if群青×黒子、違う世界の人たち

『今日が準決勝……明日は遂に決勝です。みんな、十分気を付けて任務に当たってください』
『それから、先日襲来したキメラ擬きの報告です。体の一部に、失敗作のキメラの体を、移植しているらしいことが判明しました。普通の人間と変わらない知能と、人間離れした身体能力を持ち合わせています。十分注意してください』
『彼らを自警団アジトに収容する為の方法は今、正一とウチがまとめてる。今日の試合が終わる頃には纏め終わってるから、後で確認してくれ』
『じゃあ、今日もよろしくお願いします!』

綱吉の声を最後に通信が切れる。
キメラに、キメラ擬き。
奴らは当初の予想よりも、かなり多く産み出され、そして予想外の連携を見せて、攻め込んできている。
更に自由奔放すぎる保護対象達の動きに、流石の自警団幹部勢も疲れが隠しきれない様子だった。
特に消耗しているのは、外側からサポートに当たっている者達。
敵との戦闘も、もう数えるのも億劫になるほどの回数に上っていた。
無線の言葉を聞いたスクアーロも、疲れたようにため息を吐きながら、部下の配置を調整する。
やはり一番キツいのは桐皇高校の二人を護衛しているチームか。
1回戦敗退で、狙われる回数が最も多かったと言うこともあるが、何より青峰の行動が彼らの消耗を倍増させていた。
朝から晩までバスケ漬け。
恐らく試合で誠凛に負けたからだろう、大会を見に行くときや、他の誰かが傍にいるとき以外は、フラフラと出掛けては、公園などでボールをついている。
彼が家や大会の会場にいる内はまだ守りやすいのだが、一人っきりでフラフラと出歩かれては堪ったものじゃない。
助っ人に向かったフランにも珍しく、スクアーロさんはミーの事嫌いなんですかー?と聞かれたほどには、桐皇の護衛チームは疲れきっていた。

「……と言うわけだぁ。マーモン、風、出てもらえるかぁ?」
「もちろん、構いませんよ」
「良いけど、高くつくよ」
「……分割で良いか?」
「仕方無いね」

と、まあそんな会話を交わして、二人を桐皇護衛チームの助っ人に送り出したのが早朝。
そして試合に向かう彼らに、ベルフェゴールを張り付かせ、スクアーロは街中を歩く火神と黒子の跡をつけていた。

「チ、カスがぁ。こんなときに何バッシュ壊してんだよ」

思わず口を突いて出る文句に、答えてくれる人はいない。
近くに何人かの仲間はいるが、スクアーロは一人で、彼らの数メートル後を歩いていた。
チームならチームらしく纏まって行動しろ、という思いはスクアーロの視点からは非常に納得できる文句だが、護衛されていることも知らない彼らからすれば、理不尽すぎる文句だろう。
報告によれば、誠凛の敵チームである洛山も、赤司と黛以外は皆、好き勝手に行動しているらしい。
綱吉、山本、獄寺も、少し疲れ気味に彼らの奔放すぎる行動を嘆いていた。

「ありゃあ……洛山の葉山かぁ?」

途中、火神と黒子の二人がすれ違った男を見て、辺りを見回す。
3人がいた店の入り口辺りで、獄寺の特徴的な銀髪を見付け、スクアーロはすれ違い様、労うようにその肩を叩いた。

「おつかれさん」
「あんたもな」

短く言葉を交わして、再びお互いの保護対象を追う。
暫くすると、二人は公園に向かって移動し始める。
電話で『桃井』という言葉を発していたところを見るに、青峰のバッシュを借りようとしているらしい。
確かサイズが一緒だった。
スクアーロは面倒くさそうに舌打ちをすると、彼らから見られないように姿を隠してじっくりと観察する。
時折刺すような殺気を感じるが……、恐らくは骸の仕業だろう。
攻撃に出てこないのは、まず間違いなくそうする気力も沸かないくらいには、疲れきっているからだろう。

「……バカがぁ。殺気飛ばしてる暇あるならしっかりと対象を見ていろぉ」
「……チッ!」

舌打ちだけが聞こえて、殺気は消える。
お互い疲れきっているらしい。
大して絡むこともなく、彼らが別れたのを見て、二人もそれぞれの後を着いていく。
そしてようやく火神黒子コンビが会場につき、チームと合流する。
洛山チームも合流したと連絡を受け、スクアーロは一先ず安堵する。
まだ準決勝の試合も始まってないと言うのに、何故こんなに疲れているのだろうか。
スクアーロの吐いた大きなため息が、熱気を孕んだ会場に落ちた。
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