if群青×黒子、違う世界の人たち
「いつかは炎を灯すだろうと考えていた、が、早すぎるな……。う"ぉい、大丈夫かぁ黒子ぉ」
「は……はい……」
スクアーロに問われて、黒子は僅かに震える声で答えた。
藍色の炎が灯ってすぐに、小さなそれは横から伸びてきた手に掴まれて消された。
その瞬間、黒子の体にはどっと疲労感がなだれ込んでくる。
死ぬ気の炎の説明をするとき、スクアーロは「生命エネルギー」とも言っていた。
なるほど確かに、全身の生気を吸い込まれたような気分だった。
「あ、ありがとうございます、スクアーロさん……」
「礼は良い。体調はどうだぁ?」
「大丈夫、です」
「その真っ青な顔で言われても、信じられねぇな。部屋に戻って少し休んで……」
「「ハッピーニューイヤーァア!!!」」
「だぁあ!うるせぇんだよ静かに叫べドカスどもがぁ!」
「そんな無茶な!」
「そう堅いことを言わないでもっと楽しもうよスクアーロさん」
「何自然に馴染んでやがる氷室ぉ!」
「久々に羽目を外せたんだ。少し多目に見てくれ、スクアーロさん」
「う"お"い!てめぇもか赤司!」
気付くと、仲間達は自警団の男達と一緒に盛り上がっていた。
まったく呑気なものだ。
でもきっと、あの場所にこそ、自分が守りたい日常がある。
彼らこそが、自分の覚悟なのだろう。
「僕は、無力です」
「あ"あ?」
「それでも、守りたいものがある。失いたくない場所がある」
「……守られるだけじゃあ不満だとでも?」
「はい」
「……」
スクアーロはあからさまに不快な感情を顔に出していた。
それはそうだろう。
これから言うことに予想がついているのなら、良い感情を抱くはずはない。
「無理を承知でお願いします。僕に、炎の扱い方を教えてください」
「……嫌だ」
「僕を貴方の弟子にしてください」
「絶対に嫌だ」
「……僕の師になってください」
「言い方変えても駄目なもんは駄目だぁ」
「……」
やはりというか、なんというか。
黒子の申し出は、にべもなく断られてしまった。
「なら僕にも考えがあります」
「あ"あ?」
「今から僕は、貴方にいじめられた、と言います」
「……は?」
「僕に酷いことするんでしょ、エロ同人みたいに、エロ同人みたいに(棒読み」
「はあ!?」
スクアーロのぽかんとした顔は、なかなかに気持ちの良いものだ。
その表情が消えないうちに、言葉を続けた。
「貴方の仲間は信じないかもしれません。しかし、僕の仲間は信じます」
「そんなこと……」
「少なくとも火神君と青峰君、それから桃井さんに黄瀬君は信じます。僕の言葉なら、ね」
「……ぐ」
馬鹿正直で素直な彼らなら、きっと黒子の言うことを疑わない。
スクアーロも容易に想像がついたのか、言葉を詰まらせた。
「貴方のプライドがかかっているわけですが……それでも僕の修行を見てくださる気にはならないですか?」
「な、らない……」
「む……」
「オレが下手にお前らを鍛えたら、お前らはいざってときに必ず無茶しようとすんだろうがぁ。言っとくけどなぁ、オレぁ別に意地悪とかで言ってんじゃあ……」
「そんなことは、わかってます」
「あ"あ?」
スクアーロが強硬に反対することは、初めからわかっていた。
それでも頼んだのは、黒子にもそれだけの覚悟があったからで、そう簡単に引き下がることは出来なかった。
「僕は自分の分は弁えているつもりです。貴方達とともに戦いたい、なんて言うつもりはありません。ただ、いざというときに仲間を庇い、逃げるための手段がほしい。……生きるために、僕を鍛えてほしいんです」
「一朝一夕では、奴らに対抗できねぇぞ」
「少しでも、生きる確率をあげたいんです。お願いします、僕に、僕達に、力をください!」
「……」
スクアーロは少しの間、言葉を失っていた。
じっと黒子のことを見て、何かを躊躇うように唇を噛んでいる。
きっとその脳内では、様々な考えが嵐のように渦巻いているのだろう。
無理を言っている自覚はあった。
それでも、どうしてもやりたい。
強い意思の宿った瞳を白に近い銀色に向けて、黒子はだめ押しの一言を放った。
「それとも今すぐにセクハラ隊長の称号を貼られたいのですか?」
「んなっ!お前オレがいつそんなこと……!!」
「みなさーん、ちょっと聞いてくださ……もががっ」
「わかっ、わかったからお前黙れ!」
黒子が声を張り上げて言いかけたのを途中で遮り、その口を手で塞ぐ。
幸いなのは黒子の影の薄さと場の騒がしさゆえに、彼が声を上げたことに気付かれなかったということか。
少し悲しい気もするが。
とにもかくにも、言質はとれた。
ふっと笑った黒子に、スクアーロは眉間にシワを寄せて額を手で押さえた。
「むぐ、それでは交渉成立ということになりますね」
「ちっ……たく、オレの指導は厳しいからなぁ。覚悟しておけぇ」
「そーそー、リボーン程じゃないけど、スクアーロも結構厳しいからね。無理はしちゃダメだよ、黒子君」
「はいっ……て、沢田君!?」
「う"お!」
黒子の隣から聞こえてきた声。
自然と入ってきたのは、寝ているかと思っていた沢田綱吉で、真剣に話し合っていた二人は体を仰け反らせて驚く。
まだ酔いが残っているようで、頬を赤くさせたまま、綱吉はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、明日からみんなの修行はよろしくね、スクアーロ」
「お前話聞いてたのかよ……って、みんな……?」
「そ、みんな。だって、黒子君だけ敵から逃げられるようになっても意味ないでしょ?みんなで修行した方が、楽しそうだしね」
「お、おいちょっと待て……」
「ついでに勉強の方も見てもらえると助かるなぁ……。なんかリボーンがやらかしそうだし、その前にスクアーロがみんなのカテキョーになってくれればきっとアイツも諦めるだろうからさぁ」
「ふざけんじゃねぇ!なんでオレが……」
「あ、別に一人でとは言わないからさ。ヴァリアーの人達と協力して、ね?」
「ね?じゃねぇ!オレが全員を見てやる義理は……」
「それは良いですね。是非ともよろしくお願い致します」
「だっ……!」
「じゃあ決まりだね!よろしく、スクアーロ」
「だから!オレの意思を無視して決めるんじゃねぇ!」
スクアーロの雄叫びが響いた。
こうして、本人達の預かり知らぬところで、彼らとスクアーロの特訓が、強制的に決定されたのであった。
「は……はい……」
スクアーロに問われて、黒子は僅かに震える声で答えた。
藍色の炎が灯ってすぐに、小さなそれは横から伸びてきた手に掴まれて消された。
その瞬間、黒子の体にはどっと疲労感がなだれ込んでくる。
死ぬ気の炎の説明をするとき、スクアーロは「生命エネルギー」とも言っていた。
なるほど確かに、全身の生気を吸い込まれたような気分だった。
「あ、ありがとうございます、スクアーロさん……」
「礼は良い。体調はどうだぁ?」
「大丈夫、です」
「その真っ青な顔で言われても、信じられねぇな。部屋に戻って少し休んで……」
「「ハッピーニューイヤーァア!!!」」
「だぁあ!うるせぇんだよ静かに叫べドカスどもがぁ!」
「そんな無茶な!」
「そう堅いことを言わないでもっと楽しもうよスクアーロさん」
「何自然に馴染んでやがる氷室ぉ!」
「久々に羽目を外せたんだ。少し多目に見てくれ、スクアーロさん」
「う"お"い!てめぇもか赤司!」
気付くと、仲間達は自警団の男達と一緒に盛り上がっていた。
まったく呑気なものだ。
でもきっと、あの場所にこそ、自分が守りたい日常がある。
彼らこそが、自分の覚悟なのだろう。
「僕は、無力です」
「あ"あ?」
「それでも、守りたいものがある。失いたくない場所がある」
「……守られるだけじゃあ不満だとでも?」
「はい」
「……」
スクアーロはあからさまに不快な感情を顔に出していた。
それはそうだろう。
これから言うことに予想がついているのなら、良い感情を抱くはずはない。
「無理を承知でお願いします。僕に、炎の扱い方を教えてください」
「……嫌だ」
「僕を貴方の弟子にしてください」
「絶対に嫌だ」
「……僕の師になってください」
「言い方変えても駄目なもんは駄目だぁ」
「……」
やはりというか、なんというか。
黒子の申し出は、にべもなく断られてしまった。
「なら僕にも考えがあります」
「あ"あ?」
「今から僕は、貴方にいじめられた、と言います」
「……は?」
「僕に酷いことするんでしょ、エロ同人みたいに、エロ同人みたいに(棒読み」
「はあ!?」
スクアーロのぽかんとした顔は、なかなかに気持ちの良いものだ。
その表情が消えないうちに、言葉を続けた。
「貴方の仲間は信じないかもしれません。しかし、僕の仲間は信じます」
「そんなこと……」
「少なくとも火神君と青峰君、それから桃井さんに黄瀬君は信じます。僕の言葉なら、ね」
「……ぐ」
馬鹿正直で素直な彼らなら、きっと黒子の言うことを疑わない。
スクアーロも容易に想像がついたのか、言葉を詰まらせた。
「貴方のプライドがかかっているわけですが……それでも僕の修行を見てくださる気にはならないですか?」
「な、らない……」
「む……」
「オレが下手にお前らを鍛えたら、お前らはいざってときに必ず無茶しようとすんだろうがぁ。言っとくけどなぁ、オレぁ別に意地悪とかで言ってんじゃあ……」
「そんなことは、わかってます」
「あ"あ?」
スクアーロが強硬に反対することは、初めからわかっていた。
それでも頼んだのは、黒子にもそれだけの覚悟があったからで、そう簡単に引き下がることは出来なかった。
「僕は自分の分は弁えているつもりです。貴方達とともに戦いたい、なんて言うつもりはありません。ただ、いざというときに仲間を庇い、逃げるための手段がほしい。……生きるために、僕を鍛えてほしいんです」
「一朝一夕では、奴らに対抗できねぇぞ」
「少しでも、生きる確率をあげたいんです。お願いします、僕に、僕達に、力をください!」
「……」
スクアーロは少しの間、言葉を失っていた。
じっと黒子のことを見て、何かを躊躇うように唇を噛んでいる。
きっとその脳内では、様々な考えが嵐のように渦巻いているのだろう。
無理を言っている自覚はあった。
それでも、どうしてもやりたい。
強い意思の宿った瞳を白に近い銀色に向けて、黒子はだめ押しの一言を放った。
「それとも今すぐにセクハラ隊長の称号を貼られたいのですか?」
「んなっ!お前オレがいつそんなこと……!!」
「みなさーん、ちょっと聞いてくださ……もががっ」
「わかっ、わかったからお前黙れ!」
黒子が声を張り上げて言いかけたのを途中で遮り、その口を手で塞ぐ。
幸いなのは黒子の影の薄さと場の騒がしさゆえに、彼が声を上げたことに気付かれなかったということか。
少し悲しい気もするが。
とにもかくにも、言質はとれた。
ふっと笑った黒子に、スクアーロは眉間にシワを寄せて額を手で押さえた。
「むぐ、それでは交渉成立ということになりますね」
「ちっ……たく、オレの指導は厳しいからなぁ。覚悟しておけぇ」
「そーそー、リボーン程じゃないけど、スクアーロも結構厳しいからね。無理はしちゃダメだよ、黒子君」
「はいっ……て、沢田君!?」
「う"お!」
黒子の隣から聞こえてきた声。
自然と入ってきたのは、寝ているかと思っていた沢田綱吉で、真剣に話し合っていた二人は体を仰け反らせて驚く。
まだ酔いが残っているようで、頬を赤くさせたまま、綱吉はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、明日からみんなの修行はよろしくね、スクアーロ」
「お前話聞いてたのかよ……って、みんな……?」
「そ、みんな。だって、黒子君だけ敵から逃げられるようになっても意味ないでしょ?みんなで修行した方が、楽しそうだしね」
「お、おいちょっと待て……」
「ついでに勉強の方も見てもらえると助かるなぁ……。なんかリボーンがやらかしそうだし、その前にスクアーロがみんなのカテキョーになってくれればきっとアイツも諦めるだろうからさぁ」
「ふざけんじゃねぇ!なんでオレが……」
「あ、別に一人でとは言わないからさ。ヴァリアーの人達と協力して、ね?」
「ね?じゃねぇ!オレが全員を見てやる義理は……」
「それは良いですね。是非ともよろしくお願い致します」
「だっ……!」
「じゃあ決まりだね!よろしく、スクアーロ」
「だから!オレの意思を無視して決めるんじゃねぇ!」
スクアーロの雄叫びが響いた。
こうして、本人達の預かり知らぬところで、彼らとスクアーロの特訓が、強制的に決定されたのであった。