if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
並盛中学の校舎の陰。
そこに二人の人影があった。
一人は、後ろ頭に長い髪を結んでおり、校舎の壁際にしゃがみこんでいる。
もう一人の三つ編みの女は、その隣に立って壁に寄り掛かっていた。
「ったく、なに跳ね馬の野郎にちょっかい掛けてやがる」
「あら、良いではありませんかお友達(ディアフレンド)、ただの挨拶でしょう?」
平然と言ってのけるのは、先程ディーノにちょっかいを掛けに行った石丸小唄。
そんな彼女に、苛立たしげにため息を吐いたのは、その様子を盗聴器ごしに聞いていたスクアーロである。
酷く不機嫌そうな顔のスクアーロは、小唄を睨み付けて言う。
「適当なことばっかり言いやがって……」
「あら?わたくしは本当のことしか話してませんわお友達?あなたが彼らをあんなところに置いたのは、嫌いだからではなく、裏世界の人間から少しでも遠ざける為でしょう?」
「……あそこに置いて、どうして遠ざけられるんだよ」
「裏世界の者達が狙っているのは沢田綱吉でしょう?彼らを巻き込まないためには、そもそも関わらせないのが十全ですけれども、関わってこようとしてるのならば、少しでも沢田綱吉から離すことが一番。
あそこは近すぎて狙撃にも向きませんし、敵が現れる可能性も低いでしょうから、巻き込まない為には十全な場所でしょうね」
「……」
「心配しているのなら、素直にそう言えば良いではありませんか」
「うるせぇよ……」
拗ねたように顔を背けたスクアーロに、小唄は呆れ気味にため息を吐く。
中学校はもう一時間目が始まっているらしく、体育館からは元気な声が響いてくる。
「…………裏世界に関わって、良い思いするわけねぇだろ」
「その事については概ね同意しますわ。貴女だって、随分と痛い目に遭ってきたようですしね。でもその事と、あなたが彼らを気に掛けることは、別でしょう?」
「……キャバッローネはボンゴレの傘下だ。無視は出来ねぇだろぉ」
「まあ、あなたがそう言うのなら、それで構いませんけれども」
教室の方を見ながら言うスクアーロに、小唄ももうそれ以上は聞く気はないようで、肩をすくめて口を閉じる。
「つーかお前、何しに来たんだよ」
「ああ、そうでしたわお友達。澄百合と戦うのに、戦力が貴女とキャバッローネの二人では心許ないでしょう。貴女が依頼するなら、想影真心をお貸ししますわよ?」
「……それは何と言うか、最強最悪の布陣だなぁ」
「それを言うなら最終の布陣ですわお友達。今ならお安くしておきますけれど……」
「……」
予想外の申し出に、考え込んで黙る。
想影真心がいれば、あっという間に決着はつくだろう。
それほどに彼女は強く、そしてあまりにも終わっている。
「いや、遠慮する」
しかしスクアーロはその申し出を断った。
「真心に頼って勝つなら簡単だろぉが、オレ達は勝ちたいんじゃねぇ、護りたいんだぁ。想影真心は良い奴だし、オレも別に嫌いじゃねぇが、アイツに頼って勝つのは違う」
「貴女ならそう言うと思っていましたけれど……そうですか」
小唄は頷き、そして用は済んだ、とスクアーロに背を向けてその場を去る。
一人きりになったスクアーロを、中学からわずかに聞こえる賑やかな声が包む。
小唄がいなくなり、静かになったせいか、音がよく聞こえる。
風の音。
自分が動く衣擦れの音。
木のざわめき。
カラスの鳴く声。
そして、遠くから自分の名を呼ぶ声……。
「……――ァーロ!スクアーロ!!」
ディーノの姿を視界に収めると同時に、スクアーロは叫んだ。
「伏せろ跳ね馬ぁ!!」
「なっ……!?」
訳もわからずに伏せたディーノの肩を何かが掠める。
着ていたジャンパーの肩口が裂けて、布の切れ端が弾け飛ぶ。
彼の周囲が太陽の光を受けてキラキラと光るのを見て、スクアーロは顔を歪めて声を絞り出した。
「ワイヤー使いか……!」
ピシリと張られた極細の糸を、手に持ったナイフで断ち切った。
そこに二人の人影があった。
一人は、後ろ頭に長い髪を結んでおり、校舎の壁際にしゃがみこんでいる。
もう一人の三つ編みの女は、その隣に立って壁に寄り掛かっていた。
「ったく、なに跳ね馬の野郎にちょっかい掛けてやがる」
「あら、良いではありませんかお友達(ディアフレンド)、ただの挨拶でしょう?」
平然と言ってのけるのは、先程ディーノにちょっかいを掛けに行った石丸小唄。
そんな彼女に、苛立たしげにため息を吐いたのは、その様子を盗聴器ごしに聞いていたスクアーロである。
酷く不機嫌そうな顔のスクアーロは、小唄を睨み付けて言う。
「適当なことばっかり言いやがって……」
「あら?わたくしは本当のことしか話してませんわお友達?あなたが彼らをあんなところに置いたのは、嫌いだからではなく、裏世界の人間から少しでも遠ざける為でしょう?」
「……あそこに置いて、どうして遠ざけられるんだよ」
「裏世界の者達が狙っているのは沢田綱吉でしょう?彼らを巻き込まないためには、そもそも関わらせないのが十全ですけれども、関わってこようとしてるのならば、少しでも沢田綱吉から離すことが一番。
あそこは近すぎて狙撃にも向きませんし、敵が現れる可能性も低いでしょうから、巻き込まない為には十全な場所でしょうね」
「……」
「心配しているのなら、素直にそう言えば良いではありませんか」
「うるせぇよ……」
拗ねたように顔を背けたスクアーロに、小唄は呆れ気味にため息を吐く。
中学校はもう一時間目が始まっているらしく、体育館からは元気な声が響いてくる。
「…………裏世界に関わって、良い思いするわけねぇだろ」
「その事については概ね同意しますわ。貴女だって、随分と痛い目に遭ってきたようですしね。でもその事と、あなたが彼らを気に掛けることは、別でしょう?」
「……キャバッローネはボンゴレの傘下だ。無視は出来ねぇだろぉ」
「まあ、あなたがそう言うのなら、それで構いませんけれども」
教室の方を見ながら言うスクアーロに、小唄ももうそれ以上は聞く気はないようで、肩をすくめて口を閉じる。
「つーかお前、何しに来たんだよ」
「ああ、そうでしたわお友達。澄百合と戦うのに、戦力が貴女とキャバッローネの二人では心許ないでしょう。貴女が依頼するなら、想影真心をお貸ししますわよ?」
「……それは何と言うか、最強最悪の布陣だなぁ」
「それを言うなら最終の布陣ですわお友達。今ならお安くしておきますけれど……」
「……」
予想外の申し出に、考え込んで黙る。
想影真心がいれば、あっという間に決着はつくだろう。
それほどに彼女は強く、そしてあまりにも終わっている。
「いや、遠慮する」
しかしスクアーロはその申し出を断った。
「真心に頼って勝つなら簡単だろぉが、オレ達は勝ちたいんじゃねぇ、護りたいんだぁ。想影真心は良い奴だし、オレも別に嫌いじゃねぇが、アイツに頼って勝つのは違う」
「貴女ならそう言うと思っていましたけれど……そうですか」
小唄は頷き、そして用は済んだ、とスクアーロに背を向けてその場を去る。
一人きりになったスクアーロを、中学からわずかに聞こえる賑やかな声が包む。
小唄がいなくなり、静かになったせいか、音がよく聞こえる。
風の音。
自分が動く衣擦れの音。
木のざわめき。
カラスの鳴く声。
そして、遠くから自分の名を呼ぶ声……。
「……――ァーロ!スクアーロ!!」
ディーノの姿を視界に収めると同時に、スクアーロは叫んだ。
「伏せろ跳ね馬ぁ!!」
「なっ……!?」
訳もわからずに伏せたディーノの肩を何かが掠める。
着ていたジャンパーの肩口が裂けて、布の切れ端が弾け飛ぶ。
彼の周囲が太陽の光を受けてキラキラと光るのを見て、スクアーロは顔を歪めて声を絞り出した。
「ワイヤー使いか……!」
ピシリと張られた極細の糸を、手に持ったナイフで断ち切った。