if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

スクアーロ達はその後、二人の乗ってきた車に乗って移動することになった。
車という狭い密室に、4人の零崎と自分一人。
スクアーロは心の中で呟いた。
そうか……、ここがオレの墓場か……。

「さて!私とスクアーロちゃん以外は運転が出来ないからね。もし私の手が塞がっている内に襲撃を受けたり、武くんが暴れたりしたら大変だ。悪いが、運転はスクアーロちゃんに任せても良いかな?」
「……」
「スクアーロちゃん?」
「……ああ」

気にしないであげてほしい。
スクアーロはただ、自分の敬愛するボスに、心の中でお別れを告げていただけなのだから。
零崎への恐怖ゆえ、スクアーロは何だか、一周回ってどうにでもなれとさえ思い始めていた。

「で……どこに行けば良いんだぁ?」
「うん?そうだね、私が隣で案内するから、その通りに進んでほしいな」
「……わかった」

スクアーロが車に乗り込むと、先程の強い殺気は感じなかったが、零崎達の独特の雰囲気を感じ、体の芯が冷えていくようだった。

「……」
「どうかしたかい?スクアーロちゃん」
「……オレ、帰ったら美味しい寿司食べるんだ……」
「カハハ、こんなところでフラグ立てんなよな姉ちゃん。そんな調子じゃ、アジトに着くより早くにくたばっちまうぜ?」

零崎人識の声に、スクアーロはふっと笑みを浮かべた。
まるで全てを諦めたかのような笑みである。
彼女は虚ろな声で言ったのだった。

「しごとしなくていいなら、もうそれでもいいかもな……」

出発した車は、意外と安全運転で目的地へと向かったのだった。


 * * *


「で、お姉さんはどういう方なんですか?」

ようやくたどり着いたアジト。
そこは純和風の日本家屋だった。
そこで、零崎舞織に訪ねられ、スクアーロは少し迷い、唇を噛んだ。
裏世界の人々が、自主的に裏社会に絡んでくることはないだろうけど、あまり簡単に彼らに話すのも……。
まあ、バレたら自分達がまずくなる情報や、隠しておきたいような事は話さなくても構わねぇよな。

「えーと……とりあえずオレはそこそこでかいマフィアの、暗殺部隊の幹部で……」
「そうそう、ボンゴレのヴァリアーってとこの凄い幹部なのな!!」
「山本ぉぉおお゙!!!」
「え?あれ?ダメだったのな?」

ダメに決まってる。
自分からどこどこのマフィアですなんて名乗って、もし組織まるごと潰されちゃったらどうするつもりなのか。
山本に噛みつくように怒鳴ったスクアーロは、怒髪天をつく勢いだ。

「……うん?ヴァリアーの、スクアーロ?」
「知ってるんですかぁ?」
「うふふ、まあね。数ある一般人の暗殺組織の中でも、突出して強いと言われている組織じゃなかったかな?私の記憶が正しければ、その幹部でスクアーロという名の人物は一人しかいない。……確か、男だと聞いていたんだけど?」
「っ……!」

スクアーロが固まる。
彼女が正直、一番恐れていたこと、それは自分の普段の姿がバレる事だった。
もちろん、組織ごと狙われて潰されないように、という意味もあって所属は隠していたのだが、一番の理由は間違いなくそれであった。

「え……この格好で、男?」
「そんなわけがないだろう人識、彼女は間違いなく女性だよ。この私にはわかるんだ!」
「まああんだけ脚撫で回してりゃな。……いや、ならなんだ?あんた男装女子とかそう言うことか?カハハ、こりゃ傑作だな」
「いやでも、ちゃんと確かめた方が良いんじゃないですかね?私ちょっと見てみますねっ」

舞織は不意にそう言って立ち上がると、スクアーロの腕をパッと掴んで、奥の部屋に連れ込む。
スクアーロは驚きと恐怖に固まって、されるがままになっていた。
そして残された山本に対して、零崎双識はにっこりと人好きのする笑みを向けた。

「さて、武くん。彼女がいなくなった所で具体的な話をしようか」
「……うす!お願いします!」

爽やかに返事を返し、山本は双識に笑顔で返したのだった。
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