if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

――大きな爆発音に、鼓膜が痺れて、聴覚が一時的に麻痺する
――いや、何故だ?
――何故今私は、聴覚が麻痺している?
――あの近さで爆発したのなら、鼓膜なんてモノは跡形も残らないはず
――それに、私を熱風から守るように目の前を塞いでいる、これはなんだ?

恐る恐る目を上げた御霊の、その目の前には、白銀色の彼が……。

「っ……!ゔお゙ぉい!!全員生きてるかぁ!?」
「う……なんとか……!」
「ありがとう獄寺君!助かった……!!」
「10代目がご無事で何よりです!」
「その嬢ちゃんはオレが見ておく!あんたは沢田さんを……!」

獄寺のシールドによって、最小限に抑えられた爆発、それでも爆熱と爆風の勢いはスゴく、全員の五感が一時的に鈍る。
それでもすぐに、戦闘体勢を整えた彼らを再び襲ったのは、やはり同じ爆弾であった。
ロマーリオに少女の体を乱暴に投げ渡し、スクアーロが剣を抜く。
攻撃がどこから来るのかわかっている分、先程より対処も早い。
雨の炎を纏った剣が、爆弾を空中で真っ二つにする。
鎮静作用のある雨の炎が、極限まで爆発を抑え込み、攻撃を無効化する。
飛び付くように綱吉の襟首を掴んだスクアーロは、そのまま彼を引きずるようにして先に進み出す。

「とりあえず逃げるぞぉ」
「うぐぇ……!わ、わがっだ……!!」
「ゔぉいヴァリアー!10代目の事はもっと丁寧に扱えっつってんだろうが!!」

3人が固まるようにして前を走り、その後ろをキャバッローネコンビと御霊が追う。
もはや、丁寧にトラップを解除している暇はない。
スクアーロの雨の炎と、獄寺の嵐の炎でトラップを強引に突破していく。
無理に突破するせいで、トラップの爆弾が暴発するわ、その他にも様々な仕掛けが発動するせいで、敵に位置を知らせることになるが、炎を使わなかったところで恐らく見付かってしまうため、どちらにしろ結果は同じだ。

「スクアーロ!この後どうするの……!?」
「時間を稼ぐ。その為にも、今は逃げることに集中しろぉ!」
「時間稼ぐったって……稼いだところでどうなるんだよ!?」
「策はある!黙って逃げてろぉ!」
「くそっ……!」

二人はスクアーロに怒鳴られ、必死の形相で走る、走る、走る。
その間も、爆弾は彼らを狙って飛んでくる。
その度にスクアーロが切り飛ばしているが、それもいつまで保つかはわからない。
恐らく、爆弾を飛ばしているのは木端丸美。
しかしトラップや、目の前で爆弾を使うのではなく、飛ばしてくるとは予想外だった。
じっくりと考えている暇はない。
自分の胸元に手を突っ込んだスクアーロは、通信機を取り出す。
その画面にはERRORの文字。
大きく舌打ちをした。

「……チッ!電波妨害かぁ……」

仲間と連絡を取るのは難しい、となると、自分達でなんとかしなければならないらしい。
昼間の住宅街、この爆弾でただでさえ目立っているのに、死ぬ気の炎を派手に使ってこれ以上目立つのはまずい。
爆弾自体は、獄寺のシールドや、綱吉の炎でも防げるだろうが、それではキリがない。

「……このまま、並中に戻るぞ」
「は……はあ!?」
「テメー正気か!?そんなことしたら一般人まで犠牲に……!」
「この時間なら、校庭には誰もいねぇだろう。何より、もし校庭が爆破されるようなことがあったら……」
「あっ……も、もしかして!」
「アイツか……!!」

彼ら全員の脳裏に浮かんだのは、一人の少年の顔……。
彼を上手く焚き付けることが出来れば、爆弾魔を潰すのも難しくない、かもしれない。
進路を変更して、並中へと向かい始めた彼らを襲ってきた爆弾を、スクアーロがまた切り飛ばす。
さっきまでの逃走で、だいぶ並中からは離れてしまっている。
着くまでに死ぬ気の炎が保つか……さらに、不安な事がもう1つ。

「ワイヤー遣いがいなけりゃ良いんだがなぁ……!」

スクアーロの頬を伝った冷や汗は、風にさらわれて宙に散る。
ギリリとスクアーロが握り締めた手には、極細のワイヤーが巻き付けられている。
ワイヤー遣いがいた、その時には、自分がその足止めをすることになるだろう。
相手はきっと、自分とは比べ物にならないレベルの遣い手だ。
裏世界のワイヤー遣いに、どれ程抵抗することが出来るのか……、爆弾を無効化し、走りながら、その時のために考えを巡らせた。
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