if群青×黒子、違う世界の人たち
「うがー!つっかれた!」
ある日、談話室に飛び込んでくるなり綱吉が叫んだ。
体を投げ出すようにソファーに沈んで、だらんと力を抜く。
談話室には、静かに本を読むために黒子や黛が、そんな黒子に付き合って火神が、将棋をするために緑間と赤司が、緑間に付き合って高尾がいたが、綱吉に反応したのは黒子だけだった。
……ちなみに火神は早々に飽きて寝ている。
「何かあったんですか?」
黒子が尋ねる。
思わずそう聞かずにはいられないほどに、綱吉は普段とは違う様子だったのだ。
いつもは大人しそうで、穏やかな雰囲気を纏っている綱吉だが、今は全身からピリピリとした気を放っていて、言葉の通り本当に疲れているようだったのだ。
「んー……特に何かがあった訳じゃないんだけど……」
「はあ」
「敵の攻撃が、今までと全く変わらないのが怖いって言うか、疲れるって言うか……」
「大変なんですね」
「まあ、オレはまだましな方なんだろうけどね……」
黒子に答えながら、綱吉は持っていた書類をバサバサと捲って、ため息を吐きながらそれに目を通し始めた。
チラリと覗き込んだ黒子は、思わずはっと息を飲んだ。
中身は全てイタリア語であった。
「読めるんですか?」
「読めなきゃ仕事できないからね……」
そう言った綱吉の顔が死んでいる。
イタリア語を読めるようになるまで、一体どれ程の苦労があったのだろうか。
気になった黒子は、素直に綱吉に尋ねてみる。
「どうやって覚えたんですか?」
「そりゃあもう必死に……。ある日突然、手ぶらでイタリアに放り出されたから……」
「それは……よく無事に帰ってこられましたね……」
「本当にね……。まあ、色んな人に助けてもらえたから、何とかなったんだけどね」
「そうなんですか……。……ちなみに、それの中身はどんなことが書いてあるんですか?」
黒子のもう一つの問いに、綱吉は一瞬顔をしかめる。
「黒子くんが知る必要はないよ」
「僕達にも、知る権利はあると思います」
「……聞いたら胸糞の悪くなるようなことばっかりだよ」
「……それは、」
「人がたくさん、傷付く話」
まあ、予想をしていなかった内容ではない。
それでも、彼の言葉に、表情に、酷い重みを感じて、黒子は口を閉ざした。
そんなものばかり見ていたら、そりゃあ疲れるはずだ。
綱吉は浮かない顔色をしながらページをめくり、時折ペンで何かを書き込んでいく。
忙しそうな様子に、黒子はそれ以上話し掛けることを諦めた。
何か目新しい情報でも聞けないかと、思っていたのに。
静かな談話室に、紙をめくる音と将棋を指す音だけが聞こえる。
しばらくして、全員が沈黙を保っていた空間を一人の男が壊した。
「なあ、ぶっちゃけさ、オレ達、いつまでここに閉じ込められてなくちゃならねーわけ?」
高尾が、静かに綱吉の前に立つと、低い声でそう尋ねた。
静かで、張り詰めていた空気が、ぎしりと軋んだように、黒子には思えた。
ある日、談話室に飛び込んでくるなり綱吉が叫んだ。
体を投げ出すようにソファーに沈んで、だらんと力を抜く。
談話室には、静かに本を読むために黒子や黛が、そんな黒子に付き合って火神が、将棋をするために緑間と赤司が、緑間に付き合って高尾がいたが、綱吉に反応したのは黒子だけだった。
……ちなみに火神は早々に飽きて寝ている。
「何かあったんですか?」
黒子が尋ねる。
思わずそう聞かずにはいられないほどに、綱吉は普段とは違う様子だったのだ。
いつもは大人しそうで、穏やかな雰囲気を纏っている綱吉だが、今は全身からピリピリとした気を放っていて、言葉の通り本当に疲れているようだったのだ。
「んー……特に何かがあった訳じゃないんだけど……」
「はあ」
「敵の攻撃が、今までと全く変わらないのが怖いって言うか、疲れるって言うか……」
「大変なんですね」
「まあ、オレはまだましな方なんだろうけどね……」
黒子に答えながら、綱吉は持っていた書類をバサバサと捲って、ため息を吐きながらそれに目を通し始めた。
チラリと覗き込んだ黒子は、思わずはっと息を飲んだ。
中身は全てイタリア語であった。
「読めるんですか?」
「読めなきゃ仕事できないからね……」
そう言った綱吉の顔が死んでいる。
イタリア語を読めるようになるまで、一体どれ程の苦労があったのだろうか。
気になった黒子は、素直に綱吉に尋ねてみる。
「どうやって覚えたんですか?」
「そりゃあもう必死に……。ある日突然、手ぶらでイタリアに放り出されたから……」
「それは……よく無事に帰ってこられましたね……」
「本当にね……。まあ、色んな人に助けてもらえたから、何とかなったんだけどね」
「そうなんですか……。……ちなみに、それの中身はどんなことが書いてあるんですか?」
黒子のもう一つの問いに、綱吉は一瞬顔をしかめる。
「黒子くんが知る必要はないよ」
「僕達にも、知る権利はあると思います」
「……聞いたら胸糞の悪くなるようなことばっかりだよ」
「……それは、」
「人がたくさん、傷付く話」
まあ、予想をしていなかった内容ではない。
それでも、彼の言葉に、表情に、酷い重みを感じて、黒子は口を閉ざした。
そんなものばかり見ていたら、そりゃあ疲れるはずだ。
綱吉は浮かない顔色をしながらページをめくり、時折ペンで何かを書き込んでいく。
忙しそうな様子に、黒子はそれ以上話し掛けることを諦めた。
何か目新しい情報でも聞けないかと、思っていたのに。
静かな談話室に、紙をめくる音と将棋を指す音だけが聞こえる。
しばらくして、全員が沈黙を保っていた空間を一人の男が壊した。
「なあ、ぶっちゃけさ、オレ達、いつまでここに閉じ込められてなくちゃならねーわけ?」
高尾が、静かに綱吉の前に立つと、低い声でそう尋ねた。
静かで、張り詰めていた空気が、ぎしりと軋んだように、黒子には思えた。