if群青×黒子、違う世界の人たち

「一気に紹介しても、混乱するだけだろぉ。まずは、何人かに分けて、少しずつ慣らしていった方が良いんじゃねぇのかぁ」

呆然としている少年達をチラリと見て、スクアーロは綱吉にそう提案した。
それに対して、憮然とした顔でリボーンが反論する。

「それじゃあ面白くねーだろ」
「リボーンがこういって聞かなくて……」

ゲッソリした様子の綱吉に、スクアーロも色々と察したらしい。
眉間に皺を寄せて、ボルサリーノの奥の黒い瞳を睨んだ。

「……リボーン、てめぇ、遊び感覚で仕事してんじゃねぇぞぉ」
「オレの勝手だぞ」
「勝手がしたいんならイタリアに帰ってやれぇ」

先程よりもさらに大きくため息を吐いたスクアーロは、立ち上がって綱吉に指示を出す。

「沢田ぁ、テメーは洛山の人間と黄瀬を連れて上の階から回っていけぇ」
「え?」
「基地の案内するんだろぉ」
「あ、うん!」

慌てて頷いた綱吉が、指示されたメンバーを呼び寄せる。
呼ばれた一人である黄瀬は、不満げに唇を尖らせていた。

「オレ、スクっちと一緒が良いっス!」
「ああ?ならテメーはこっちで大人しくしていろぉ」
「はいっス!!」
「白蘭、テメーらは秀徳、陽泉、桐皇の奴らを連れて、居住スペースから案内していけぇ」
「おっけー♪」
「誠凛と黄瀬、お前らはオレ達と一緒に下の階から回るぞぉ」

テキパキと全員を纏めて、的確に指示を出したスクアーロは、最後にこう言ったのだった。

「じゃあ、全員しっかりやれよぉ」
「つまんねーな。折角だから3チームに分かれてサバイバルゲー……」
「やらせないからね!?」
「チッ!」

そうして、次こそは彼らの心を解すために、地下アジト探索が始まったのであった。

 * * *


さて、綱吉達は上層階の倉庫スペースを、赤司達洛山メンバーと共に見て回っていた。

「まさか綱吉がここのボスだったとはなー。オレ、あの銀髪の人か厳つい人がそうなのかと思ってたよ!」

葉山が笑いながらそう言って、綱吉の頭をバフバフと叩いているのを、獄寺は額に青筋を浮かべて睨んでいる。
当の綱吉は、気にした様子もなく笑いながら、困ったように眉を下げた。

「オレもまだあんまり実感ないんですけど、みんながオレをボスにすれば良いって言ってて……。ちょっと頼りないですよね……」
「僕は、納得したけれどね」
「オレもかな。綱吉ならなんか良いかもなーって!」
「ええっ!?」
「私もね。なんか見てて安心するところあるもの」
「お、お前らわかってんじゃねーか……!」

不安げに言った綱吉だったが、思いの外、周りの者達が肯定的な返事をしていて、驚いた顔をする。
獄寺は楽しそうだ。
ボスが認められたのだから、当たり前だろうけれども。

「黛先輩と根武谷先輩はどうっすか?」

ニコニコと笑う山本に話し掛けられて、黛は少し不機嫌そうなオーラを漂わせる。
話し掛けられたくなかったのだろう。
先程から特に、影を薄くして引っ込んでいたから。
綱吉はそう考えて、恐々と黛の顔色を窺う。
根武谷は、そんな二人には気付かずに、白けた表情で口を開いた。

「オレは誰がボスとか部下とか、そう言うのはどうでも良い。だから良いも悪いも思わねーよ」
「あんたらしいっちゃ、らしいわね」

呆れたような実渕の声だったが、根武谷のその意見に、意外にも黛が賛同した。

「オレも興味はないな。それよりも気になるのは、いつになったらオレ達が元の生活に戻れるかって事だな」
「あ、それは確かに、気になるなー」

そう、黛の言う通り、彼らが最も気になっているのは、とどのつまり『そこ』であった。
綱吉は、その問いを聞いてハッと顔を引き締める。
ボスの顔へと変わった綱吉の背後には、いつの間にか、獄寺が控えていた。

「……今のところ、ハッキリと答えることは出来ません。でも、必ず全てを終わらせて、皆さんを元の居場所へとお返しします」
「相手の居場所も、だいぶ絞り込めてきているからな」
「きっと、そう遠くない内に、終わらせられると思いますよ!」

力強く言った彼らに、黛は少し考えてもう1つ質問する。

「……それまでの勉強はどうするんだ?」
「あ、それはですね、うちの団員で頭の良い人達が、協力して教えてくれる事になってます!」
「頭の良い人達……?」
「えーと、リボーンはそもそもオレの家庭教師だし、ヴァリアーは全員頭良いし……」
「チェデフも優秀だし、白蘭と入江も、ああ見えて頭良いっすからね」
「そう言う獄寺も頭良いのな。あとは……、アーデルハイトとか、桔梗さんとかかな?」

ぽんぽん、と出てくる名前に、洛山メンバーは何人かの顔を思い浮かべる。

「他にも何か、不安なこととかあったらどんどん言ってくださいね!」

綱吉の言葉に、赤司、葉山、実渕はしっかりと頷き、根武谷はどうでも良さげに、黛はおずおずと頷いたのだった。
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