if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
後から思えば、あの鋭い右フックをよくもまあオレは避けられたもんだと思う。
後にそう語った通り、ディーノはスクアーロの拳が顔に届くよりも早く、その間に己の掌を割り込ませて、攻撃を受け止めていた。
「なっ……スクアーロ!お前、なんで!?」
「お前を倒せば、オレは強い、よな?だい、じょうぶ、……すぐに済ませる、から……な?」
「何言って、……うお!?」
鞭のように、しなやかで鋭い蹴りがディーノの脇腹を襲う。
ギリギリで防いだが、間髪いれずに繰り出された頭突きが顎を打つ。
「うぎっ……ぃって!!」
「ボス!あぶねぇ!!」
頭突きで怯んだディーノの鼻柱を折らんと、胸ぐらを掴んでいた手が離され、拳が飛んでくる。
ディーノの腕を掴んで強引に後ろに引き、ロマーリオは迫っていた拳を叩き落とした。
スクアーロは、標的をディーノからロマーリオに切り替えたのか、一度距離を取ると、低い姿勢で走り出した。
伸び上がるようにしてアッパーを繰り出す。
首を捻ってそれを避けたロマーリオだったが、続けて襲い掛かった足払いを避けることができず、軸足にもろに受ける。
バランスを崩し倒れるロマーリオとは逆に、スクアーロは地面を蹴って宙に飛び上がる。
「ぐっ……!」
「……」
無表情のスクアーロは、全体重をかけた踵落としを仕掛けたが、ロマーリオは直ぐに横に転がって避けた。
そしてロマーリオに向き直り、更に戦おうとしたスクアーロの背後から伸びた手が、彼女を地面に押し倒した。
「っし!捕まえた!」
「がっ……!」
手足を押さえ付けると、驚いたスクアーロは動くこともできず、ただ呆然と首を捻ってディーノを見上げた。
「な……ぁ……」
「ったく、何があったんだ?」
目を見開くスクアーロを、ため息をついて見下ろしたディーノは、拘束を緩めないまま、困ったように眉を下げて問い掛けた。
彼女の暴れようも驚いたが、一人でこんなところを彷徨いていた理由も気になる。
それに、山本がいないことも気になった。
ディーノは二人が一緒に行動しているものと考えていたようだが……。
「まずはちょっと落ち着いて……、なんでここにいるのか話してみろ、な?」
「ぅ、ぁ……ぅう……!」
「……スクアーロ?」
幼子に言い聞かせるようにゆっくりと言うディーノは、直ぐにその異変に気が付いた。
細い背中がカタカタと震えている。
スクアーロは低く唸り声を上げると、突然ディーノの手を振り払おうと暴れ始めた。
「うぅぅう!」
「ちょっ……あんま暴れたら……おい、スクアーロ!!」
「はぁっ……はな、せっ……っうぅ!」
「っぶね……!なんで、こんな……!うわ!」
身を捩って暴れるスクアーロを必死で押さえ、これ以上怪我をしないように声を掛けるが、ディーノの言葉は届かない。
怒っている、と言うより、……怯えている様子だった。
一体何があったのだ?
ディーノの眉間には、深いシワが刻まれる。
「スクアーロ!落ち着け!!そんなに恐がらなくても、誰もお前を傷付けたりは……!」
「っさい!うっ……離せ……ぇ!!」
「うっお……!?な、何がそんなに……怖いんだ?っと!大丈夫だから、な?落ち着いて話してみろ」
「いやだっ!やだぁ……!」
「スクアーロ……大丈夫、大丈夫だからな?落ち着いて……オレの事を見て、ゆっくり話してみろ……」
「やっ、ぁ……!はっ……はねう、ま……」
「うん、大丈夫だからな」
少しずつ、暴れる力が弱まり、大人しくなった彼女の腕と足を解放し、肩を支えて起き上がらせる。
触れた肩も、掴んだ手も、小刻みに震え続けていた。
「……何か、怖いことがあったのか?」
「っ……!」
「大丈夫だから、ゆっくり、ゆっくりと話してみろ」
落ち着かせようと頭を撫でて、胸の中に抱き締める。
背中を撫でてやると、暫くして腕の中から小さな声が聞こえてきた。
「っごめ……ふぇっ……くっ、……ごめ、んっ……でぃ、いの……!」
「うん、大丈夫だからな」
結局、彼女が何があったのかを話すことはなかったが、ディーノはそのまましばらくの間、腕の中で謝り続ける彼女の言葉を聞いていた。
後にそう語った通り、ディーノはスクアーロの拳が顔に届くよりも早く、その間に己の掌を割り込ませて、攻撃を受け止めていた。
「なっ……スクアーロ!お前、なんで!?」
「お前を倒せば、オレは強い、よな?だい、じょうぶ、……すぐに済ませる、から……な?」
「何言って、……うお!?」
鞭のように、しなやかで鋭い蹴りがディーノの脇腹を襲う。
ギリギリで防いだが、間髪いれずに繰り出された頭突きが顎を打つ。
「うぎっ……ぃって!!」
「ボス!あぶねぇ!!」
頭突きで怯んだディーノの鼻柱を折らんと、胸ぐらを掴んでいた手が離され、拳が飛んでくる。
ディーノの腕を掴んで強引に後ろに引き、ロマーリオは迫っていた拳を叩き落とした。
スクアーロは、標的をディーノからロマーリオに切り替えたのか、一度距離を取ると、低い姿勢で走り出した。
伸び上がるようにしてアッパーを繰り出す。
首を捻ってそれを避けたロマーリオだったが、続けて襲い掛かった足払いを避けることができず、軸足にもろに受ける。
バランスを崩し倒れるロマーリオとは逆に、スクアーロは地面を蹴って宙に飛び上がる。
「ぐっ……!」
「……」
無表情のスクアーロは、全体重をかけた踵落としを仕掛けたが、ロマーリオは直ぐに横に転がって避けた。
そしてロマーリオに向き直り、更に戦おうとしたスクアーロの背後から伸びた手が、彼女を地面に押し倒した。
「っし!捕まえた!」
「がっ……!」
手足を押さえ付けると、驚いたスクアーロは動くこともできず、ただ呆然と首を捻ってディーノを見上げた。
「な……ぁ……」
「ったく、何があったんだ?」
目を見開くスクアーロを、ため息をついて見下ろしたディーノは、拘束を緩めないまま、困ったように眉を下げて問い掛けた。
彼女の暴れようも驚いたが、一人でこんなところを彷徨いていた理由も気になる。
それに、山本がいないことも気になった。
ディーノは二人が一緒に行動しているものと考えていたようだが……。
「まずはちょっと落ち着いて……、なんでここにいるのか話してみろ、な?」
「ぅ、ぁ……ぅう……!」
「……スクアーロ?」
幼子に言い聞かせるようにゆっくりと言うディーノは、直ぐにその異変に気が付いた。
細い背中がカタカタと震えている。
スクアーロは低く唸り声を上げると、突然ディーノの手を振り払おうと暴れ始めた。
「うぅぅう!」
「ちょっ……あんま暴れたら……おい、スクアーロ!!」
「はぁっ……はな、せっ……っうぅ!」
「っぶね……!なんで、こんな……!うわ!」
身を捩って暴れるスクアーロを必死で押さえ、これ以上怪我をしないように声を掛けるが、ディーノの言葉は届かない。
怒っている、と言うより、……怯えている様子だった。
一体何があったのだ?
ディーノの眉間には、深いシワが刻まれる。
「スクアーロ!落ち着け!!そんなに恐がらなくても、誰もお前を傷付けたりは……!」
「っさい!うっ……離せ……ぇ!!」
「うっお……!?な、何がそんなに……怖いんだ?っと!大丈夫だから、な?落ち着いて話してみろ」
「いやだっ!やだぁ……!」
「スクアーロ……大丈夫、大丈夫だからな?落ち着いて……オレの事を見て、ゆっくり話してみろ……」
「やっ、ぁ……!はっ……はねう、ま……」
「うん、大丈夫だからな」
少しずつ、暴れる力が弱まり、大人しくなった彼女の腕と足を解放し、肩を支えて起き上がらせる。
触れた肩も、掴んだ手も、小刻みに震え続けていた。
「……何か、怖いことがあったのか?」
「っ……!」
「大丈夫だから、ゆっくり、ゆっくりと話してみろ」
落ち着かせようと頭を撫でて、胸の中に抱き締める。
背中を撫でてやると、暫くして腕の中から小さな声が聞こえてきた。
「っごめ……ふぇっ……くっ、……ごめ、んっ……でぃ、いの……!」
「うん、大丈夫だからな」
結局、彼女が何があったのかを話すことはなかったが、ディーノはそのまましばらくの間、腕の中で謝り続ける彼女の言葉を聞いていた。