手を取ろうとする。
しかしその瞬間、二人の間に異変が起こった。

「え!?」

綱吉の胸元、そして転校生の胸元から、一瞬光が漏れた……ような気がする。
スクアーロと、そして珍しくリボーンも、目を見開いて驚く。
いったい何が起こったのか、確かめる間もなく、転校生の少年は慌てたように散らばった荷物をかき集めると、どこかへと走って行った。

「な、何だ今の……?」

呆然と呟く綱吉。
その後ろで、手紙らしきものを見つけたリボーンが、それを拾い上げる。
その手紙に書かれている名を見て、スクアーロははっと表情を変えた。
シモン、それは確か、継承式に招待されているファミリーの一つだったはず。
スクアーロの変化に気付いたリボーンが、彼女に視線を合わせる。

「……」

無言で、スクアーロはリボーンへと、一枚の紙を渡す。
そして、転校生の忘れものらしき、ぼろぼろの教科書を拾い上げている綱吉に声を掛けた。

「沢田ぁ、それ、あのガキの忘れものだろぉ。届けた方が良いんじゃないのかぁ?」
「え?あ、うん、そうかも……」
「向こうに走って行ったんだぁ。追いかけていけばすぐに見つかるだろう」
「え!オレあいつのこと追いかけていく感じなの!?」
「さっさと届けてやれよ、ダメツナ。オレは帰っておやつ食べてるぞ」
「え、ちょっ……リボーン!!」

あっという間に姿を消したリボーンに、綱吉はがっくりと肩を落とす。

「付き合ってやるから、さっさと立てぇ」
「う……ありがと……」

とぼとぼと歩きだした綱吉の少し後ろを、影のようにぴったりと張り付き、スクアーロも歩いて行ったのだった。
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