if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

「なんだかねっ!スクアーロちゃんのことが、澄百合側に漏れてるみたいなんだねっ!」
「それで……、オレだけでもさっさと潰そうとしてきたわけかぁ」

忌々しげに舌打ちをして、腕の理澄を抱え直したスクアーロは、既に仕事の顔になっている。
ディーノは何もわからないまま、とにかくスクアーロの後を追う。
だがやはり、そこはへなちょこ。
一番転んでほしくないこの場面で、勢いよく転んだ。

「うわっ!?……っと、スクアーロ!ありがとうな」
「良いからさっさと走れ!テメーのへなちょこに、一々構ってる暇はねぇんだよ!」

スクアーロは、予想していたのだろうか、素早くその身体を掴み起こした。
そしてディーノに立ち止まる暇を与えることなく、またすぐに走り出す。
走っている間も、理澄と二人で会話を続けていた。

「襲ってきている奴らの正体に、心当たりはねーのかぁ!?」
「まだそこまで調べてないもん!」
「くそっ……、出夢は大丈夫だろうが……、またもう一人追っ手が来たらキツいぞ」
「そうか?オレとスクアーロなら大丈夫じゃ……」
「足手纏いが二人いるんじゃあなぁ」
「ちょっ、まっ……!審議だ!」

と、ディーノは不満そうだが、スクアーロの言うことは最もだ。
弱さを担う理澄、部下がおらず現在絶賛へなちょこ中のディーノ、この二人を抱えて戦うのはよろしくない。
だが幸いにも、そろそろキャバッローネが拠点としている病院が近い。
そこまで行けば、ディーノは本来の実力が発揮できるし、理澄も保護してもらえる。

「お゙ぉい!あと少しで病院が……はあ!?」
「なっ!なんだよこれ!?」
「た、大変だねっ!病院壊されちゃってる!」

しかし、彼らが必死に走り着いた先に病院は無かった。
破壊されていた。
破壊し尽くされていた。
そこにあったのは、真っ黒な煙を上げて燃え盛る建物の残骸だけで、病院など、影も形もなかった。

「あ……中にいた奴らは!?」

暫く呆けていた3人だったが、まず始めにディーノが我に返り、瓦礫の山に駆け寄る。
そうだ、ここにはキャバッローネの構成員達がいたはず。
スクアーロも慌ててその後を追った。


 * * *


「まったく、匂宮が出てくるなんて聞いてねーですよ。もうっ」

一人の少女が肩を怒らせながら道を歩いていた。
通り過ぎる人々は、ここら辺では見ない制服に目を引かれるが、すぐに彼女の腰辺りを見て目を逸らす。
彼女は腰に、大量の黒いボールの様なものを着けていた。
凸凹とした見た目のそれは、素人でもすぐにその正体を理解できる……しばしばパイナップルとも例えられる、マークII手榴弾だった。

「まぁ僕は遭わずにすみましたし、取り敢えずの目的は果たせましたし」
「よくありません!私はあなたに、スペルビ・スクアーロを殺してこいと命令したのですよ!?逃げられてるじゃないですか!!」
「あ、ろぎちゃん先輩」
「そのアダ名は止めなさい!」

ぶつぶつと何かを話す彼女の前に、同じ制服を着た少女が立ち塞がった。
手榴弾の少女より背が低く、童顔だが、どうやら先輩らしい。
彼女は酷く不機嫌そうな顔で、手榴弾少女を睨み付ける。

「私の名前は回路木雪(カイロギソソギ)!ちゃんと呼びなさい!!」
「いぇっさ」
「返事はハイでしょ!ハイ!」
「ハイでしょ!ハイ!」
「ハイだけで良いんですってば!」

先輩、のようだが、完全に遊ばれていた。
回路木と名乗った少女は、手榴弾少女を連れて移動し始める。
大きくため息を吐き、手榴弾少女に言うことを聞かせる事は諦めたらしかった。

「まあ良いでしょう。こんな事もあろうかと、奴らの拠点には御霊ちゃんを向かわせてます!全く、あなたが一発で仕留めるか、匂宮を撒いて彼らを殺しに行っていればこうはならなかったのに……!」
「ぶーぶー、だって匂宮ですよ?それに、次の手用意してるなら、別にいーじゃないですか。丸美ちゃん泣いちゃいます。えーんえーん」
「無表情で何が、泣いちゃいます、ですか!もう!ヤんなっちゃう!」

二人は並んで歩いていく。
その頃、回路木に『御霊ちゃん』と呼ばれていた彼女が、スクアーロ達の前に立ちはだかっていた。
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