if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
どたばたと慌ただしい足音。
並盛中学の校門から、グラウンドに駆け込んできたのは、澄百合中学に現在もなお狙われ続けている、沢田綱吉一行であった。
「はっ、はあっ……!ここまで来たら……大丈夫だよね!?」
「爆弾の方はヒバリの野郎が片しに行きましたし、他の追手も見当たらないっすよ10代目!!」
肩で息をする綱吉を労わるように、獄寺が声を掛ける。
安心したように、汗だくの体を壁に預けて休む綱吉や獄寺を背に、スクアーロだけは警戒を緩めることなく、鋭い目で辺りを見回していた。
「まだ策士を捕らえてねぇ。それに、他にもオレ達が知らない敵が潜んでいるかもしれねぇんだぁ。油断するなぁ」
「そ……そうだね……!」
「んなこと、テメーに言われなくてもわかってる!!」
素直に頷いて立ち上がった綱吉と、悪態を吐きながら構える獄寺に、口から漏れそうになったため息を押し込めた。
とにもかくにも、敵の中心人物を捕らえるまで、安心して休めることはない。
気合を入れなおして周囲を見回したスクアーロの視界に、キラ、と何か光るものが映る。
「っ!狙撃かぁ!!」
気付いた瞬間、即座に綱吉、獄寺と御霊の体を引っ掴んで、校門の陰に押し込める。
光って見えたのは狙撃手の持つスコープ。
隠れる直前に放たれた弾丸は、スクアーロの二の腕を掠めて通り過ぎる。
「な、何だ今のは!?」
「じゅ、銃声!?っていうかスクアーロ掠ってなかった!?」
「服が破けただけだぁ。とにかく、相手に見つからないように隠れて動くぞぉ」
「……それより、今の狙撃手、倒したほうが良いですから」
スクアーロが指示を出す……、そこに口を出してきたのは、彼らの捕虜である御霊だった。
当然、出しゃばってきた彼女に、獄寺が噛み付く。
「突然なに口突っ込んできてんだよゴラ!!」
「私は思ったこと言っただけですから」
「……どうして、あの狙撃手を倒したほうが良いと思う」
ツンと顔をそらして言う御霊に、今度はスクアーロが怪訝そうな顔をして訊く。
御霊の話を聞く流れに、獄寺の苛立ちの矛先は、御霊からスクアーロへと変わった。
「こんな奴の話聞く気なのか!?」
「聞くだけなら損はしねぇだろぉ」
「オレ達を罠に掛ける気かも知れねぇだろうが!」
「黙ってろぉクソガキ!!で、何で狙撃手倒した方が良いんだぁ?簡潔に話せ」
獄寺を怒鳴り、一睨みして、スクアーロは再び御霊に問い掛ける。
二人のやり取りに、呆れたように肩を竦めた御霊は、淡々とした口調で理由を話した。
「あの狙撃手、私達の頭ですから」
「頭……って?」
「……お前、あの狙撃手が策士だって言うのかぁ?」
「え、えー!?あれ敵のボスなの!?」
「んな訳ねぇだろ!適当な嘘吐いてんじゃねーぞクソアマ!!」
「本当ですから!」
御霊の衝撃的な発言によって、3人は大きく動揺する。
綱吉は驚きを顔全体に表し、獄寺は端から御霊の言葉を信じないで鼻で笑っている。
スクアーロは、難しげに顔をしかめていた。
「例えそれが本当だったとして、何故お前がそれをオレ達に教える?」
「……そりゃ、私が捕まっているのをわかってて、雪ちゃんは丸美ちゃんに攻撃をさせたわけですし。向こうが裏切ったなら、私も裏切ります。そもそも私、あの子の事、あまり好きじゃないですから」
「そんな理由で、標的に肩入れして依頼人裏切るのかぁ?」
「私にとっては大きな理由ですから。私、まだ中学生なんですよ?なのに学校に切り捨てられて、こんな日常生活に使えない技術ぶら下げて、これからどこで生きろって言うんです。ちょっとぐらい、意趣返ししたって良いじゃないですか」
「……」
御霊の言い分はつまり、目には目を、裏切りには裏切りを、と言うことらしい。
自分の奪還を考えずに切り捨て、標的と一緒に殺そうとしてくる元味方への仕返し。
通らなくもない言い分だが、一概に信じられるものではない。
「嘘に決まってんだろうが!とにかくここから離れて、安全なところに身を隠した方が良い!!」
獄寺の言うことは最もだ。
まあ、安全な場所があるかどうかはわからないが、ディーノとも離れてしまっている。
どこかで落ち合って、態勢を整え直すことは必要に思える。
「……沢田、こいつの言っていることが本当ならば、さっさとあの狙撃手倒してきた方が、決着も早くつく」
「え?」
「だが嘘なら、すぐにでもこの場から逃げて、態勢を整え直した方が良い。……どっちにするか、お前が決めろぉ」
「オレーーーっ!!!??」
スクアーロがその判断を委ねたのは、綱吉だった。
正確に言えば、綱吉ではなく、彼が持つブラッド・オブ・ボンゴレ、いわゆる超直感。
それに頼ることは、少々、どころか、かなり癪な話ではあったが、自分の気持ち云々よりも、優先すべきは任務であると、気持ちを切り替え、綱吉に訊ねる。
「10代目!ご指示を!」
「オ、オレにはそんなこと決められないよ!!スクアーロが決めてくれれば……」
「オレを頼んじゃねぇ。テメーの命が掛かってるんだぁ。テメーで判断しろぉ」
「そんな無茶なっ!!」
無理だ無理だと騒ぐ綱吉に、スクアーロも額に血管を浮かべる。
早くしろと怒鳴りたい気持ちを抑え、綱吉の頭を両手で挟んだ。
……その際、少し力が強くなってしまったことは不可抗力である。
「良いかぁ、こいつの顔をしっかり見ろ」
「で、でも……!」
「うるせぇ、口閉じて、深く息を吸え」
「わ、わかった……」
綱吉の後ろに立って、彼の顔を強制的に御霊の方へと向けさせる。
大きく深呼吸をした綱吉に、スクアーロは出来るだけゆっくりとした口調で話し掛けた。
「落ち着いたなぁ?」
「うん……、ちょっとは……」
「なら、こいつに訊け」
「訊く……って、何を?」
「何でも良い、お前の頭に、思い浮かんだ事をだぁ」
「うーん……」
「目ぇ閉じて、考えろぉ。焦らなくて良い」
「わ、かった……」
綱吉は言われた通りに、目を閉じて考える。
スクアーロと、御霊の話が、脳裏によみがえってくる。
暫くその記憶を反芻して、綱吉はゆっくりと目を開いた。
「……御霊さんは、何がしたいの?」
「……は?」
「御霊さん自身は、何がしたいと思っているの?」
「私、自身……?」
綱吉の問いに、御霊はポカンとした表情を浮かべる。
綱吉の言葉に、戸惑っている様子だった。
「わ、私は、ただ雪ちゃんや澄百合に仕返しを……」
「……嘘だなぁ」
「嘘じゃありませんから!」
「本当なら、そんなに戸惑わねぇだろう」
彼女自身がどうしたいか、さっきの言い分訊く限りなら、戸惑うことなく『仕返し』と答えられたハズだ。
しかし一瞬彼女は戸惑い、目を泳がせた。
それは、その答えが彼女自身がしたいことではなく、彼女がそう答えるように指示されていたことだったからだろう。
「でも、スクアーロ、彼女が本当に全部、嘘言っているような気がしないよ……」
「ああ?」
「あの狙撃手、本当に策士の……えーっと、回路木雪、って人なんじゃないのかなぁ」
綱吉が更に重ねた言葉に、スクアーロは顎に手を当てて考え込む。
ボンゴレの血は侮れない。
特にこんな状況の時は。
それは、スクアーロ自身が身をもって知っている。
仮に、御霊が何かを企んでいて、しかしあの狙撃手が本当に策士だったとする。
彼女達の狙いは何なのだろう。
まず、この状況は、事前に予測されており、御霊と雪が連絡を取っている訳ではない、と、思われる。
ちなみに、彼女の狙撃の腕は確かだったが、あの程度ならばスクアーロは避けられる。
しかし、綱吉達にはそれは出来ない。
ならば、綱吉とスクアーロを引き離すのが目的なのだろうか。
それだけでは、少し足りない気がする。
わざわざ、策士が前面に出てやることではないと思える。
ならば、目的は何か。
中にトラップが張ってあって、それで自分達を捕まえる気か?
スクアーロは違うと判断する。
さっきまで、あれだけ大量のトラップを突破してきたのだ。
そんなものが意味を成さない事など、相手もわかっているはず。
ならば未知の敵が待ち伏せしているとか?
あり得ない話ではないが、それならばそれで、戦い様はある。
スクアーロは、先程スコープが光った場所を思い出す。
並中の屋上だった。
「……学校の連中の前では、オレ達が全力を出せないとでも考えているのかぁ?」
「ノーコメントですから!」
御霊は拗ねたようにそっぽを向いている。
まあ、しかし、長年の勘から、これでは答えが間違っているらしいことをさとる。
スクアーロは更に首を捻って考える。
「……まさか、学校の生徒を人質になんて、考えちゃいねぇだろうなぁ?」
「ノーコメント!」
じっと、御霊の様子を伺う。
その様子に気付いて、御霊もスクアーロを見る……と言うより、睨み付ける。
「そ、そんな……!それが本当だったらどうするの!?」
「おい、どうなんだよ!答えろ!!」
「ノーコメント」
「……」
本当だ、と、考えた方が良いかもしれない。
強気に自分達にガンをつけてくる御霊を見て、スクアーロは眉間にシワを寄せた。
「獄寺ぁ、狙撃手がいた方角、わかるか?」
「あ?屋上の方だろ?」
「そっちにシールド全開にしておけぇ。……今から、狙撃手潰しに行くぞぉ」
「チッ!わかった!!10代目!オレの背中に隠れてて下さいね!!」
「う、うん!」
3人は狙撃手の元へと向かうため、立ち上がって構える。
そして御霊は……
「お、おいてけぼりとか……!有り得ないですからーっ!!」
「うるせぇぞガキぃ。しばらく寝てろぉ」
校門近くの死角に、縛られて転がされ、スクアーロの持っていた睡眠薬によって眠らされる羽目になったのである。
並盛中学の校門から、グラウンドに駆け込んできたのは、澄百合中学に現在もなお狙われ続けている、沢田綱吉一行であった。
「はっ、はあっ……!ここまで来たら……大丈夫だよね!?」
「爆弾の方はヒバリの野郎が片しに行きましたし、他の追手も見当たらないっすよ10代目!!」
肩で息をする綱吉を労わるように、獄寺が声を掛ける。
安心したように、汗だくの体を壁に預けて休む綱吉や獄寺を背に、スクアーロだけは警戒を緩めることなく、鋭い目で辺りを見回していた。
「まだ策士を捕らえてねぇ。それに、他にもオレ達が知らない敵が潜んでいるかもしれねぇんだぁ。油断するなぁ」
「そ……そうだね……!」
「んなこと、テメーに言われなくてもわかってる!!」
素直に頷いて立ち上がった綱吉と、悪態を吐きながら構える獄寺に、口から漏れそうになったため息を押し込めた。
とにもかくにも、敵の中心人物を捕らえるまで、安心して休めることはない。
気合を入れなおして周囲を見回したスクアーロの視界に、キラ、と何か光るものが映る。
「っ!狙撃かぁ!!」
気付いた瞬間、即座に綱吉、獄寺と御霊の体を引っ掴んで、校門の陰に押し込める。
光って見えたのは狙撃手の持つスコープ。
隠れる直前に放たれた弾丸は、スクアーロの二の腕を掠めて通り過ぎる。
「な、何だ今のは!?」
「じゅ、銃声!?っていうかスクアーロ掠ってなかった!?」
「服が破けただけだぁ。とにかく、相手に見つからないように隠れて動くぞぉ」
「……それより、今の狙撃手、倒したほうが良いですから」
スクアーロが指示を出す……、そこに口を出してきたのは、彼らの捕虜である御霊だった。
当然、出しゃばってきた彼女に、獄寺が噛み付く。
「突然なに口突っ込んできてんだよゴラ!!」
「私は思ったこと言っただけですから」
「……どうして、あの狙撃手を倒したほうが良いと思う」
ツンと顔をそらして言う御霊に、今度はスクアーロが怪訝そうな顔をして訊く。
御霊の話を聞く流れに、獄寺の苛立ちの矛先は、御霊からスクアーロへと変わった。
「こんな奴の話聞く気なのか!?」
「聞くだけなら損はしねぇだろぉ」
「オレ達を罠に掛ける気かも知れねぇだろうが!」
「黙ってろぉクソガキ!!で、何で狙撃手倒した方が良いんだぁ?簡潔に話せ」
獄寺を怒鳴り、一睨みして、スクアーロは再び御霊に問い掛ける。
二人のやり取りに、呆れたように肩を竦めた御霊は、淡々とした口調で理由を話した。
「あの狙撃手、私達の頭ですから」
「頭……って?」
「……お前、あの狙撃手が策士だって言うのかぁ?」
「え、えー!?あれ敵のボスなの!?」
「んな訳ねぇだろ!適当な嘘吐いてんじゃねーぞクソアマ!!」
「本当ですから!」
御霊の衝撃的な発言によって、3人は大きく動揺する。
綱吉は驚きを顔全体に表し、獄寺は端から御霊の言葉を信じないで鼻で笑っている。
スクアーロは、難しげに顔をしかめていた。
「例えそれが本当だったとして、何故お前がそれをオレ達に教える?」
「……そりゃ、私が捕まっているのをわかってて、雪ちゃんは丸美ちゃんに攻撃をさせたわけですし。向こうが裏切ったなら、私も裏切ります。そもそも私、あの子の事、あまり好きじゃないですから」
「そんな理由で、標的に肩入れして依頼人裏切るのかぁ?」
「私にとっては大きな理由ですから。私、まだ中学生なんですよ?なのに学校に切り捨てられて、こんな日常生活に使えない技術ぶら下げて、これからどこで生きろって言うんです。ちょっとぐらい、意趣返ししたって良いじゃないですか」
「……」
御霊の言い分はつまり、目には目を、裏切りには裏切りを、と言うことらしい。
自分の奪還を考えずに切り捨て、標的と一緒に殺そうとしてくる元味方への仕返し。
通らなくもない言い分だが、一概に信じられるものではない。
「嘘に決まってんだろうが!とにかくここから離れて、安全なところに身を隠した方が良い!!」
獄寺の言うことは最もだ。
まあ、安全な場所があるかどうかはわからないが、ディーノとも離れてしまっている。
どこかで落ち合って、態勢を整え直すことは必要に思える。
「……沢田、こいつの言っていることが本当ならば、さっさとあの狙撃手倒してきた方が、決着も早くつく」
「え?」
「だが嘘なら、すぐにでもこの場から逃げて、態勢を整え直した方が良い。……どっちにするか、お前が決めろぉ」
「オレーーーっ!!!??」
スクアーロがその判断を委ねたのは、綱吉だった。
正確に言えば、綱吉ではなく、彼が持つブラッド・オブ・ボンゴレ、いわゆる超直感。
それに頼ることは、少々、どころか、かなり癪な話ではあったが、自分の気持ち云々よりも、優先すべきは任務であると、気持ちを切り替え、綱吉に訊ねる。
「10代目!ご指示を!」
「オ、オレにはそんなこと決められないよ!!スクアーロが決めてくれれば……」
「オレを頼んじゃねぇ。テメーの命が掛かってるんだぁ。テメーで判断しろぉ」
「そんな無茶なっ!!」
無理だ無理だと騒ぐ綱吉に、スクアーロも額に血管を浮かべる。
早くしろと怒鳴りたい気持ちを抑え、綱吉の頭を両手で挟んだ。
……その際、少し力が強くなってしまったことは不可抗力である。
「良いかぁ、こいつの顔をしっかり見ろ」
「で、でも……!」
「うるせぇ、口閉じて、深く息を吸え」
「わ、わかった……」
綱吉の後ろに立って、彼の顔を強制的に御霊の方へと向けさせる。
大きく深呼吸をした綱吉に、スクアーロは出来るだけゆっくりとした口調で話し掛けた。
「落ち着いたなぁ?」
「うん……、ちょっとは……」
「なら、こいつに訊け」
「訊く……って、何を?」
「何でも良い、お前の頭に、思い浮かんだ事をだぁ」
「うーん……」
「目ぇ閉じて、考えろぉ。焦らなくて良い」
「わ、かった……」
綱吉は言われた通りに、目を閉じて考える。
スクアーロと、御霊の話が、脳裏によみがえってくる。
暫くその記憶を反芻して、綱吉はゆっくりと目を開いた。
「……御霊さんは、何がしたいの?」
「……は?」
「御霊さん自身は、何がしたいと思っているの?」
「私、自身……?」
綱吉の問いに、御霊はポカンとした表情を浮かべる。
綱吉の言葉に、戸惑っている様子だった。
「わ、私は、ただ雪ちゃんや澄百合に仕返しを……」
「……嘘だなぁ」
「嘘じゃありませんから!」
「本当なら、そんなに戸惑わねぇだろう」
彼女自身がどうしたいか、さっきの言い分訊く限りなら、戸惑うことなく『仕返し』と答えられたハズだ。
しかし一瞬彼女は戸惑い、目を泳がせた。
それは、その答えが彼女自身がしたいことではなく、彼女がそう答えるように指示されていたことだったからだろう。
「でも、スクアーロ、彼女が本当に全部、嘘言っているような気がしないよ……」
「ああ?」
「あの狙撃手、本当に策士の……えーっと、回路木雪、って人なんじゃないのかなぁ」
綱吉が更に重ねた言葉に、スクアーロは顎に手を当てて考え込む。
ボンゴレの血は侮れない。
特にこんな状況の時は。
それは、スクアーロ自身が身をもって知っている。
仮に、御霊が何かを企んでいて、しかしあの狙撃手が本当に策士だったとする。
彼女達の狙いは何なのだろう。
まず、この状況は、事前に予測されており、御霊と雪が連絡を取っている訳ではない、と、思われる。
ちなみに、彼女の狙撃の腕は確かだったが、あの程度ならばスクアーロは避けられる。
しかし、綱吉達にはそれは出来ない。
ならば、綱吉とスクアーロを引き離すのが目的なのだろうか。
それだけでは、少し足りない気がする。
わざわざ、策士が前面に出てやることではないと思える。
ならば、目的は何か。
中にトラップが張ってあって、それで自分達を捕まえる気か?
スクアーロは違うと判断する。
さっきまで、あれだけ大量のトラップを突破してきたのだ。
そんなものが意味を成さない事など、相手もわかっているはず。
ならば未知の敵が待ち伏せしているとか?
あり得ない話ではないが、それならばそれで、戦い様はある。
スクアーロは、先程スコープが光った場所を思い出す。
並中の屋上だった。
「……学校の連中の前では、オレ達が全力を出せないとでも考えているのかぁ?」
「ノーコメントですから!」
御霊は拗ねたようにそっぽを向いている。
まあ、しかし、長年の勘から、これでは答えが間違っているらしいことをさとる。
スクアーロは更に首を捻って考える。
「……まさか、学校の生徒を人質になんて、考えちゃいねぇだろうなぁ?」
「ノーコメント!」
じっと、御霊の様子を伺う。
その様子に気付いて、御霊もスクアーロを見る……と言うより、睨み付ける。
「そ、そんな……!それが本当だったらどうするの!?」
「おい、どうなんだよ!答えろ!!」
「ノーコメント」
「……」
本当だ、と、考えた方が良いかもしれない。
強気に自分達にガンをつけてくる御霊を見て、スクアーロは眉間にシワを寄せた。
「獄寺ぁ、狙撃手がいた方角、わかるか?」
「あ?屋上の方だろ?」
「そっちにシールド全開にしておけぇ。……今から、狙撃手潰しに行くぞぉ」
「チッ!わかった!!10代目!オレの背中に隠れてて下さいね!!」
「う、うん!」
3人は狙撃手の元へと向かうため、立ち上がって構える。
そして御霊は……
「お、おいてけぼりとか……!有り得ないですからーっ!!」
「うるせぇぞガキぃ。しばらく寝てろぉ」
校門近くの死角に、縛られて転がされ、スクアーロの持っていた睡眠薬によって眠らされる羽目になったのである。