if群青×黒子、違う世界の人たち
「もう無理だ……もう動けねぇ……」
「か、身体中が痛ぇっス……」
「火神君……僕の遺灰はエアーズロックで撒いてくださ……ガクッ」
「く、黒子ー!」
「こいつ口で『ガクッ』って言ったぞぉ」
机に上半身を投げ出し、力なく会話を交わす少年達に、スクアーロは呆れたようにため息を吐いた。
「まずは体力作りからだな」
「いや、つーかオレ達これでも体力あるはずなんですけど……」
「ドカスがぁ、山本はちゃんとついてきてたぞぉ」
「基準がおかしいんスよ!」
「武君って何者なのよ……」
「全員おかしいのだよ……」
黄瀬や緑間の言う通り、彼らの常識は世間一般から大分ずれているのだが、スクアーロはその訴えに取り合うことはなく、手持ちのタブレットを操作している。
死屍累々という言葉が似合う少年達。
その横で、別行動をしていた者達が、心配そうに介抱をしていた。
「みんな本当に大丈夫……?」
「テツ君ー!死んじゃイヤー!」
「相当凄まじい特訓だったんだな」
「この程度で人は死なねぇ。ともかく、昼休憩挟んだら次は勉強だぁ。ちゃんと体休めとけよぉ」
冷たく言い放ち、スクアーロは部屋を出ていこうとする。
一瞬、何を言われたのかわからず、キョトンとしていた少年達だったが、脳みそがその言葉を理解した途端、大きなブーイングが巻き起こった。
「ええ!」
「まだ何かあるの!?」
「勉強ってなんだよ!オレはやらねぇぞ!」
「それフラグですよ青峰君」
「勉強をするのは構わない。だがこの状態じゃどう考えても無理だろう」
「胸張って言うことじゃないって黛さん」
「だがこれは……体を動かすのも、つら……」
「赤司ー!」
「……2時間後にもう一度ここに集合だぞ」
またため息を吐いて、スクアーロはタブレットを置く。
そのまま部屋を出ていったが、少しして部屋に戻ってきた時、彼の後ろには、数人のウェイターのような服装の男達が着いてきていた。
「お"ら、腹減ってんだろぉ。まずは食って、エネルギーを入れろ」
「飯!肉!」
「ぐ、今更ながら腹が……」
「お前らあの激しい運動の後に、よく食欲わくな……」
運動の後に食事、というのはまあ、体を鍛える上では欠かせない行程であるのだけれども。
一人離れたところで様子を見ながら、黒子はふっとスクアーロを見上げる。
ウェイター達と一緒になって食事を配る彼から、先程の鬼のようなオーラは感じられない。
手際よく食器を並べ、次から次へと平らげていく火神や根武谷におかわりの茶碗を渡しながら、他の者には飲み物を注いでいる。
随分と手慣れているな。
普段から似たようなことをしているのだろうか。
そんなことを考えていたら、スクアーロと視線がかち合った。
「……はっ、熱い視線だな」
「別にそんなんじゃないです」
「お前も食えよ。勉強中に寝たら次の日の特訓、ペナルティに走る量増やすからな」
「!?初耳なんですが……」
「今言ったからな」
「む」
空いた椅子に座ったスクアーロが、悪どい笑顔を浮かべている。
ペナルティを増やされるのはごめんだ。
疲れきったまま机に向かうより、少しでも回復させていった方が良い。
だが今何か腹に入れたら、それこそ全てをそのままリバースしてしまう自信があった。
「何か胃に優しいものはないでしょうか」
「あ"ー?……リゾットとか?」
「ありがとうございます」
取ってもらったリゾットを、少しずつ食べる。
食べ終わった後、少しでも仮眠が取れれば、2時間後の授業も何とかこなせるだろう。
「スクアーロさんは、ご飯を食べないんですか?」
「さっきサンドウィッチ食べた」
「……それだけ?」
「今日はそんなに動いてねぇからなぁ」
「……そうですか」
「なんだその目は」
化け物だな、と思った。
あれで動いてないと言い切るのか。
感心を通り越して呆れてくる。
まさか青峰を越える体力馬鹿がいたとは。
もそもそとリゾットを口に運びながら、そう思っていると、不意にスクアーロが立ち上がった。
「どこか行かれるんですか?」
「部下の報告を聞きに行く。しばらく自分は現場に出られねぇからなぁ」
「え……でもそうしたら、スクアーロさんの休む時間が」
「この程度で休むほど、甘い鍛え方はしてねぇ」
「そ、そうですか……」
鉄人だ……。
呆然と見送る黒子の周りで、他の者達はそれぞれに飯を食ったり、口にスプーンを突っ込んだままこくこくと船を漕いでいたり、さっさと食事を終えてソファーで横になっている者がいたりと、様々である。
だが、特殊な視界の持ち主である伊月、高尾、赤司はスクアーロが出ていったことに気が付いたようで、黒子の周りに集まる。
「凄いなあの人。まだ働くのか……」
「先輩」
「もう人間じゃないんじゃねぇ?」
「重いです高尾君」
「あそこまで強くなるために、一体どれ程の鍛練を重ねてきたんだろうな……」
「……そうですね。僕達も、この程度でへばっていられません」
赤司と二人、頷き合う。
頭に乗せられた高尾の腕を下ろして、少し離れたところにあった唐揚げを口に入れた。
直後、黒子の胃がキャパオーバーを起こした訳であるが、そんな些細な事件とは関係なく時間は過ぎ、遂に青峰恐怖の勉強会が始まったのであった。
「か、身体中が痛ぇっス……」
「火神君……僕の遺灰はエアーズロックで撒いてくださ……ガクッ」
「く、黒子ー!」
「こいつ口で『ガクッ』って言ったぞぉ」
机に上半身を投げ出し、力なく会話を交わす少年達に、スクアーロは呆れたようにため息を吐いた。
「まずは体力作りからだな」
「いや、つーかオレ達これでも体力あるはずなんですけど……」
「ドカスがぁ、山本はちゃんとついてきてたぞぉ」
「基準がおかしいんスよ!」
「武君って何者なのよ……」
「全員おかしいのだよ……」
黄瀬や緑間の言う通り、彼らの常識は世間一般から大分ずれているのだが、スクアーロはその訴えに取り合うことはなく、手持ちのタブレットを操作している。
死屍累々という言葉が似合う少年達。
その横で、別行動をしていた者達が、心配そうに介抱をしていた。
「みんな本当に大丈夫……?」
「テツ君ー!死んじゃイヤー!」
「相当凄まじい特訓だったんだな」
「この程度で人は死なねぇ。ともかく、昼休憩挟んだら次は勉強だぁ。ちゃんと体休めとけよぉ」
冷たく言い放ち、スクアーロは部屋を出ていこうとする。
一瞬、何を言われたのかわからず、キョトンとしていた少年達だったが、脳みそがその言葉を理解した途端、大きなブーイングが巻き起こった。
「ええ!」
「まだ何かあるの!?」
「勉強ってなんだよ!オレはやらねぇぞ!」
「それフラグですよ青峰君」
「勉強をするのは構わない。だがこの状態じゃどう考えても無理だろう」
「胸張って言うことじゃないって黛さん」
「だがこれは……体を動かすのも、つら……」
「赤司ー!」
「……2時間後にもう一度ここに集合だぞ」
またため息を吐いて、スクアーロはタブレットを置く。
そのまま部屋を出ていったが、少しして部屋に戻ってきた時、彼の後ろには、数人のウェイターのような服装の男達が着いてきていた。
「お"ら、腹減ってんだろぉ。まずは食って、エネルギーを入れろ」
「飯!肉!」
「ぐ、今更ながら腹が……」
「お前らあの激しい運動の後に、よく食欲わくな……」
運動の後に食事、というのはまあ、体を鍛える上では欠かせない行程であるのだけれども。
一人離れたところで様子を見ながら、黒子はふっとスクアーロを見上げる。
ウェイター達と一緒になって食事を配る彼から、先程の鬼のようなオーラは感じられない。
手際よく食器を並べ、次から次へと平らげていく火神や根武谷におかわりの茶碗を渡しながら、他の者には飲み物を注いでいる。
随分と手慣れているな。
普段から似たようなことをしているのだろうか。
そんなことを考えていたら、スクアーロと視線がかち合った。
「……はっ、熱い視線だな」
「別にそんなんじゃないです」
「お前も食えよ。勉強中に寝たら次の日の特訓、ペナルティに走る量増やすからな」
「!?初耳なんですが……」
「今言ったからな」
「む」
空いた椅子に座ったスクアーロが、悪どい笑顔を浮かべている。
ペナルティを増やされるのはごめんだ。
疲れきったまま机に向かうより、少しでも回復させていった方が良い。
だが今何か腹に入れたら、それこそ全てをそのままリバースしてしまう自信があった。
「何か胃に優しいものはないでしょうか」
「あ"ー?……リゾットとか?」
「ありがとうございます」
取ってもらったリゾットを、少しずつ食べる。
食べ終わった後、少しでも仮眠が取れれば、2時間後の授業も何とかこなせるだろう。
「スクアーロさんは、ご飯を食べないんですか?」
「さっきサンドウィッチ食べた」
「……それだけ?」
「今日はそんなに動いてねぇからなぁ」
「……そうですか」
「なんだその目は」
化け物だな、と思った。
あれで動いてないと言い切るのか。
感心を通り越して呆れてくる。
まさか青峰を越える体力馬鹿がいたとは。
もそもそとリゾットを口に運びながら、そう思っていると、不意にスクアーロが立ち上がった。
「どこか行かれるんですか?」
「部下の報告を聞きに行く。しばらく自分は現場に出られねぇからなぁ」
「え……でもそうしたら、スクアーロさんの休む時間が」
「この程度で休むほど、甘い鍛え方はしてねぇ」
「そ、そうですか……」
鉄人だ……。
呆然と見送る黒子の周りで、他の者達はそれぞれに飯を食ったり、口にスプーンを突っ込んだままこくこくと船を漕いでいたり、さっさと食事を終えてソファーで横になっている者がいたりと、様々である。
だが、特殊な視界の持ち主である伊月、高尾、赤司はスクアーロが出ていったことに気が付いたようで、黒子の周りに集まる。
「凄いなあの人。まだ働くのか……」
「先輩」
「もう人間じゃないんじゃねぇ?」
「重いです高尾君」
「あそこまで強くなるために、一体どれ程の鍛練を重ねてきたんだろうな……」
「……そうですね。僕達も、この程度でへばっていられません」
赤司と二人、頷き合う。
頭に乗せられた高尾の腕を下ろして、少し離れたところにあった唐揚げを口に入れた。
直後、黒子の胃がキャパオーバーを起こした訳であるが、そんな些細な事件とは関係なく時間は過ぎ、遂に青峰恐怖の勉強会が始まったのであった。