if群青×黒子、違う世界の人たち
「あの!その……それって……」
「……鮫、だな」
「鮫、っすよね……」
スクアーロの周りを青い炎を纏いながら浮いている動物……間違いなくそれは鮫だった。
スクアーロの使っているメイン匣、暴雨鮫(スクアーロ・グランデ・ピオッジャ)。
今、彼の背には二人の人間の死体……もとい、気絶した体が乗っている。
「基本的に突然襲ってきたりはしねぇよ。お゙ら、さっさと出るぞ」
「あ……はい」
「あまり長く居ても良いことはねぇからな。それから、出たら……少し付き合ってもらうぞぉ」
「あっ……は、い……」
日向は少し落ち込んだみたいだったが、それでも来てもらわない訳にはいかない。
慰めているつもりなのか、乱暴に背中を叩くと、スクアーロは彼らを連れて体育館を出ていった。
* * *
「……と、言うわけで、バレた」
『バレた。じゃないでしょ!何やってんのー!?』
「仕方ねぇだろぉ、まさかこいつが襲われるなんて、誰も思ってなかったんだから」
『それは確かに予想外だったけど……、でもどうするの!?日向さんを今そこに匿うのはあまりに不自然……って言うかすっごく怪しまれそうだし……』
「このまま黙っててもらうしかねぇだろぉ。然もなけりゃ、記憶消すとか」
「い゙っ!?」
『物騒ー!!そんな事出来るわけないでしょ!?』
「そういう選択肢もあるって話だぁ」
誠凛高校、そこから程近くに建てられた仮設アジトに日向は連れ込まれ、そしてスクアーロが何やら物騒な相談をしているのを聞いていた。
キメラの男と、素性の知れない謎の大男は、このアジトに着いた途端にどこかに連れていかれた。
日向はもちろん、彼らの事を訪ねたのだが、のらりくらりとはぐらかされ、何もわからないままである。
……だが世の中、知らない方が良いこともままあるのだ。
「日向ぁ」
「は、はいぃ!!なんすか!?」
「……そんなに怯えるなぁ。テメー、今日見たこと、聞いたこと、全て黙っていられるかぁ?」
「きょ、今日見たことって……あの男達の事……っすか?」
「オレの事もだ」
「だっ、黙ってます!」
『ほら、日向さんもこう言ってるし……今日は家に返してあげよう?』
「……」
日向の言葉、モニターの向こうの綱吉の言葉、どちらもを聞いたスクアーロは、少し口を閉じて考える。
その間、スクアーロにじっと見詰められていた日向はゴクリと生唾を飲んで、なるべく真剣な顔で彼女を見詰め返していた。
「……少し、説明をした後に帰す」
『…………そ、う、だね。それが良いかもしれない……』
暫くの間の後、スクアーロが口にした言葉に、綱吉は渋々、といった様子で頷いた。
スクアーロは日向から視線をそらして、綱吉を見る。
「不満かぁ?」
『……うんん、そうした方が良いって、わかってるから。でも、出来たら一人に、負担をさせることは避けたかっただけ』
「相変わらずあまっちょろい奴だぁ」
『う、うるさいな……!』
もう一度、二人が日向に視線を戻す。
2対の瞳に真っ直ぐに見詰められ、無意識に背筋を伸ばした日向に、スクアーロは彼らが今、置かれている状況を説明し始めた。
「単刀直入に言おう。テメーらは今、マフィアに狙われている」
『日向さん、突然の事で訳がわからないと思います。でも、オレ達の話を聞いて、協力してください』
「そ……そんな事急に言われても……!」
『協力って言っても、特別何かして欲しい訳じゃないんです!ただ、オレ達の存在を話さないで欲しいことと……後は、オレ達がスムーズに動けるように、ちょっと気を使ってもらえればそれだけで良いんです!』
「で、でも……」
「日向、オレ達は無茶を言う気はねぇ。お前に出来ることだけ、してくれれば良い。それに、WC終了までの間の辛抱だぁ」
「は、はあ…………って、WC終了までの?」
『……オレ達の力にも、限界があるんです。皆さんがバラバラのまま、危険に晒されていることに気付いてもいない状態で守り続けるのは、そこまでが限界なんです』
「そ、それって……、大会が終わったらオレ達をどうするつもりなんだよ!?」
「……一ヶ所に集まってもらう。そうすれば守りやすくなるし、敵も倒しやすくなる」
「そんな……勝手なこと……!」
理解なんて出来ない。
そう苦しそうに吐き捨てた彼に、綱吉はうつ向き加減になりながらも、ハッキリと言う。
『勝手です。マフィアっていつだって勝手なんです。でも、その理不尽に打ち勝つためには、あなたの協力が必要なんです!』
「な……」
綱吉の強い光を宿した瞳と、力強い言葉に、日向は動けなくなってしまう。
自然と、彼の言葉が本気なのだとわからせられる。
その目の迫力に、気圧された。
「……オレが、あんたらの頼みを断ったらどうなるんだ?」
「お前がオレ達の事をしゃべると言うのなら、ここから帰してはやれねぇなぁ」
『ちょっと!そんな事言わないでよ!?』
「……脅されてるみてぇ。でも、脅しとか関係なく、あんたらの言うこと、聞いた方が良い、と、思う」
『!じゃあ!』
「話さねぇし、あんたらに協力する。だから頼む。オレ達の事、守ってくれ……!」
日向は思いっきり頭を下げた。
彼らの言うことが本当なら、きっと先生やこの少年は、自分達の気付かないところで、守るために戦い続けてきてくれたと言うことなのだから。
その日向の頭を、スクアーロは幾分か優しく叩く。
「守ってやるからには、WC、全力を尽くせよぉ」
「っ……たり前じゃねーっすか。言われなくたって、優勝してやりますよ!」
『よ、よかった~!』
スクアーロと日向の手が、ガッチリと結ばれる。
『じゃあ日向さんの事、家まで送っていってもらえるかな?』
「ああ。行くぞぉ、日向」
「あ、はい!!」
モニターから離れていく二人を見て、綱吉はちょっとだけ口許に笑みを浮かべた。
スクアーロはどうやら、彼の事を意外と気に入っているらしい。
WC終了までの後数日、彼らが上手くやれれば良いけど……。
一抹の不安を抱えながらも、綱吉は彼らを笑顔で見送ったのだった。
「……鮫、だな」
「鮫、っすよね……」
スクアーロの周りを青い炎を纏いながら浮いている動物……間違いなくそれは鮫だった。
スクアーロの使っているメイン匣、暴雨鮫(スクアーロ・グランデ・ピオッジャ)。
今、彼の背には二人の人間の死体……もとい、気絶した体が乗っている。
「基本的に突然襲ってきたりはしねぇよ。お゙ら、さっさと出るぞ」
「あ……はい」
「あまり長く居ても良いことはねぇからな。それから、出たら……少し付き合ってもらうぞぉ」
「あっ……は、い……」
日向は少し落ち込んだみたいだったが、それでも来てもらわない訳にはいかない。
慰めているつもりなのか、乱暴に背中を叩くと、スクアーロは彼らを連れて体育館を出ていった。
* * *
「……と、言うわけで、バレた」
『バレた。じゃないでしょ!何やってんのー!?』
「仕方ねぇだろぉ、まさかこいつが襲われるなんて、誰も思ってなかったんだから」
『それは確かに予想外だったけど……、でもどうするの!?日向さんを今そこに匿うのはあまりに不自然……って言うかすっごく怪しまれそうだし……』
「このまま黙っててもらうしかねぇだろぉ。然もなけりゃ、記憶消すとか」
「い゙っ!?」
『物騒ー!!そんな事出来るわけないでしょ!?』
「そういう選択肢もあるって話だぁ」
誠凛高校、そこから程近くに建てられた仮設アジトに日向は連れ込まれ、そしてスクアーロが何やら物騒な相談をしているのを聞いていた。
キメラの男と、素性の知れない謎の大男は、このアジトに着いた途端にどこかに連れていかれた。
日向はもちろん、彼らの事を訪ねたのだが、のらりくらりとはぐらかされ、何もわからないままである。
……だが世の中、知らない方が良いこともままあるのだ。
「日向ぁ」
「は、はいぃ!!なんすか!?」
「……そんなに怯えるなぁ。テメー、今日見たこと、聞いたこと、全て黙っていられるかぁ?」
「きょ、今日見たことって……あの男達の事……っすか?」
「オレの事もだ」
「だっ、黙ってます!」
『ほら、日向さんもこう言ってるし……今日は家に返してあげよう?』
「……」
日向の言葉、モニターの向こうの綱吉の言葉、どちらもを聞いたスクアーロは、少し口を閉じて考える。
その間、スクアーロにじっと見詰められていた日向はゴクリと生唾を飲んで、なるべく真剣な顔で彼女を見詰め返していた。
「……少し、説明をした後に帰す」
『…………そ、う、だね。それが良いかもしれない……』
暫くの間の後、スクアーロが口にした言葉に、綱吉は渋々、といった様子で頷いた。
スクアーロは日向から視線をそらして、綱吉を見る。
「不満かぁ?」
『……うんん、そうした方が良いって、わかってるから。でも、出来たら一人に、負担をさせることは避けたかっただけ』
「相変わらずあまっちょろい奴だぁ」
『う、うるさいな……!』
もう一度、二人が日向に視線を戻す。
2対の瞳に真っ直ぐに見詰められ、無意識に背筋を伸ばした日向に、スクアーロは彼らが今、置かれている状況を説明し始めた。
「単刀直入に言おう。テメーらは今、マフィアに狙われている」
『日向さん、突然の事で訳がわからないと思います。でも、オレ達の話を聞いて、協力してください』
「そ……そんな事急に言われても……!」
『協力って言っても、特別何かして欲しい訳じゃないんです!ただ、オレ達の存在を話さないで欲しいことと……後は、オレ達がスムーズに動けるように、ちょっと気を使ってもらえればそれだけで良いんです!』
「で、でも……」
「日向、オレ達は無茶を言う気はねぇ。お前に出来ることだけ、してくれれば良い。それに、WC終了までの間の辛抱だぁ」
「は、はあ…………って、WC終了までの?」
『……オレ達の力にも、限界があるんです。皆さんがバラバラのまま、危険に晒されていることに気付いてもいない状態で守り続けるのは、そこまでが限界なんです』
「そ、それって……、大会が終わったらオレ達をどうするつもりなんだよ!?」
「……一ヶ所に集まってもらう。そうすれば守りやすくなるし、敵も倒しやすくなる」
「そんな……勝手なこと……!」
理解なんて出来ない。
そう苦しそうに吐き捨てた彼に、綱吉はうつ向き加減になりながらも、ハッキリと言う。
『勝手です。マフィアっていつだって勝手なんです。でも、その理不尽に打ち勝つためには、あなたの協力が必要なんです!』
「な……」
綱吉の強い光を宿した瞳と、力強い言葉に、日向は動けなくなってしまう。
自然と、彼の言葉が本気なのだとわからせられる。
その目の迫力に、気圧された。
「……オレが、あんたらの頼みを断ったらどうなるんだ?」
「お前がオレ達の事をしゃべると言うのなら、ここから帰してはやれねぇなぁ」
『ちょっと!そんな事言わないでよ!?』
「……脅されてるみてぇ。でも、脅しとか関係なく、あんたらの言うこと、聞いた方が良い、と、思う」
『!じゃあ!』
「話さねぇし、あんたらに協力する。だから頼む。オレ達の事、守ってくれ……!」
日向は思いっきり頭を下げた。
彼らの言うことが本当なら、きっと先生やこの少年は、自分達の気付かないところで、守るために戦い続けてきてくれたと言うことなのだから。
その日向の頭を、スクアーロは幾分か優しく叩く。
「守ってやるからには、WC、全力を尽くせよぉ」
「っ……たり前じゃねーっすか。言われなくたって、優勝してやりますよ!」
『よ、よかった~!』
スクアーロと日向の手が、ガッチリと結ばれる。
『じゃあ日向さんの事、家まで送っていってもらえるかな?』
「ああ。行くぞぉ、日向」
「あ、はい!!」
モニターから離れていく二人を見て、綱吉はちょっとだけ口許に笑みを浮かべた。
スクアーロはどうやら、彼の事を意外と気に入っているらしい。
WC終了までの後数日、彼らが上手くやれれば良いけど……。
一抹の不安を抱えながらも、綱吉は彼らを笑顔で見送ったのだった。