if群青×黒子、違う世界の人たち
彼女と手合わせをするのは、ずいぶんと久々だった。
お互い、立場があったり、仕事内容が変わってきたりで、屋内にこもることも多くなっている。
どうにも体が鈍ったような気がしていたが、やはり気のせいではなかったようだ。
息を整えているスペルビの手を取って助け起こし、たぶん食堂に行こうとしているツナ達の後を追った。
「アザ出来ちゃったか?途中、ちょっと強くやり過ぎちゃったよな」
「ばぁか、オレだって筋肉ついてんだぁ。あれくらいで怪我なんかしねぇよ」
「んー?筋肉ー?全然ガリガリじゃん。ほら、二の腕掴めちまうぜ」
「やめろドカス」
彼女の肘の上辺りを掴めば、細すぎて親指と中指がくっつきそうだ。
べしっと叩かれて離すけれど、やっぱりこいつは痩せすぎだ。
ちゃんと飯食ってんのか?って聞けば、いつも『必要な分は食べてる』という答えが返ってくるだけだから、わざわざ聞く気にはなれない。
部屋の端のベンチから、上着を取って投げ渡される。
彼女は自分の分の上着も持って、うんと伸びをしていた。
最近は、堅気の高校生のトレーニングに付き合ってばかりだという話を聞いていた。
久々の全力の運動が心地よかったのか、その顔が満足げであることに、オレもまた満足して、頬が緩みそうになる。
「……なにニヤついてんだよ」
「え?いや、楽しかったなぁって」
別に、普段はあんまり見れない薄着姿に見惚れてた訳じゃない。
確かに、引き締まった白い腕や、細い腰は魅力的だけれども。
「飯の前にシャワーだなぁ」
「一緒に入るか?」
「入るわきゃねぇだろぉがぁ。とっとと汗流して、飯食って、寝る」
「そうだな、うん。オレもそうする」
服も着替えたい。
まずはそれぞれ、自分の部屋に戻ることにして、居住区画までの廊下を並んで歩いた。
既に、観戦していた奴らは見当たらず、ロマーリオ達も先に行ってしまったらしい。
「……その、」
「ん?」
何か言いたげな様子で、隣を歩く彼女が口を開く。
「良かった、よ。久々に会えて」
「……!オレも!元気そうだし、安心した。大変だったんだろ?少し休んだらさ、また話聞かせてくれ」
「……おー」
「んじゃ、後でな!」
ふっと彼女の頬が緩んだのを見て、会いたかったのが自分だけじゃないんだと、嬉しくなった。
照れてるのか、顔を逸らす彼女の唇を奪う。
「ん……っ!っ、てめぇ!」
「わはは、やり逃げ~」
ちょっとキスしただけで怒るスペルビから逃げて、部屋の中に入る。
ツナが気を使ってくれたのか、あいつが自主的にやったのか、部屋は隣同士になってた。
まあ、後であいつの部屋に押し掛けるつもりだけど、近いのは都合が良い。
さっとシャワーを浴びて、新しいシャツに袖を通す。
のんびり水を飲んでから、隣の部屋に向かった。
ノックをすれば、すぐに鍵が開く。
髪を乾かしていたのか、湿った髪を拭きながら、薄着で出迎えられた。
もっと警戒しろと言いたいが、こいつの性格上ここまで無防備にドアを開ける相手はオレぐらいだろうと、ちょっとした優越感に浸る。
「支度中?」
「さっき出たところなんだぁ。ちょっと待ってろ」
部屋に入れてもらって、ソファーに座って、ベッドの上の彼女をぼんやり眺めた。
風呂上がりなせいで、肌がほんのり赤くて、まだ水気のある髪が項に張り付く姿が色っぽくて、こそこそと近付いて軽く押し倒せば、簡単にころりと転がる。
不満そうに睨まれるが、これくらいならまだ怒られることはない。
「腹減ってんだろぉ?」
「先にスペルビの事、味見しちゃおっかな」
「後にしろ」
「味見だけ、な?」
「だから後に……むぐぅ」
文句を言うこの口は塞いでしまおう。
むぐむぐと何か言いたそうに動く唇を、ふにっと軽く噛んで引っ張る。
「んぅっ、飯は……」
「あと、ちょっと……」
ぺろっと唇を舐めた時だった。
ドアをノックする音がする。
ガヤガヤというざわめきは、あの高校生達の声だろうか?
「っ!おい馬鹿、離せ!」
「大丈夫大丈夫、入ってこないって」
「あれ、ドア開いてるっスよ!」
「だぁから鍵閉めろっていつも言ってんだろうがぁ、このドアホ!」
「どわっ!?」
「おわぁ!!ディーノさん!?」
どうやらうっかり鍵をかけ忘れてたらしい。
でも、掛かってなかったからって、勝手に入ってくるあいつらも悪いんじゃないか!?
オレだけ殴られるのは納得行かない!
「いでで……、ひでーなぁ」
「酷くねぇ。おら、飯食いに行くぞぉ」
「あ、そうっス!ご飯の準備できてるんで、呼びに来たんスよ!」
「ああ、そうか。助かるよ」
助け起こしてくれた彼女は、ぱっとオレの手を離して、呼びに来たという黄色頭をがしがしと撫でている。
あ、あいつオレの事を見てどや顔した!
つーかなんでこの短期間でそんなに懐かれてるんだよ……この人たらし!
さっさと隊服を着こんだスペルビににじり寄り、つんとその肩をつつく。
「ぁんだよ」
「随分なつかれてない?」
「あ"ー?……んん"、何でか知らねぇがなぁ。鍛えてやってるし、思うところがあるんじゃねぇの?」
「ふーん」
「なんだぁ、不満かよ」
「べっつに!ほら、飯飯!」
「う"お、押すなてめぇ!」
ぐいぐいと彼女の背中を押して、食堂に向かう。
別に不満はないのだ。
ちょっと情けないやきもちを妬いてるだけで。
まだ乾ききってない長髪を、持っていたゴムで適当に纏めてやり、食堂に行列を作って歩いていく。
「なんか、スクアーロさんが誰かに背中を押されてるのって珍しい?ですよね」
そう言ったのは、短い黒髪で眼鏡の男だ。
「まあ確かに、こいつ歩くの早いし、一人で先頭立ってスタスタ行っちゃうとこあるからな」
「そうしたいのは山々だがなぁ、オレが先に行ったら、お前は後ろで転けて迷子になんだろうがぁ。その方が面倒くせぇ」
「そんなことないって……うぉた!?」
スペルビの言葉を否定しようとした側から、靴紐を踏んで転けてちゃ世話ねぇな……。
目の前にあった背中は、器用に巻き込まれるのを避けていて、流石2年も付き合ってるだけある、と変なところで感心する。
「だから毎度言ってんだろうがぁ。靴紐は結べ。足元はしっかり見ろ」
「あー、面目ない」
助け起こしてもらいつつ、素早く靴紐を結ばれた。
む、これじゃあちょっと、マフィアのボスとして情けないのでは。
「ほら、肩にでも掴まっとけ」
「ええ、過保護っスよそれ?」
「転ばれたときに変に巻き込まれるより良いだろ」
「むぅ……」
何度か自分がすっ転んだときに彼女を巻き込んでいるので、残念ながらその言葉には何にも言い返せない。
大人しく肩に掴まり、食堂のドアをくぐった。
美味しそうな肉の匂いに、腹の虫がきゅるきゅると切なげに鳴く。
そういえば、もう2時近いってのに、飛行機で軽く朝飯を食ってから何も食べてない。
激しい運動もしたし、思い返してみれば、自分の腹はもう限界だ。
「美味そうだなぁ」
「そだな。大分遅くなっちまったし、さっさといただこうぜ」
「おう」
揃って隣同士に座る。
目の前は、既に食べ終わってお茶をしている女の子が二人。
茶髪のショートで快活そうな女の子と、桃色のロングヘアーの大人しそうな女の子だ。
茶髪の子が、じっとスペルビを見ている。
……うん?
これは懐かれてるというよりかは、何か怪しまれているような視線だ。
「……なんだぁ?」
彼女も流石に気が付いたらしい。
スプーンを咥えたまま首をかしげる。
はい、かわいい。
「え、いや、あの、いえ、ナンデモナイデス!」
早口で否定されたが、何でもない、という様子には見えない。
桃色の子も不思議そうにしているが、特別突っ込む気はないらしく、また一口紅茶を啜っていた。
「……お前、何かしたのか?」
「してねぇよ。……って、ディーノ。お前口汚しすぎだろぉ」
「へ?」
顔を見合せた途端、スペルビが怒ったように眉を上げる。
白い指がすっと伸ばされて、オレの頬から一つ二つとライスの粒を取っていく。
それをぱくりと口に放り込んで、近くにあった紙を適当に取ってくれた。
「食べ方直せ。そんで机の上も綺麗にしろ」
「あー、すまんすまん。つい気が緩んで」
ぱらぱらと米粒や野菜の欠片が転がったテーブルを、言われた通り綺麗にする。
「……二人って、どーいう関係なんですか?」
桃色の子が、どうにも興味津々といった様子で、好奇心を抑えきれずに訊ねてきた。
たぶんこいつのことだ。
恋人云々の話は微塵もしてないだろう。
「どーいう関係だと思う?」
「え?え……と、た、ただならぬ関係?」
その言葉にぷっと吹き出した。
隣もクツクツと笑いを堪えようと肩を震わせている。
「まあ、想像に任せよーかな」
「ええー!」
まあ、ただならぬ関係と言えばそうだろう。
浅からぬ関係だし、複雑な関係でもある。
「スクアーロさーん」
「教えねぇ」
「もう、意地悪ー!」
しばらくは教えないでおこうか。
こいつらの反応も面白そうだ。
二人でのらりくらりと質問をかわしながら、少し遅い昼食を楽しんだのだった。
お互い、立場があったり、仕事内容が変わってきたりで、屋内にこもることも多くなっている。
どうにも体が鈍ったような気がしていたが、やはり気のせいではなかったようだ。
息を整えているスペルビの手を取って助け起こし、たぶん食堂に行こうとしているツナ達の後を追った。
「アザ出来ちゃったか?途中、ちょっと強くやり過ぎちゃったよな」
「ばぁか、オレだって筋肉ついてんだぁ。あれくらいで怪我なんかしねぇよ」
「んー?筋肉ー?全然ガリガリじゃん。ほら、二の腕掴めちまうぜ」
「やめろドカス」
彼女の肘の上辺りを掴めば、細すぎて親指と中指がくっつきそうだ。
べしっと叩かれて離すけれど、やっぱりこいつは痩せすぎだ。
ちゃんと飯食ってんのか?って聞けば、いつも『必要な分は食べてる』という答えが返ってくるだけだから、わざわざ聞く気にはなれない。
部屋の端のベンチから、上着を取って投げ渡される。
彼女は自分の分の上着も持って、うんと伸びをしていた。
最近は、堅気の高校生のトレーニングに付き合ってばかりだという話を聞いていた。
久々の全力の運動が心地よかったのか、その顔が満足げであることに、オレもまた満足して、頬が緩みそうになる。
「……なにニヤついてんだよ」
「え?いや、楽しかったなぁって」
別に、普段はあんまり見れない薄着姿に見惚れてた訳じゃない。
確かに、引き締まった白い腕や、細い腰は魅力的だけれども。
「飯の前にシャワーだなぁ」
「一緒に入るか?」
「入るわきゃねぇだろぉがぁ。とっとと汗流して、飯食って、寝る」
「そうだな、うん。オレもそうする」
服も着替えたい。
まずはそれぞれ、自分の部屋に戻ることにして、居住区画までの廊下を並んで歩いた。
既に、観戦していた奴らは見当たらず、ロマーリオ達も先に行ってしまったらしい。
「……その、」
「ん?」
何か言いたげな様子で、隣を歩く彼女が口を開く。
「良かった、よ。久々に会えて」
「……!オレも!元気そうだし、安心した。大変だったんだろ?少し休んだらさ、また話聞かせてくれ」
「……おー」
「んじゃ、後でな!」
ふっと彼女の頬が緩んだのを見て、会いたかったのが自分だけじゃないんだと、嬉しくなった。
照れてるのか、顔を逸らす彼女の唇を奪う。
「ん……っ!っ、てめぇ!」
「わはは、やり逃げ~」
ちょっとキスしただけで怒るスペルビから逃げて、部屋の中に入る。
ツナが気を使ってくれたのか、あいつが自主的にやったのか、部屋は隣同士になってた。
まあ、後であいつの部屋に押し掛けるつもりだけど、近いのは都合が良い。
さっとシャワーを浴びて、新しいシャツに袖を通す。
のんびり水を飲んでから、隣の部屋に向かった。
ノックをすれば、すぐに鍵が開く。
髪を乾かしていたのか、湿った髪を拭きながら、薄着で出迎えられた。
もっと警戒しろと言いたいが、こいつの性格上ここまで無防備にドアを開ける相手はオレぐらいだろうと、ちょっとした優越感に浸る。
「支度中?」
「さっき出たところなんだぁ。ちょっと待ってろ」
部屋に入れてもらって、ソファーに座って、ベッドの上の彼女をぼんやり眺めた。
風呂上がりなせいで、肌がほんのり赤くて、まだ水気のある髪が項に張り付く姿が色っぽくて、こそこそと近付いて軽く押し倒せば、簡単にころりと転がる。
不満そうに睨まれるが、これくらいならまだ怒られることはない。
「腹減ってんだろぉ?」
「先にスペルビの事、味見しちゃおっかな」
「後にしろ」
「味見だけ、な?」
「だから後に……むぐぅ」
文句を言うこの口は塞いでしまおう。
むぐむぐと何か言いたそうに動く唇を、ふにっと軽く噛んで引っ張る。
「んぅっ、飯は……」
「あと、ちょっと……」
ぺろっと唇を舐めた時だった。
ドアをノックする音がする。
ガヤガヤというざわめきは、あの高校生達の声だろうか?
「っ!おい馬鹿、離せ!」
「大丈夫大丈夫、入ってこないって」
「あれ、ドア開いてるっスよ!」
「だぁから鍵閉めろっていつも言ってんだろうがぁ、このドアホ!」
「どわっ!?」
「おわぁ!!ディーノさん!?」
どうやらうっかり鍵をかけ忘れてたらしい。
でも、掛かってなかったからって、勝手に入ってくるあいつらも悪いんじゃないか!?
オレだけ殴られるのは納得行かない!
「いでで……、ひでーなぁ」
「酷くねぇ。おら、飯食いに行くぞぉ」
「あ、そうっス!ご飯の準備できてるんで、呼びに来たんスよ!」
「ああ、そうか。助かるよ」
助け起こしてくれた彼女は、ぱっとオレの手を離して、呼びに来たという黄色頭をがしがしと撫でている。
あ、あいつオレの事を見てどや顔した!
つーかなんでこの短期間でそんなに懐かれてるんだよ……この人たらし!
さっさと隊服を着こんだスペルビににじり寄り、つんとその肩をつつく。
「ぁんだよ」
「随分なつかれてない?」
「あ"ー?……んん"、何でか知らねぇがなぁ。鍛えてやってるし、思うところがあるんじゃねぇの?」
「ふーん」
「なんだぁ、不満かよ」
「べっつに!ほら、飯飯!」
「う"お、押すなてめぇ!」
ぐいぐいと彼女の背中を押して、食堂に向かう。
別に不満はないのだ。
ちょっと情けないやきもちを妬いてるだけで。
まだ乾ききってない長髪を、持っていたゴムで適当に纏めてやり、食堂に行列を作って歩いていく。
「なんか、スクアーロさんが誰かに背中を押されてるのって珍しい?ですよね」
そう言ったのは、短い黒髪で眼鏡の男だ。
「まあ確かに、こいつ歩くの早いし、一人で先頭立ってスタスタ行っちゃうとこあるからな」
「そうしたいのは山々だがなぁ、オレが先に行ったら、お前は後ろで転けて迷子になんだろうがぁ。その方が面倒くせぇ」
「そんなことないって……うぉた!?」
スペルビの言葉を否定しようとした側から、靴紐を踏んで転けてちゃ世話ねぇな……。
目の前にあった背中は、器用に巻き込まれるのを避けていて、流石2年も付き合ってるだけある、と変なところで感心する。
「だから毎度言ってんだろうがぁ。靴紐は結べ。足元はしっかり見ろ」
「あー、面目ない」
助け起こしてもらいつつ、素早く靴紐を結ばれた。
む、これじゃあちょっと、マフィアのボスとして情けないのでは。
「ほら、肩にでも掴まっとけ」
「ええ、過保護っスよそれ?」
「転ばれたときに変に巻き込まれるより良いだろ」
「むぅ……」
何度か自分がすっ転んだときに彼女を巻き込んでいるので、残念ながらその言葉には何にも言い返せない。
大人しく肩に掴まり、食堂のドアをくぐった。
美味しそうな肉の匂いに、腹の虫がきゅるきゅると切なげに鳴く。
そういえば、もう2時近いってのに、飛行機で軽く朝飯を食ってから何も食べてない。
激しい運動もしたし、思い返してみれば、自分の腹はもう限界だ。
「美味そうだなぁ」
「そだな。大分遅くなっちまったし、さっさといただこうぜ」
「おう」
揃って隣同士に座る。
目の前は、既に食べ終わってお茶をしている女の子が二人。
茶髪のショートで快活そうな女の子と、桃色のロングヘアーの大人しそうな女の子だ。
茶髪の子が、じっとスペルビを見ている。
……うん?
これは懐かれてるというよりかは、何か怪しまれているような視線だ。
「……なんだぁ?」
彼女も流石に気が付いたらしい。
スプーンを咥えたまま首をかしげる。
はい、かわいい。
「え、いや、あの、いえ、ナンデモナイデス!」
早口で否定されたが、何でもない、という様子には見えない。
桃色の子も不思議そうにしているが、特別突っ込む気はないらしく、また一口紅茶を啜っていた。
「……お前、何かしたのか?」
「してねぇよ。……って、ディーノ。お前口汚しすぎだろぉ」
「へ?」
顔を見合せた途端、スペルビが怒ったように眉を上げる。
白い指がすっと伸ばされて、オレの頬から一つ二つとライスの粒を取っていく。
それをぱくりと口に放り込んで、近くにあった紙を適当に取ってくれた。
「食べ方直せ。そんで机の上も綺麗にしろ」
「あー、すまんすまん。つい気が緩んで」
ぱらぱらと米粒や野菜の欠片が転がったテーブルを、言われた通り綺麗にする。
「……二人って、どーいう関係なんですか?」
桃色の子が、どうにも興味津々といった様子で、好奇心を抑えきれずに訊ねてきた。
たぶんこいつのことだ。
恋人云々の話は微塵もしてないだろう。
「どーいう関係だと思う?」
「え?え……と、た、ただならぬ関係?」
その言葉にぷっと吹き出した。
隣もクツクツと笑いを堪えようと肩を震わせている。
「まあ、想像に任せよーかな」
「ええー!」
まあ、ただならぬ関係と言えばそうだろう。
浅からぬ関係だし、複雑な関係でもある。
「スクアーロさーん」
「教えねぇ」
「もう、意地悪ー!」
しばらくは教えないでおこうか。
こいつらの反応も面白そうだ。
二人でのらりくらりと質問をかわしながら、少し遅い昼食を楽しんだのだった。