if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

「だあー!クソ!!どこもかしこも、トラップだらけじゃねーかクソ!」
「どういうつもりなの敵は!?て言うか策があるんじゃなかったの!?」
「るせぇ!黙って足動かしてろ!」

乱暴に怒鳴って、追ってくる爆弾を切り飛ばしつつ、目の前の罠を強引に突破する。
スクアーロの消耗は激しく、しかし並盛中学校まではまだ距離がある。
道を塞ぐトラップや、飛んでくる爆弾に、巧みに誘導されているのだ。
敵はどうやら長期戦を狙っているらしい。
スクアーロ達の消耗を待って、それから一気に畳み掛ける気か。
少し遠くに見える並中の屋上を睨み、スクアーロは重たくなってきた脚に鞭を打つ。

「お゙い沢田ぁ、少し目立つが、お前の炎でここを一気に突破するぞぉ」
「い゙っ!?良いの!?」
「つべこべ言ってる暇ぁねぇだろうがぁ!ここを越えりゃあ、中学校はすぐだぁ」
「そ、そうだね……!」
「お願いします10代目!!」

指輪に死ぬ気の炎を点す。
綱吉の目が鋭く尖った。

「ナッツ!」
「ガウ!」

飛び出てきた天空ライオン……ナッツが大きく吼えると、空気がピキパキと音を立てて固まった。
いや、固まったのは空気ではない。
空中に張り巡らされたワイヤーと、そこに繋がる爆発物や刃物が、大空の調和によってコンクリートに変わったのだ。
大空の炎が強く燃え上がったせいで、少し目立ったが、目撃した住人が警察や消防を呼んでも、その頃にはもう彼らはその場にはいない。
ここら周辺のトラップは、今の咆哮で無効化されたはずだから、駆け付けた者に被害が及ぶこともないだろう。

「急ぐぞぉ」
「うん!」
「あとちょっとで並中だ!」

駆け出した四人の前には、さっきよりも近くなった並中。
しかし、ほんの数メートルも進まない内に、予想外の事が起きた。

「っ!避けろ沢田ぁ!」
「え?」

スクアーロの声に、綱吉は咄嗟に右に体をずらした。
その彼の肩を掠めるようにして、黒い何かが振り下ろされた。

「なっ!!ヒ、ヒバリ……!?」
「ヒバリさん……!なんでここに!?って言うか何故そんなにボロボロに!?」
「……ワオ、君達なら、僕がこんなことになってる理由くらい、すぐにわかると、思ってたけどね……」

いつもよりも一段と低い声の雲雀は、どうやら酷く怒っているらしく、一言一言区切るように、ゆっくりと話す。
雲雀の姿は、傷こそないものの、酷くボロボロで、普段から羽織っている黒の学ランは焼け焦げてしまって、プスプスと煙をあげていた。
ハッと気付いたように、スクアーロが息を飲んで、雲雀に恐る恐る問い掛ける。

「お前……もしかして、あのトラップに引っ掛かったのかぁ?」
「そう……そうか、あのトラップ、やっぱり君達の仕業だったんだね」

どうやら、そういう事らしかった。
恐らくはいつものように、並中の周りを歩いていたのだろう。
その時に、澄百合の仕掛けたワイヤートラップに引っ掛かった。
傷はなくとも、被害を完全に防ぐことは出来なかったらしい。
焼け焦げた制服の様子から、その事がよくわかる。

「ええぇ!?違います!オレ達じゃないです!」
「あのトラップ仕掛けたのは澄百合の……」
「五月蝿いよ……。僕はただ、僕の並盛を荒らす奴らを、咬み殺すだけだから……!」
「うわぁぁあっ!!?」

トンファーを振り上げた雲雀に、綱吉はすぐに襲ってくるだろう攻撃を予感して、目を強く閉じる。
しかし聞こえてきたのは、自分が殴られる鈍い音、ではなく、固い何かを弾き飛ばす鋭い音だった。
直後、凄まじい爆音が、彼らの上から襲い掛かってくる。

「え、うわぁ!?」
「ヒバリ、お前……!」
「……なるほどね、あのトラップ、君達じゃなくて、この爆弾の主が、仕掛けたものか……」
「そ、そうです!そうそう!」
「……咬み殺す」

ダッと走っていく雲雀。
その後からは、一度も飛んでこなくなった爆弾に、御霊は心の中で静かに合掌した。
――ああ、丸美ちゃん、貴女の事は忘れませんから……。
もしかしたら、自分は彼らに捕まってラッキーだったかもしれない。
殺気を滾らせて駆けていった少年を思い出して、御霊は顔を青褪めさせた。
数分後、遠くの方から少女の悲鳴が聞こえてきた……。
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