if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

「お姉さん、本当にお姉さんだったんですねー」
「っ……!そ、そんなにっ、触らなくてもっ……!!」
「いやですねー、女の子同士遠慮はなしですよ?」
「は……ちょっ……やっ!」
「んんん~?ここですか?ここが良いんですかー?」
「……っ……!っっ!!」

舞織にマウントポジションを取られ、好き勝手に体を触られるスクアーロを、障子戸の隙間から見て、山本は思った。
このシーン、なんか前にもあったような気がするのな……。

「うふふ、妹同士が戯れているのを見ていると、心が癒されるね……」
「おい待て、あの姉ちゃんまで妹なのかよ?」
「スクアーロは嫌がると思うのなー。って言うか双識さん、具体的な話ってのは良いのな?」
「だって武くん、きみ、零崎の事結構しっかり知っていたし、スクアーロちゃんについての処遇もよく考えなければならなくなりそうだからね」
「ん?そうなのな?」
「おいおい武くん、ちゃんと聞いてたのか?あの姉ちゃんのバックに、匂宮出夢と請負人が付いてるんじゃあ、オレ達だって下手に手出しは出来ねぇからな」
「?そーなのな?」
「なあ兄貴、もう説明5回目だし諦めて良いよな?オレもう諦めても良いよな?」
「そうだねぇ、これ以上の説明は混乱を呼ぶだけだろうしね」

つまり、バカにこれ以上説明しても無駄という事である。
二人の零崎から、一賊の説明を受けた山本。
だが彼らに聞いた殆どの事は、事前にスクアーロから聞いていた通りの事で、彼らの話はあっという間に済んでしまった。
だが、双識が話そうとしていたのはそれだけではなく、スクアーロの裏世界についての知識である。
誰に聞いたのか、どこで知ったのか。
はたまた、誰かに話したのか。
裏世界と表世界との区分けはしっかりとしなければならない。
しかし少し聞いたところで、二人は早々に匙を投げた。
山本の話に出てきた、潤と呼ばれる赤い人、出夢という名の少女。
その二人がどう考えても人類最強と殺し屋匂宮の秘蔵っ子であったからだ。
どこで彼女が二人と知り合ったのか、それはわからなかったが、その二人と仲良さげであったというスクアーロに、下手に手を出すわけにはいかない。
結果、本人に詳しく話を聞くことになり、二人が帰ってくるのを待っているのである。
決して、決して覗きをしている訳ではない。

「もう良いだろぉがぁ!いい加減にしろぉ!」
「もー、仕方ないですねー」

例え零崎でもいい加減頭に来たのか、スクアーロが怒鳴ると、舞織は渋々と、だが意外なほどアッサリとその場を退き、障子戸の向こうにいる3人に声を掛けた。

「ちゃんと、スクアーロさん女の子でしたよーぅ。触り心地も抜群でした!」
「本当かい舞織ちゃん!?どれ、私も確かめさせてもらおうかな」
「くっ、来るな!!」

いい笑顔で近付いてくる双識を必死で拒否して、スクアーロは部屋の隅っこに逃げ込んだ。
チラリと視線を向け、山本に助けを求めるが、山本は手を振り返すだけで、スクアーロの視線の意図をまるで理解してくれない。
そんな二人を無視して、双識はポンっと手を叩いた。

「よし!じゃあとりあえず、スクアーロちゃんは僕たちに幾つかお話を聞かせてくれるかな?」
「あ……話?」
「まずはどうして零崎を知っていたのか。次に裏世界をどこまで知っているのか。そして人類最強と匂宮との関係。最後に私の妹になる気はないかということをね」
「最後のだけなら今すぐ答えてやる。断じてねぇ」
「そんなのってない!」
「つぅか山本……テメーまた、いらんことばかりペラペラと喋りやがったなぁ!?」
「ん?そうなのな?」

さて、さて、茶番はここまでである。
4人は向き合うと、スクアーロは大きなため息と共に、初めて出会った零崎についてを話し始めたのだった。
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