if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

初めて会ったときから、時折感じていた。
ナイフで抉られているような、真綿で首を絞められるような、ぐしゃりと頭を握り潰されるような、そんな具体的な死を感じさせる濃密な殺気。
でもそれは、いつだってほんの一瞬。
次の瞬間には、ただヘラヘラと笑うだけの能天気な馬鹿がいるだけだった。
あの殺気は幻だったのだろうかと思ってしまうほどの、現実味のない瞬間。
リングを懸けて戦ったとき、ずっと殺さずを貫いていた奴は、最後の型を放ったときだけは本当に殺す気だった。
10年後の記憶の中で、奴との修業中もずっと、オレは気を抜けなかった。
時折感じる殺気もそうだったが、何より奴を『死』に近付けないために全神経を使っていた。
死という存在に触れた途端、奴の中から想像もつかない化け物が飛び出てくるような気がしていたのだ。
ずっとアジトの中で、仲間達の近くにおいて修業させた。
チョイスの中で、幻騎士と戦ったときにはヒヤリとしたが、実力差と、使命感に助けられた。
デイジーを倒したときは、ほとんど抵抗されなかったのが幸運だった。
アイツが、山本武が、その本性を現すことなくこれまで生きてきたのは、奇跡に等しい。
目の前で暴れる奴を見て、オレはようやく現実を受け入れた。
受け入れざるを得なかった。

「山本、お前は……」

本能のままに暴れる血塗れの姿を見て、わかってしまったその正体を口にした。

「零崎……だったのか」
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