if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯

初めてオレが殺意を持って刃を振るったのは、小学生の時だったと思う。
あの時オレは、親父の店の手伝いをしていて、洗い物の中にあった、包丁を持っていた。
長くて鋭い、ぎらって光る刺身包丁。
親父は魚を仕込むのに、オレに背を向けていて、オレは寝起きで機嫌が悪くて。
……落ち着かなくてソワソワしてた。
いや、正直に言うぜ。
昔っから、親父の背中を見る度に、オレはソワソワしちまって、落ち着かなくなる。
ただその日は、寝起きだったせいか、機嫌が悪かったせいか、なんつーんだろうな……、そう、自制がきかなかったんだ。
オレは気付いたら、親父の首……頸動脈に向けて正確に包丁を突き出していた。
その攻撃は、幸いなことに親父に防がれたんだけど、いや、きっとオレの攻撃を防いじまう親父だったからこそ、オレはあんなにも早くからこの厄介な衝動と戦わねばならなくなったんだろう。
その日からオレは、自分の中で燻る殺人衝動と戦い続けてきた。
もし殺しなんてしちゃったら、オレ捕まっちまうし、親父には迷惑かけるし、友達にはきっと嫌われちゃうだろうからな。
そんなのは嫌だったから、頑張って耐えた。
あ、でも別に辛くはなかったんだぜ?
親父が根気強く付き合ってくれたのもあるけど、なんかほら、自分との戦いってゲームとか漫画とかみたいで面白かったし、自分の中にルールを作って守るのが面白かったんだよな。
親父や自分ルールのお陰で、オレは中学生まで上手くフツーの学生として過ごせたわけだな!
ああ、その2つとは別に、野球の存在もオレの中では大きかったのな。
野球に一生懸命になれたから、殺人衝動から逃れることが出来たのかもしれない。
だからこそなんだろう。
中学一年生になってすぐの頃、オレはスランプになって、無茶な練習をしすぎて腕の骨を折っちまった。
あの時、もうダメだと思ったんだ。
オレに負けるって思った。
首から吊った腕の内側に、無意識に刃物を隠している自分に気付いたとき、ヤバいと思った。
このままだとオレは、自分の中の殺人衝動に負けて、きっと誰かを殺すだろう。
オレはこう見えて結構負けず嫌いだから、絶対負けたくないって思って、負けるくらいなら、死んで、勝ち逃げしてやろうって思ってたんだよな。
でもそれはダチに止められた。
ツナっていうすごい奴。
オレがうっかりツナの腕引っ張って屋上から一緒に落ちちゃったんだけど、その時には命懸けで助けてくれたんだ。
そんなツナにも、あとから仲良くなった獄寺にも、リボーンっていう小僧にも、ヒバリとか先輩とか、女の子達やチビ達や……親父やスクアーロっつー尊敬する師匠達にも嫌われたくなかったから、オレなりにかなり必死に頑張って耐えたんだぜ?
でも、でもさ、これは無理だよな。
目の前で、血を噴き出して倒れるマフィアの男、赤く染まる時雨金時、息が詰まるほどの濃い血の臭い。

「残念……、オレの負けなのなぁ」

オレは血の臭いに意識を犯されて、理性を失った。

「やっと、おっきく息が吸えるのな……」
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