if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
「……で?結局何であんなところにいたんだ?山本はどこに行った?」
「それは……」
車の中、狭い座席に座って向かい合わせとなり、ディーノに問い詰められ、口ごもる。
山本武は殺人鬼になりました、など、伝えられるはずもなく、かと言って下手な誤魔化しは通用しそうにない。
結果、黙り込む以外に出来ることのないスクアーロは、口を堅く結んだままじっと耐える。
「言えない、って事か?」
「……」
「オレが『スクアーロが号泣してた』って言い触らすとしても?」
「っ……!言え、ない……!」
赤くなってしまった目元を親指で擦られ、また泣きたくなる。
しかしそれでも、スクアーロは何があったのかを言うわけにはいかなかった。
裏世界が危険だと言うのも理由の1つだが、何より山本武の零崎化は、ボンゴレにとってはスキャンダルでしかない。
例え同盟ファミリーのボスだとしても、口を割るわけにはいかないのだ。
……何より、自分に手を差し伸べてくれたこの男を、あの暴力と死が渦巻く世界に、どうしても巻き込みたくなかった。
「……ごめん。からかいすぎたな。泣きそうな顔しないでくれよ。本当に言い触らしたりなんかしねーから、安心してくれ」
「……本当、に?」
「言い触らしたりしねー。でも何があったのかは、聞きたいけどな」
「…………ご、めん」
「……いや、良い。お前が喋れねーってことは、そんだけまずい事なんだろ。ただ、山本は無事なんだな?」
「ああ、無事だ!それだけは断言する」
どうしても口を割りそうにない彼女だったが、山本の安否についてだけはハッキリと肯定した。
その事にだけは、安心して、ディーノは小さく息を吐く。
結局何があったのかは分からなかったが、スクアーロが断言するのだから、きっと山本は無事なのだろう。
それは安心だったり、疲労だったりから出たため息だったのだが、ディーノは目の端にビクつく肩を捉える。
気まずそうに見上げてくるスクアーロが、ディーノに問い掛けた。
「怒ってる……か?」
「ん?何でだ?」
「……オレには、何にも話せねぇ。でもお前は、ずっとあいつらの事を気に掛けていたし、何も知ることが出来ないのは、嫌だろぉ?」
「そりゃ嫌だけどよ、でもだからって、お前に怒ったりしねぇぜ?そんなの、筋違いだろ」
ディーノが言ったその言葉に、スクアーロは見るからに安心した顔をする。
何だかまるで、小さな子供を相手にしているようで、ディーノは少し気が抜けてしまう。
「なんか……スクアーロってそんなキャラだったんだな……」
「っ……いつもは、こんなんじゃねーよ」
「いや、分かってるけどさ……。スクアーロ、今自分が、男相手にに上目遣いしてるって気付いてる?」
「へ……?」
猫背気味に背中を丸め、体育座りで小さくなっているスクアーロの目線は、当たり前だがディーノよりも下にあって、顔色を窺うようにそろそろと見上げているその様子は、上目遣いと取られてもおかしくはなかった。
キョトンとして首を傾げるスクアーロに、ディーノはにじり寄って彼女の目に掛かる髪を払ってやる。
「そんな顔して、誘ってんのか?」
「は……?」
「それとも、オレの事、男とすら思ってくれてねーの?」
「え……?」
白銀の髪に指を絡ませ、少し強めに引っ張って上を向かせる。
ディーノの鳶色の瞳に映り込むスクアーロは、いまいち状況が飲み込めておらず、困惑した顔をしている。
「……跳ね馬?」
「さっきみてーに、ディーノって呼んでくれよ」
「え……、え?」
「名前で呼べ、な?良いだろ?」
スクアーロの長く柔らかな銀髪に、唇で触れる。
思考がおいてけぼりを食らっているのか、呆然として動かないスクアーロを見て、運転席のロマーリオは呆れたように言った。
「おいおい、ボス。部下の目の前で女口説くなよな」
「わりーわりー。何か反応が新鮮で面白いから、ついな」
そんな二人の掛け合いは、スクアーロの耳には届かない。
混乱して、状況を理解することも出来ずに、ただ突然の出来事に困った顔を浮かべることしか、出来なかったのである。
「今の……」
「うん?」
「……ディー、ノ?」
「おう、名前で呼んでくれんだな!どうした?」
「……オレ、オレは……」
支離滅裂な言葉を発するだけのスクアーロに、流石にディーノも心配になったらしい。
心配そうにスクアーロの肩を揺さぶった。
揺すられた当の本人は、唐突に瞼を落とすと、ふらりとディーノの腕の中に倒れ込んだ。
驚いて抱き留めたディーノだったが、腕に触れた額の熱さに、更に驚く。
「なっ……スゴい熱じゃねーか!ロマ!並盛の、いつもの病院だ!」
「ああ!」
熱を出したスクアーロを乗せて、車は並盛の町へと帰っていった。
「それは……」
車の中、狭い座席に座って向かい合わせとなり、ディーノに問い詰められ、口ごもる。
山本武は殺人鬼になりました、など、伝えられるはずもなく、かと言って下手な誤魔化しは通用しそうにない。
結果、黙り込む以外に出来ることのないスクアーロは、口を堅く結んだままじっと耐える。
「言えない、って事か?」
「……」
「オレが『スクアーロが号泣してた』って言い触らすとしても?」
「っ……!言え、ない……!」
赤くなってしまった目元を親指で擦られ、また泣きたくなる。
しかしそれでも、スクアーロは何があったのかを言うわけにはいかなかった。
裏世界が危険だと言うのも理由の1つだが、何より山本武の零崎化は、ボンゴレにとってはスキャンダルでしかない。
例え同盟ファミリーのボスだとしても、口を割るわけにはいかないのだ。
……何より、自分に手を差し伸べてくれたこの男を、あの暴力と死が渦巻く世界に、どうしても巻き込みたくなかった。
「……ごめん。からかいすぎたな。泣きそうな顔しないでくれよ。本当に言い触らしたりなんかしねーから、安心してくれ」
「……本当、に?」
「言い触らしたりしねー。でも何があったのかは、聞きたいけどな」
「…………ご、めん」
「……いや、良い。お前が喋れねーってことは、そんだけまずい事なんだろ。ただ、山本は無事なんだな?」
「ああ、無事だ!それだけは断言する」
どうしても口を割りそうにない彼女だったが、山本の安否についてだけはハッキリと肯定した。
その事にだけは、安心して、ディーノは小さく息を吐く。
結局何があったのかは分からなかったが、スクアーロが断言するのだから、きっと山本は無事なのだろう。
それは安心だったり、疲労だったりから出たため息だったのだが、ディーノは目の端にビクつく肩を捉える。
気まずそうに見上げてくるスクアーロが、ディーノに問い掛けた。
「怒ってる……か?」
「ん?何でだ?」
「……オレには、何にも話せねぇ。でもお前は、ずっとあいつらの事を気に掛けていたし、何も知ることが出来ないのは、嫌だろぉ?」
「そりゃ嫌だけどよ、でもだからって、お前に怒ったりしねぇぜ?そんなの、筋違いだろ」
ディーノが言ったその言葉に、スクアーロは見るからに安心した顔をする。
何だかまるで、小さな子供を相手にしているようで、ディーノは少し気が抜けてしまう。
「なんか……スクアーロってそんなキャラだったんだな……」
「っ……いつもは、こんなんじゃねーよ」
「いや、分かってるけどさ……。スクアーロ、今自分が、男相手にに上目遣いしてるって気付いてる?」
「へ……?」
猫背気味に背中を丸め、体育座りで小さくなっているスクアーロの目線は、当たり前だがディーノよりも下にあって、顔色を窺うようにそろそろと見上げているその様子は、上目遣いと取られてもおかしくはなかった。
キョトンとして首を傾げるスクアーロに、ディーノはにじり寄って彼女の目に掛かる髪を払ってやる。
「そんな顔して、誘ってんのか?」
「は……?」
「それとも、オレの事、男とすら思ってくれてねーの?」
「え……?」
白銀の髪に指を絡ませ、少し強めに引っ張って上を向かせる。
ディーノの鳶色の瞳に映り込むスクアーロは、いまいち状況が飲み込めておらず、困惑した顔をしている。
「……跳ね馬?」
「さっきみてーに、ディーノって呼んでくれよ」
「え……、え?」
「名前で呼べ、な?良いだろ?」
スクアーロの長く柔らかな銀髪に、唇で触れる。
思考がおいてけぼりを食らっているのか、呆然として動かないスクアーロを見て、運転席のロマーリオは呆れたように言った。
「おいおい、ボス。部下の目の前で女口説くなよな」
「わりーわりー。何か反応が新鮮で面白いから、ついな」
そんな二人の掛け合いは、スクアーロの耳には届かない。
混乱して、状況を理解することも出来ずに、ただ突然の出来事に困った顔を浮かべることしか、出来なかったのである。
「今の……」
「うん?」
「……ディー、ノ?」
「おう、名前で呼んでくれんだな!どうした?」
「……オレ、オレは……」
支離滅裂な言葉を発するだけのスクアーロに、流石にディーノも心配になったらしい。
心配そうにスクアーロの肩を揺さぶった。
揺すられた当の本人は、唐突に瞼を落とすと、ふらりとディーノの腕の中に倒れ込んだ。
驚いて抱き留めたディーノだったが、腕に触れた額の熱さに、更に驚く。
「なっ……スゴい熱じゃねーか!ロマ!並盛の、いつもの病院だ!」
「ああ!」
熱を出したスクアーロを乗せて、車は並盛の町へと帰っていった。