if群青×黒子、違う世界の人たち

目が覚めた時、スクアーロは自室にいた。
見慣れてしまった天井を暫く眺めてから、自分の横を見る。
ソファーの上に化け物……もとい、疲れ果てて眠るルッスーリアや、晴部隊の隊員達が倒れている。
「た、隊長!おい!隊長の目が覚めたぞ!医者を呼んでこい!」
大声が聞こえ、反対側へ視線を移すと、仲間が走り回っているのが見える。
そこまでを視界に入れてから、スクアーロはようやく、自分が何故倒れていたのかを思い出した。
「か……ァ……」
「まだ喋らないでください!晴の炎でかなり回復させましたが……、その分体力を大幅に消耗しているハズです」
「う゛……ぐ……」
喉が張り付いて、満足に声を出すことも出来ない。
医者と入れ替わりに出ていく隊員達を目で追う。
スクアーロが倒れている間、部下達はいつも以上に働き、寝る間も惜しんで見舞いに来ていたようだ。
彼らの目の下には濃い隈が出来ている。
「さ、これを飲んでください」
白湯を差し出されて、為されるがままに飲み込む。
喉が潤う。
ようやく、掠れた声で言葉を紡ぐことが出来た。
「あの後、カミラ、は……?」
「……彼女の遺体は、我々できちんと荼毘に付しました」
「そ、か……」
薄着をしているため、いつもよりもずっと細く見える背中を丸めて、スクアーロは顔を伏せたのだった。


 * * *


「皆さん昨日はよく眠れましたか?」
小学校の教師のような綱吉の物言いに、返ってきたのはバスケ少年達の苛立たしげな視線だった。
「あんなことがあって、ぐっすり眠れるわけないでしょ?」
「そ、そうですよね……。いやまあでもその……」
「なんだよ、ハッキリ言え!」
「ご、ごめんなさい!」
「テメーら沢田さんになんつー口の聞き方してんだコラ!!」
ドスの効いた獄寺の怒鳴り声に、少年達は渋々といったように黙り込んだ。
やりきったような満足そうな顔で腕を組んだ獄寺に、綱吉は困ったような笑顔で礼を言う。
「えー、とね……昨日みんなに、手伝ってほしいって言ったと思うんだけど……」
「確かに、そんなことを言っていたな。オレ達は何をすれば良いのかな」
「……スクアーロのことを、見張っててほしいんだ」
「は……はあ?」
綱吉の言葉に、獄寺を除く全員が、目を見開いて驚愕した。


 * * *


軽く扉を叩く音が聞こえる。
「失礼しまーす」
弾むような声が届き、スクアーロが顔を上げると同時に、部屋の扉が開かれた。
ゆっくりと目の前のテーブルに書類を置いて、右手を支えに立ち上がった。
「スクっち、ここっスか……って!何やってんスか!」
「あ"あ?仕事に決まってんだろうが……な!?」
仕事と言うワードが出てきた瞬間、スクアーロはあっという間に手足を拘束されて、ベッドの上に転がされていた。
その枕元に腰かけて、白蘭がにこにこと爽やかに笑う。
「おっかしいなぁ、仕事は全部、ヴァリアーの人達が取り上げたはずなんだけど♪」
「てめっ……何しやがる白ら……っう……!!」
「ほらぁ、無理すると傷口開いちゃうよ?」
「うっせぇぞ……クソっ……」
唖然とする少年達を余所に、白蘭と同時に入ってきたミルフィオーレの者達が机の上の書類を取り上げて出ていく。
それを見て、大きなため息を吐いたスクアーロが、観念したように頷いた。
「……わかったよ。大人しく休んでる……」
「ふふ♪それが賢明だね。……そして、わかったよね皆。ツナクンがスクアーロを見張ってほしいって言った意味が」
コツっとスクアーロの額を小突いた白蘭がにやにやと笑う。
不満そうにそれを見上げたスクアーロは、眉間にシワを寄せて言う。
「オレはただ、すべきことをしていただけだ」
「バカだねぇスクちゃん、人には出来ることと出来ないことがあるの、キミにもわかるでしょ?」
「……知らん」
「バカだねぇ♪」
クスクスという笑い声を受けて、スクアーロが気まずそうにそっぽを向く。
その様子を見て、少年達はようやく納得をしたのだった。
飾り気のない寒々しい部屋に広がった少年達が、声を揃えて言ったのだった。
「今日はここから……」
「絶対に出しません!」
「大人しく体を休めてください」
「無理は毒にしかならないものね!」
逃げ道はないらしい。
彼らの言葉に、スクアーロは驚いたように瞠目し、そして重たい頭を枕に沈めて、大きく息を吐き出しながら目を閉じたのだった。
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