if群青×黒子、違う世界の人たち
綱吉達による報告会のあった日、スクアーロは深夜になってようやく、地下基地へと帰ってきた。
自分達の居場所を探り続けているであろう敵達を翻弄するために、色んな場所を走り回っていたのだ。
どうやら敵に場所が勘付かれた、ということは無さそうだが、場所が割れるまでは時間の問題かもしれない。
仲間達に敵の捜索をするよう指示を出して、スクアーロは自分の部屋へと向かった。
もうクタクタだ、シャワーでも浴びて少し休むか、などと考えながら歩く道中、昼間よりも暗めの灯りが点る廊下を、1つの影が動いた。
「……?」
こんな時間に、いったい誰が?
背が高くガッシリとしたシルエットから、恐らく男だろうと推測し、充分に警戒しながら、その影に声をかける。
「ゔぉい、こんなところで何をして……」
「うわぁ!?」
「……るんだぁ?黄瀬涼太ぁ」
コソコソと廊下を歩いていたのは、スクアーロ達がこの基地へと連れてきて保護している高校生達の一人、黄瀬涼太だった。
飛び上がって後退り、スクアーロから距離を取った黄瀬は、怯えるような眼をして睨みつける。
彼がしていたことについて、スクアーロは何となく予測がついて、眉間にシワを寄せる。
「出口でも探してたのかぁ?」
「そ、そんなわけないじゃないっスか!」
「なら、何をしていたぁ?」
「それは……!ト、トイレ探してただけっス!」
「トイレはテメーら一人ひとりの部屋にあるだろぉがぁ」
「あっ!……ぅ……」
酷い言い訳に、呆れを通り越して笑えてくる。
くっと喉を鳴らして笑ったスクアーロは、黄瀬の肩に手を掛ける。
「ひっ……!」
「男が何ビクビクしてやがる。今すぐに、寒くない格好に着替えて、自分の部屋で待ってろぉ」
「は……?」
「走っていってこい」
「は、はいっス!!」
バシィと背中を叩かれて、黄瀬は慌てて走り出す。
終始自分へと怯えた視線を向けていた少年の背を見送り、スクアーロもまた着替えるために自室へと向かった。
その途中、通信機を取り出して、コントロールルームへと連絡を取る。
「オレだ……お゙う、ただいま。少し、頼みたいことがあるんだがぁ……」
機械の向こうで、驚いた声を出す人物と話しながら、あっという間に準備を整え、スクアーロは黄瀬を迎えに、彼の部屋を訪れたのだった。
* * *
「あ、スクアーロさん、……と黄瀬君、だよね」
地下基地の入り組んだ道を歩かされ、黄瀬が連れていかれたのは、大小様々な車両が並ぶ、大きな倉庫のような場所だった。
「あ、あんたは……」
「僕は入江正一、まあここのメカニックみたいなものかな。よろしく、黄瀬君」
「あ、よろしく……?」
「わりぃな、こんな時間に手間とらせて」
「いえ!本当なら僕達が気を利かせるべきところだったのに……。むしろ僕らが謝るべきなんです。申し訳ありません」
「いや、お前らは良くやってんだろぉ」
キリリと表情を引き締めている入江は、黄瀬と握手を交わすと、スクアーロに申し訳なさそうに眉を下げて謝った。
そのまま二人が会話を交わす様子を、少し離れて立って眺めながら、一人で悶々と考え込む。
一体自分は、これから何をされるのだろうか。
逃げ出そうとしていたわけではない。
ただ、自分一人の力ではどうにもならないという現実から目を背けたくて、とにかく動いていたくて、それが結果、出口探しにつながったのだ。
出口さえ知っておけば、もし何かあった時にもすぐに出ていける。
まあ、実際には、黄瀬が思うほど地下基地の警備は甘いものではない。
「……黄瀬ぇ、ぼうっと突っ立ってねぇで、さっさと行くぞぉ」
「うぇ!?はいっス!!……どこにっスか?」
「上だぁ」
「え、うえ……って、上?」
上、の、階ということだろうか。
スクアーロの後を追って走り、小さな個室に入った黄瀬は、そこでようやく、入江の姿が見えないことに気が付いた。
「あれ、あの……入江って人は……?」
「入江はさっき出て行っただろぉ。おら、これ持ってろぉ」
「は……わっ!ととっ……」
スクアーロが投げ渡したのは、フルフェイスの厳ついヘルメットだ。
首を傾げる黄瀬を横目に、空いた左手で前髪をかき上げたスクアーロは、近くにあった機械に顔を寄せる。
網膜認証のロックを解き、いくつかボタンを押すスクアーロは、いつからか、自分をじっと見つめていた黄瀬をチラリと見る。
「どれだけ見たって、お前にゃ解除できねぇぞ」
「そ!べっ……オレはそんなこと考えてないっス!!」
「ならいいがなぁ?」
スクアーロは黄瀬から目をそらすと、目の前にある扉に手を触れた。
微かな駆動音が聞こえて、驚くほど静かに扉は開く。
扉の向こうの景色を見て、黄瀬が大きく息を飲む。
「え……ここは、外……!?」
広がるのは、少し寂れた田舎の道、というようなよくある景色。
黄瀬は気付かなかったようだが、二人がいた部屋はエレベーターだった。
振動が限りなく小さいエレベーターだったことと、すべての意識をスクアーロ向けていたために、気付けなかったのだろう。
「さっさとヘルメットをかぶれぇ」
「は……でも、これっ!」
「早くしろぉ」
「……はい」
威圧感たっぷりに言ったスクアーロに気圧されて、渋々とヘルメットをかぶる。
スクアーロもヘルメットをかぶると、隣に置いてある大型のバイクに跨った。
「乗れ」
「……どこ、行くんスか……」
「良いから乗れ」
「っ!ああ、もう!乗れば良いんだろ乗れば!!」
半ば自棄になって、そう叫びながらスクアーロの後ろに乗った黄瀬。
彼が自分の腰に手を回したのを確認したスクアーロは、しっかり掴まってろよ、とだけ言うと、静かにバイクを発車させる。
胸いっぱいの不安と疑心を抱く黄瀬を乗せて、バイクは真夜中の道路を走って行ったのであった。
自分達の居場所を探り続けているであろう敵達を翻弄するために、色んな場所を走り回っていたのだ。
どうやら敵に場所が勘付かれた、ということは無さそうだが、場所が割れるまでは時間の問題かもしれない。
仲間達に敵の捜索をするよう指示を出して、スクアーロは自分の部屋へと向かった。
もうクタクタだ、シャワーでも浴びて少し休むか、などと考えながら歩く道中、昼間よりも暗めの灯りが点る廊下を、1つの影が動いた。
「……?」
こんな時間に、いったい誰が?
背が高くガッシリとしたシルエットから、恐らく男だろうと推測し、充分に警戒しながら、その影に声をかける。
「ゔぉい、こんなところで何をして……」
「うわぁ!?」
「……るんだぁ?黄瀬涼太ぁ」
コソコソと廊下を歩いていたのは、スクアーロ達がこの基地へと連れてきて保護している高校生達の一人、黄瀬涼太だった。
飛び上がって後退り、スクアーロから距離を取った黄瀬は、怯えるような眼をして睨みつける。
彼がしていたことについて、スクアーロは何となく予測がついて、眉間にシワを寄せる。
「出口でも探してたのかぁ?」
「そ、そんなわけないじゃないっスか!」
「なら、何をしていたぁ?」
「それは……!ト、トイレ探してただけっス!」
「トイレはテメーら一人ひとりの部屋にあるだろぉがぁ」
「あっ!……ぅ……」
酷い言い訳に、呆れを通り越して笑えてくる。
くっと喉を鳴らして笑ったスクアーロは、黄瀬の肩に手を掛ける。
「ひっ……!」
「男が何ビクビクしてやがる。今すぐに、寒くない格好に着替えて、自分の部屋で待ってろぉ」
「は……?」
「走っていってこい」
「は、はいっス!!」
バシィと背中を叩かれて、黄瀬は慌てて走り出す。
終始自分へと怯えた視線を向けていた少年の背を見送り、スクアーロもまた着替えるために自室へと向かった。
その途中、通信機を取り出して、コントロールルームへと連絡を取る。
「オレだ……お゙う、ただいま。少し、頼みたいことがあるんだがぁ……」
機械の向こうで、驚いた声を出す人物と話しながら、あっという間に準備を整え、スクアーロは黄瀬を迎えに、彼の部屋を訪れたのだった。
* * *
「あ、スクアーロさん、……と黄瀬君、だよね」
地下基地の入り組んだ道を歩かされ、黄瀬が連れていかれたのは、大小様々な車両が並ぶ、大きな倉庫のような場所だった。
「あ、あんたは……」
「僕は入江正一、まあここのメカニックみたいなものかな。よろしく、黄瀬君」
「あ、よろしく……?」
「わりぃな、こんな時間に手間とらせて」
「いえ!本当なら僕達が気を利かせるべきところだったのに……。むしろ僕らが謝るべきなんです。申し訳ありません」
「いや、お前らは良くやってんだろぉ」
キリリと表情を引き締めている入江は、黄瀬と握手を交わすと、スクアーロに申し訳なさそうに眉を下げて謝った。
そのまま二人が会話を交わす様子を、少し離れて立って眺めながら、一人で悶々と考え込む。
一体自分は、これから何をされるのだろうか。
逃げ出そうとしていたわけではない。
ただ、自分一人の力ではどうにもならないという現実から目を背けたくて、とにかく動いていたくて、それが結果、出口探しにつながったのだ。
出口さえ知っておけば、もし何かあった時にもすぐに出ていける。
まあ、実際には、黄瀬が思うほど地下基地の警備は甘いものではない。
「……黄瀬ぇ、ぼうっと突っ立ってねぇで、さっさと行くぞぉ」
「うぇ!?はいっス!!……どこにっスか?」
「上だぁ」
「え、うえ……って、上?」
上、の、階ということだろうか。
スクアーロの後を追って走り、小さな個室に入った黄瀬は、そこでようやく、入江の姿が見えないことに気が付いた。
「あれ、あの……入江って人は……?」
「入江はさっき出て行っただろぉ。おら、これ持ってろぉ」
「は……わっ!ととっ……」
スクアーロが投げ渡したのは、フルフェイスの厳ついヘルメットだ。
首を傾げる黄瀬を横目に、空いた左手で前髪をかき上げたスクアーロは、近くにあった機械に顔を寄せる。
網膜認証のロックを解き、いくつかボタンを押すスクアーロは、いつからか、自分をじっと見つめていた黄瀬をチラリと見る。
「どれだけ見たって、お前にゃ解除できねぇぞ」
「そ!べっ……オレはそんなこと考えてないっス!!」
「ならいいがなぁ?」
スクアーロは黄瀬から目をそらすと、目の前にある扉に手を触れた。
微かな駆動音が聞こえて、驚くほど静かに扉は開く。
扉の向こうの景色を見て、黄瀬が大きく息を飲む。
「え……ここは、外……!?」
広がるのは、少し寂れた田舎の道、というようなよくある景色。
黄瀬は気付かなかったようだが、二人がいた部屋はエレベーターだった。
振動が限りなく小さいエレベーターだったことと、すべての意識をスクアーロ向けていたために、気付けなかったのだろう。
「さっさとヘルメットをかぶれぇ」
「は……でも、これっ!」
「早くしろぉ」
「……はい」
威圧感たっぷりに言ったスクアーロに気圧されて、渋々とヘルメットをかぶる。
スクアーロもヘルメットをかぶると、隣に置いてある大型のバイクに跨った。
「乗れ」
「……どこ、行くんスか……」
「良いから乗れ」
「っ!ああ、もう!乗れば良いんだろ乗れば!!」
半ば自棄になって、そう叫びながらスクアーロの後ろに乗った黄瀬。
彼が自分の腰に手を回したのを確認したスクアーロは、しっかり掴まってろよ、とだけ言うと、静かにバイクを発車させる。
胸いっぱいの不安と疑心を抱く黄瀬を乗せて、バイクは真夜中の道路を走って行ったのであった。