if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
「……スクアーロ、なんかあった?」
「…………あ゙あ?なんだぁ?」
「いや、あの……さっきからちょっと落ち込んでるみたいだし、なんかあったのかなぁ……って」
綱吉にそう言われて、スクアーロは首を傾げる。
自分が落ち込んでいる?
「こいつ、いっつもこんなもんっすよ。こんな奴の事気にする必要ないですって!」
獄寺に言われて、綱吉もまた首を傾げる。
こんなもん、だろうか。
「……よく、わからん」
ボソッと呟いたスクアーロは、彼ら二人を迎えに来る前の事を思い返していた。
* * *
「……わりぃ」
消え入りそうな小さな声。
その様子は酷く疲れきっていて、少し言い過ぎたか、とロマーリオは眉間のシワを1つ増やす。
「スクアーロ、別に謝ることは……」
眉を下げて、ディーノがそう言ったが、スクアーロはゆるゆると首を振る。
「すまない。そうだよなぁ、しっかり、しなくちゃな」
「スクアーロ、お前……」
「ロマーリオ、ここで良い。ここで降りる」
「あ、ああ」
停まった車からすぐに降りて、どこかへ行こうとするスクアーロを、ディーノは慌てて追い掛けて、その手を掴んで止めた。
「スクアーロ、どこに行くんだよ」
「……学校。戻って、警護を続ける。お前らが居なくても、人員は十分足りているから、だからもう帰って良い」
ディーノが手を掴んでいるから、スクアーロの脚は止まっている。
しかし、彼女は振り向かないままで、怖いくらい静かに話していた。
「……甘えて、たんだ。お前らが優しいから、オレは甘えて、寄り掛かって、ズルを、していた」
「甘えてなんかないだろ?ずっと頑張って、苦しんで、戦ってただろ?いや、例え甘えてたとしても、オレはそれでも、良いと思う」
垂れた銀髪に隠れて、スクアーロの顔は見えない。
でもその後ろ姿が、まるで泣いているかのように見えて、ディーノは手の力を強める。
「スクアーロ、甘えても良いんだ。少なくとも、オレには強がらないで、素直に甘えて、頼ってくれよ。お前が無理してボロボロになるとこ見るよりも、そっちの方がずっと嬉しい」
ピクリ、黒いコートの肩が跳ねる。
酷く戸惑った様子のその肩に手を伸ばそうとしたとき、突然、スクアーロを止めていたディーノの手は、はね除けられた。
「ぁ……」
「……ごめん、ダメなんだよ。そう言うの、一旦認めたら、オレはきっとダメになるから。だから、甘えてしまうから、……お願いだから、帰ってくれ」
「スクアーロ……」
早足に歩き去っていくスクアーロを、ディーノは呼び止めることも出来ずにただ見ていることしか出来なかった。
一瞬振り向いた彼女の顔は、迷子の子どものように頼りなさげで、しかしその瞳は、全てを拒絶していた。
* * *
「スクアーロ?」
「……ん゙ん、なんだ?」
「やっぱり、ちょっと疲れてるんじゃない?なんかボーッとしてるって言うか……」
「考え込んでる姿も絵になるぞ」
「そうそ……違うよ!なんで突然出てくるんだよリボーン!!」
「暇だったからな」
「暇だからって一々ちょっかい出してくるなってば!!」
突然、綱吉の肩に乗ってきたリボーンが、スクアーロの顔を覗き込む。
心配そうに綱吉も覗き込んできて、スクアーロの顔色を窺った。
「……そんなにボーッとしてたかぁ?」
「じゃあ聞くけど、さっき獄寺君が帰ったの気付いてた?」
「…………帰ったのかぁ、あいつ」
「確かに、ボーッとしてるな」
スクアーロは、大きく息を吐き出して頭を振り、米神の辺りを軽く拳で叩く。
幾らなんでも、ぼんやりし過ぎだ。
その様子に、綱吉は更に心配そうに眉を下げた。
「無理したらダメだよ」
「してねぇよ」
「それなら良いけど……。疲れたらちゃんと言ってね?オレが力になれるかどうかは、わからないけど……」
綱吉の言葉に、スクアーロは小さく苦笑を浮かべる。
「心配しなくても、大丈夫だ」
「そう?」
「お前はオレよりも、テメーの命を心配してろぉ」
「そうだよね!オレ命狙われてるんじゃん!」
「忘れてたのか?だからお前はダメツナなんだぞ」
「う、うるさいなー!」
騒がしくなった師弟を横目に、スクアーロは胸に手を当てる。
心臓はいつも通り、ゆっくりと規則正しく鼓動を刻んでいる。
さっきと同じようなことを言われた。
綱吉と、ディーノ。
二人とも優しいし、お人好しな奴だと思う。
だが、ディーノに『甘えて良い』と言われたときには、鼓動が早くなって、頭が真っ白になって、息が苦しくなった。
綱吉に『無理したらダメ』と言われても、自分は何も変わらなくて、少しは心が楽になった気がしたが、それだけだった。
何が、違うのか。
スクアーロには、よくわからなかった。
先程の事を思い出せば、また思考が乱れる。
頭を振って、切り替えようとした。
今の最優先は、仕事だ。
顔を上げて、頭の後ろで髪を一纏めにした。
「…………あ゙あ?なんだぁ?」
「いや、あの……さっきからちょっと落ち込んでるみたいだし、なんかあったのかなぁ……って」
綱吉にそう言われて、スクアーロは首を傾げる。
自分が落ち込んでいる?
「こいつ、いっつもこんなもんっすよ。こんな奴の事気にする必要ないですって!」
獄寺に言われて、綱吉もまた首を傾げる。
こんなもん、だろうか。
「……よく、わからん」
ボソッと呟いたスクアーロは、彼ら二人を迎えに来る前の事を思い返していた。
* * *
「……わりぃ」
消え入りそうな小さな声。
その様子は酷く疲れきっていて、少し言い過ぎたか、とロマーリオは眉間のシワを1つ増やす。
「スクアーロ、別に謝ることは……」
眉を下げて、ディーノがそう言ったが、スクアーロはゆるゆると首を振る。
「すまない。そうだよなぁ、しっかり、しなくちゃな」
「スクアーロ、お前……」
「ロマーリオ、ここで良い。ここで降りる」
「あ、ああ」
停まった車からすぐに降りて、どこかへ行こうとするスクアーロを、ディーノは慌てて追い掛けて、その手を掴んで止めた。
「スクアーロ、どこに行くんだよ」
「……学校。戻って、警護を続ける。お前らが居なくても、人員は十分足りているから、だからもう帰って良い」
ディーノが手を掴んでいるから、スクアーロの脚は止まっている。
しかし、彼女は振り向かないままで、怖いくらい静かに話していた。
「……甘えて、たんだ。お前らが優しいから、オレは甘えて、寄り掛かって、ズルを、していた」
「甘えてなんかないだろ?ずっと頑張って、苦しんで、戦ってただろ?いや、例え甘えてたとしても、オレはそれでも、良いと思う」
垂れた銀髪に隠れて、スクアーロの顔は見えない。
でもその後ろ姿が、まるで泣いているかのように見えて、ディーノは手の力を強める。
「スクアーロ、甘えても良いんだ。少なくとも、オレには強がらないで、素直に甘えて、頼ってくれよ。お前が無理してボロボロになるとこ見るよりも、そっちの方がずっと嬉しい」
ピクリ、黒いコートの肩が跳ねる。
酷く戸惑った様子のその肩に手を伸ばそうとしたとき、突然、スクアーロを止めていたディーノの手は、はね除けられた。
「ぁ……」
「……ごめん、ダメなんだよ。そう言うの、一旦認めたら、オレはきっとダメになるから。だから、甘えてしまうから、……お願いだから、帰ってくれ」
「スクアーロ……」
早足に歩き去っていくスクアーロを、ディーノは呼び止めることも出来ずにただ見ていることしか出来なかった。
一瞬振り向いた彼女の顔は、迷子の子どものように頼りなさげで、しかしその瞳は、全てを拒絶していた。
* * *
「スクアーロ?」
「……ん゙ん、なんだ?」
「やっぱり、ちょっと疲れてるんじゃない?なんかボーッとしてるって言うか……」
「考え込んでる姿も絵になるぞ」
「そうそ……違うよ!なんで突然出てくるんだよリボーン!!」
「暇だったからな」
「暇だからって一々ちょっかい出してくるなってば!!」
突然、綱吉の肩に乗ってきたリボーンが、スクアーロの顔を覗き込む。
心配そうに綱吉も覗き込んできて、スクアーロの顔色を窺った。
「……そんなにボーッとしてたかぁ?」
「じゃあ聞くけど、さっき獄寺君が帰ったの気付いてた?」
「…………帰ったのかぁ、あいつ」
「確かに、ボーッとしてるな」
スクアーロは、大きく息を吐き出して頭を振り、米神の辺りを軽く拳で叩く。
幾らなんでも、ぼんやりし過ぎだ。
その様子に、綱吉は更に心配そうに眉を下げた。
「無理したらダメだよ」
「してねぇよ」
「それなら良いけど……。疲れたらちゃんと言ってね?オレが力になれるかどうかは、わからないけど……」
綱吉の言葉に、スクアーロは小さく苦笑を浮かべる。
「心配しなくても、大丈夫だ」
「そう?」
「お前はオレよりも、テメーの命を心配してろぉ」
「そうだよね!オレ命狙われてるんじゃん!」
「忘れてたのか?だからお前はダメツナなんだぞ」
「う、うるさいなー!」
騒がしくなった師弟を横目に、スクアーロは胸に手を当てる。
心臓はいつも通り、ゆっくりと規則正しく鼓動を刻んでいる。
さっきと同じようなことを言われた。
綱吉と、ディーノ。
二人とも優しいし、お人好しな奴だと思う。
だが、ディーノに『甘えて良い』と言われたときには、鼓動が早くなって、頭が真っ白になって、息が苦しくなった。
綱吉に『無理したらダメ』と言われても、自分は何も変わらなくて、少しは心が楽になった気がしたが、それだけだった。
何が、違うのか。
スクアーロには、よくわからなかった。
先程の事を思い出せば、また思考が乱れる。
頭を振って、切り替えようとした。
今の最優先は、仕事だ。
顔を上げて、頭の後ろで髪を一纏めにした。