if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

綱吉達6人は団子状に固まって、並盛中学を目指して走り続けていた。
走っている間も、彼らの警戒心が緩まることはない。
途中、何度も同じ爆弾が上空から降ってきたが、それらは全て、スクアーロが切り捨てる。
流石の彼女も、疲労が溜まってきているようで、息が上がってきている。
そうして走り続ける一行の脚を、スクアーロの突然の怒声が止める。

「っ止まれ!動くなぁ!!」
「え……ひぁ!?」

綱吉の悲鳴が上がった。
彼の頬には、一筋の切り傷がついている。
スクアーロが宙を切るようにナイフを振るうと、キラキラと光る紐のようなものが地面に落ちた。
ワイヤー……それも、人の肌を容易に切り裂くほど細く、鋭いワイヤーだ。

「チッ!ワイヤー使いだぁ!!テメーらは別の道から進め。飛んでくる爆弾は自分達でどうにかしろ!」
「でもスクアーロは……!」
「このオレが足止めしといてやるっつってんだぁ!!グダグダ言ってねぇでさっさと行けぇ!!」
「は、はいぃ!!」

綱吉の声を押し切り、別の道を指すスクアーロは、既にリングに炎を灯して、ワイヤー使いとの戦闘準備に取り掛かっている。
彼女の勢いに圧されて、綱吉と獄寺が走り出す。
しかし、走り出したのはその二人だけ……正確に言えば、御霊も行きたそうにはしていたが。
とにかく、スクアーロの言葉を無視して、キャバッローネの二人と御霊が残る。

「バカ!お前一人に任せて逃げるなんて、オレは嫌だぞ!」
「バカはどっちだこのドカス!!テメーがここに残って誰が沢田達を守る!?」
「スクアーロが一緒に行けば良いだろ!!」
「……ッチ、そんなに死にてぇなら勝手にしろ!」

ほんの少しのやり取りの内に、ディーノが譲らないだろう事を察したのだろう。
舌打ちを1つ残して、スクアーロは御霊を連れて綱吉達の跡を追う。
彼らの姿が、曲がり角の向こうに消えるのを目の端に捉えながら、ディーノは腹心の部下に話し掛ける。

「死にたきゃ勝手にしろ、だとよ。オレ達、ここで死ぬのか?」
「んなわけねぇよ。もしあっても、オレが命懸けてでも守ってやるさ」
「はは……んじゃ、行くか」
「おう」

死ぬ気など、更々ない。
ディーノがここに残ったのは、死にたかったわけでも、好きな人の前で格好付けたかった訳でもない。
自分と彼女、どっちの方が咄嗟の事態への対応が早いのか。
そう考えた結果、彼女を綱吉達の元へと行かせたのだ。

「オレは炎のコントロールも未熟だし、アイツみてぇに知識が豊富なわけでも、機転が利くわけでもねぇが……」

キリ、と視線を尖らせて、ディーノは目の前を見据える。

「大人を……ナメるなよ」

鞭が、鋭い音を立てて空気を打った。


 * * *


「ディーノさんとロマーリオさんがあそこに残ったの!?」
「あいつらで勝てんのかよ?」
「……腐ってもマフィアのボスだぁ。死にはしねぇだろぉ」

並盛中学へと向かいながら、スクアーロはそう言い捨てた。
ディーノが本当に生き残るかどうかなど、知ったこっちゃない。
だがここで死なれたら、それはそれで困るのだ。
苛つく気持ちを舌打ちで表し、彼女は降ってきた爆弾を弾き飛ばした。
いつまで攻撃し続ける気なのか。
こんなことしても意味がないことに、まだ気付かないのか?
苛立ちは募るばかりだ。

「クソ……、まだなのか……」

並中はまだ、見えてこない。
48/90ページ
スキ