if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
普段なら、生徒達の明るい声が響き、活気に満ち溢れているだろう時間帯の学校、しかし今は、シンと静まり返って、誰の気配も感じられない。
「なんか……慣れたところのはずなのに、すごく不気味、だね……」
「生徒から教師まで、学校にいた奴は、本当に全員寝ちまってるみたいっすね……」
綱吉と獄寺は、ちらりと隣にいる人物の顔を覗う。
指からリングを外し、いつも通りの仏頂面をしたスクアーロが、二人分の視線に気付いて首を傾げた。
「なんだぁ?」
「いやぁ……まさか雨の炎で、学校中の人間全員眠らせるとは思わなくて……」
「無茶苦茶すぎんだろ……」
学校に入ろうと、綱吉達が昇降口へと踏み入れた時、突然スクアーロは雨の炎を展開させて学校全体を包み込んだ。
綱吉達ならば容易に防げる程度の炎だったが、一般人では自分達が攻撃されていることにすら気づけない。
通り過ぎる教室を一つ一つ確認して、全員無事に寝込んでいるのを確認しながら、綱吉は暗い雰囲気を背負ってため息を吐く。
「このまま敵のボスも眠っちゃっててくれたら楽なんだけどな……」
「そう上手くはいかねぇだろぉ。オレの使ってるリングは、Cランクの屑リング。これを使って出す炎じゃムラも多いし、この炎の薄さじゃ達人級の人間には効果は少ないだろうぜぇ」
「難しいね……」
「下手に強くすりゃあ生徒にも危険が及ぶ、ってことか」
炎の出しすぎで、耐えきれずに壊れたリングを投げ捨てて言ったスクアーロに、二人は神妙な顔で呟く。
確かに炎は便利な道具ではあるが、一歩使い方を間違えれば、それがすぐに命に関わる。
改めて、その力の恐ろしさを感じて、綱吉達の顔は険しさを増す。
「しかし、これで敵に隙を作れる可能性はある。欠点はあれど、決してマイナスではねぇのさぁ」
「うん……そうだね!」
少し暗くなった二人を励まそうとでもしているのか、スクアーロは出来るだけ明るい声を作って話す。
それに応えるように、綱吉もまた明るい声で返事をした。
さて、今三人が歩いているのは、目的地である屋上へと続く階段だ。
上に上がれば上がるほど、綱吉と獄寺の緊張は高まっていく。
スクアーロの顔色は、今までとまるで変わった様子はなかったが、それでもその目付きは少しずつ鋭さを増しているように思えた。
「あ……!」
「屋上のドアだなぁ?」
「ああ、そうだぜ」
そしてついに、三人が屋上のドアの前に並ぶ。
まずはスクアーロが、ドアにトラップが仕掛けられていないかどうかを確かめた。
ドアから手を放したスクアーロが首を振る。
どうやらトラップはないらしい。
しかしドアを開けた瞬間に攻撃を受ける可能性もある。
慎重に取っ手を握り、ゆっくりとドアを押し開ける。
少し開いて、向こう側を確かめるが、変わったところは見当たらない。
勢いよくドアを開く。
そして……。
「な、なん……だと……?」
屋上の様子を見た瞬間、スクアーロは思わずそう呟いていた。
スクアーロの背中から、屋上の様子を見た綱吉と獄寺も、驚きのあまり絶句している。
なぜならそこにいたのは……。
「うぅ~ん……、むにゃむにゃ……」
回路木雪と思われる少女が、屋上の床にころりと丸まって、気持ちよさそうに寝息を立てていたからである。
「こ、これは……」
「……スクアーロさっき、『達人級の人間には効果は少ない』って……」
「……どこに達人級の人間がいるんだ?」
「そ、それは……だなぁ……」
言葉に詰まるスクアーロ。
その顔色はどことなく悪い。
綱吉と獄寺が、彼女に向ける視線は冷たい。
屋上を吹き抜けていく秋風も、冷たく彼らの肌を撫でていくのだった。
「なんか……慣れたところのはずなのに、すごく不気味、だね……」
「生徒から教師まで、学校にいた奴は、本当に全員寝ちまってるみたいっすね……」
綱吉と獄寺は、ちらりと隣にいる人物の顔を覗う。
指からリングを外し、いつも通りの仏頂面をしたスクアーロが、二人分の視線に気付いて首を傾げた。
「なんだぁ?」
「いやぁ……まさか雨の炎で、学校中の人間全員眠らせるとは思わなくて……」
「無茶苦茶すぎんだろ……」
学校に入ろうと、綱吉達が昇降口へと踏み入れた時、突然スクアーロは雨の炎を展開させて学校全体を包み込んだ。
綱吉達ならば容易に防げる程度の炎だったが、一般人では自分達が攻撃されていることにすら気づけない。
通り過ぎる教室を一つ一つ確認して、全員無事に寝込んでいるのを確認しながら、綱吉は暗い雰囲気を背負ってため息を吐く。
「このまま敵のボスも眠っちゃっててくれたら楽なんだけどな……」
「そう上手くはいかねぇだろぉ。オレの使ってるリングは、Cランクの屑リング。これを使って出す炎じゃムラも多いし、この炎の薄さじゃ達人級の人間には効果は少ないだろうぜぇ」
「難しいね……」
「下手に強くすりゃあ生徒にも危険が及ぶ、ってことか」
炎の出しすぎで、耐えきれずに壊れたリングを投げ捨てて言ったスクアーロに、二人は神妙な顔で呟く。
確かに炎は便利な道具ではあるが、一歩使い方を間違えれば、それがすぐに命に関わる。
改めて、その力の恐ろしさを感じて、綱吉達の顔は険しさを増す。
「しかし、これで敵に隙を作れる可能性はある。欠点はあれど、決してマイナスではねぇのさぁ」
「うん……そうだね!」
少し暗くなった二人を励まそうとでもしているのか、スクアーロは出来るだけ明るい声を作って話す。
それに応えるように、綱吉もまた明るい声で返事をした。
さて、今三人が歩いているのは、目的地である屋上へと続く階段だ。
上に上がれば上がるほど、綱吉と獄寺の緊張は高まっていく。
スクアーロの顔色は、今までとまるで変わった様子はなかったが、それでもその目付きは少しずつ鋭さを増しているように思えた。
「あ……!」
「屋上のドアだなぁ?」
「ああ、そうだぜ」
そしてついに、三人が屋上のドアの前に並ぶ。
まずはスクアーロが、ドアにトラップが仕掛けられていないかどうかを確かめた。
ドアから手を放したスクアーロが首を振る。
どうやらトラップはないらしい。
しかしドアを開けた瞬間に攻撃を受ける可能性もある。
慎重に取っ手を握り、ゆっくりとドアを押し開ける。
少し開いて、向こう側を確かめるが、変わったところは見当たらない。
勢いよくドアを開く。
そして……。
「な、なん……だと……?」
屋上の様子を見た瞬間、スクアーロは思わずそう呟いていた。
スクアーロの背中から、屋上の様子を見た綱吉と獄寺も、驚きのあまり絶句している。
なぜならそこにいたのは……。
「うぅ~ん……、むにゃむにゃ……」
回路木雪と思われる少女が、屋上の床にころりと丸まって、気持ちよさそうに寝息を立てていたからである。
「こ、これは……」
「……スクアーロさっき、『達人級の人間には効果は少ない』って……」
「……どこに達人級の人間がいるんだ?」
「そ、それは……だなぁ……」
言葉に詰まるスクアーロ。
その顔色はどことなく悪い。
綱吉と獄寺が、彼女に向ける視線は冷たい。
屋上を吹き抜けていく秋風も、冷たく彼らの肌を撫でていくのだった。