if群青×黒子、違う世界の人たち

「それじゃあ行くよブルーベルっ♪」
「にゅにゅ!おっけー白蘭!」
「白蘭と!」
「ブルーベルの!」
『1分で分かるボンゴレのあれこれー!』

たんっ!と軽い音を響かせて、二人は台の上にスケッチブックを置く。
可愛らしいイラストが書いてあるそれは、桔梗の作であるのだが、見ている彼らがそれを知ることは、恐らくないだろう。

「まずボンゴレって名前の組織は今、綺麗に真っ二つに分かれちゃってるんだよね♪」
「こっちはボンゴレ自警団って組織なの!で、もう一個がボンゴレファミリーって巨大マフィアなの!!」
「今キミ達を狙って攻撃してきているのはマフィアの方!アイツらがキミ達を狙う理由だけど、まあ簡単に言えば、キミ達の人並み外れた能力を抗争に使おうと狙ってる訳なんだよね!」
「アンタ達をスカウトするついでに、自警団も潰しちゃえって思ってんのよアイツら!ひっどいよねー白蘭!?」
「だよねー♪」
「いやいやいや唐突に何なんだよお前ら!?」
「キミ達が混乱してるみたいだったからね♪手っ取り早く説明しただけだよ。高尾クン、緑間クン、青峰クン、桃井ちゃん、そして洛山のみんな、理解して貰えたかな?」

説明していたスケッチブックを、パタンと閉じて、白蘭はきゅうっと目を細めて笑顔を作る。
見渡したバスの車内には、9人の人間が酷く警戒した面持ちで白蘭を睨んでいた。
そんな彼らの前後には、守るように数人の人間が立っている。
白蘭やブルーベルを始めとした真6弔花の面々、そしてγ達ジッリョネロの戦闘員達、骸とクロームの幻術コンビ。
さらに、彼らは気付いてなかったが、バスの屋根の上では犬と千種が周囲を監視するように立っていた。
今のところ、目に見える場所に敵はいない。

「突然そんなこと言われても……」
「つーかジケーダン?だか何だか知らねーけどよ、なんでそんな奴らがオレらの学校に転校してきてんだよ?」
「なんか聞いてた感じ、キセキのいる学校と誠凛の全部に、誰かしらが入り込んでたんだろ……?」
「オレ達は、いつから狙われてたんだ?」
「んー、聞きたいことはたくさんあるんだろうけど、今はちょっと話してる時間ないかもしれないな♪ね?骸クン」
「……ええ、どうやら追い付いて来たようです」
「追い付いて……って、まさかさっきの化け物達がか!?」
「いくらなんでも、車に追い付けるハズがないのだよ……!」
「にゅ!それが追い付いちゃうのよね!」

意味のわからない説明。
訳のわからない者達。
混乱のままに、彼らは窓から外を見下ろす。
そこにはまだ何もいない。
ハッとしたように、後ろを見た青峰が、白蘭に向かって叫んだ。

「後ろから追い掛けてくるってことは、テツ達の乗ったバスが襲われてるかもしれねぇってことじゃねぇか!!」
「うん、まさに今、戦闘中みたいだよ♪」
「そ、そんな……!テツ君達は!?無事なの!?」
「もちろん♪」

僕達が、あんな理性のない獣どもに、負けるわけないでしょ?
白蘭の言葉に、彼から漏れ出す殺気に、青峰達は硬直した。
本当に、彼らに着いてきても大丈夫だったのか?
かつて世界を征服しようとした大悪党に対する感想としては、大正解のモノだろう。


 * * *


「――そういうわけで、今あなた達は悪い奴らに狙われているんです!信じられないかもしれないけど……どうか今は、オレ達を信じて着いてきてください!」

白蘭とブルーベルがしたような説明をし終え、綱吉は一度、深く頭を下げて言った。
前を行くバスでの反応とは異なり、綱吉の真摯な態度のお陰か、はたまた元から事情を知っていた日向がいるお陰か、彼らの反応は幾分か落ち着いたモノであった。

「よく分かんないけど、オレらが狙われてんのを、アンタらが助けてくれるんでしょー?」
「そういう事です!」
「でもさー、里ちんとか、後に残った奴らは大丈夫なわけ?あの化け物、強いんでしょ?」
「うーん……負けることはないと思うけど、向こうは数が多いからね……」

綱吉は一旦言葉を切ると、頭上に向かって声を張り上げた。

「獄寺君!山本!様子はどう!?」
「え?上……?」
「ツナ!獄寺が遠くに何匹か見えたって!」
「ちょっ!?どこから顔出してるのよ!!」

ガタガタとバスの屋根が揺れたあと、開いていた窓から、山本の逆さの顔が現れる。
驚く彼らとは逆に、緊張した顔の綱吉は、周りの人々に指示を出す。

「山本は引き続き警戒してて!幻術には十分気を付けてね」
「了解!」
「フランとジュリーさんは、幻術で偽のバスを走らせてください!」
「うぇーめんどくさー」
「りょーぉかい!」
「バジル君は上に、お兄さんと紅葉さんは後ろ窓の警戒をお願いします!」
「了解です沢田殿!!」
「極限了解だ沢田!」
「結局わかったぞ沢田!」
「……皆さん、今から止めきれなかった分の敵が来ます。近くの物にしっかり捕まっててください!!」

綱吉の言葉の直後、バスの側面を猛烈な風が襲う。
ぐらりと傾ぐバスの中に、悲鳴が響いた。
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