if群青×戯言、零崎威識の人間遊戯
スクアーロが竹寿司に戻ってくると、山本剛がドアを開ける音を聞き付けたのか、駆け寄ってきた。
「書き置き見たが……どこ行ってたんだい兄ちゃん?」
「ちょっとなぁ」
「ちょっと?」
「それより、山本……武は起きたのかぁ?」
「いや、それがまだな……」
強く叩きすぎたかな、と頬を掻いた剛に、スクアーロはなら起こせば良いとだけ言う。
「知り合いが明日の正午に来る。それまでに、出来るだけのことをしておかなきゃならねーからな。」
「出来るだけのこと?」
「ああ、……入れ」
スクアーロの声に従って、控え目な音を立ててドアが開いた。
外から恐る恐る入ってきたのは……、
「……ツナ君かい?」
「や、山本のお父さん!」
「ちゃおッス」
沢田綱吉と、アルコバレーノリボーン。
スクアーロが連れてきたらしい二人は、特に詳しい説明は受けてないらしく、困惑した様子であった。
「あの、なんで山本ん家に?……っていうか、山本は?」
「説明しろ、スクアーロ」
所在なさげに立つ沢田綱吉と、不機嫌そうに口をへの字にしたリボーンに、スクアーロは何も言わぬまま、ただ着いてくるようにだけ指示して、店の奥に進んだ。
剛も最後に着いてくる。
剛は、涙の後も、疲れた様子もなかったが、目尻が少し赤くなっていた。
スクアーロはそれを気にすることも、指摘することもしなかったが、無言で彼を一瞥した。
その様子にも、何かただならぬモノを感じたのだろう。
綱吉の表情はより一層不安に揺れ、我慢ならずにスクアーロの背に話し掛けた。
「あの!山本はどこですか!?山本に、何か……何かあったんですか?」
「……、これからテメーに何があったか話してやる。本当は、何も言わねー方が、良いのかもしれねーが……」
「勿体ぶらねーで早く話せ。山本に何があった?」
「……まずは、見てもらった方が早えだろうな」
スクアーロが立ち止まったのは、客間に繋がる襖の前だった。
そこに何があるのだろう。
スクアーロが襖に手をかける。
するすると、襖が開く。
綱吉の脳内には警鐘が鳴り響いていた。
見たくない。
この先のものを見てしまったら、もう戻れなくなる気がする。
どんどん大きくなる警鐘。
襖が開ききる前に、取っ手を掴む手を振り払って、思いきり閉めてしまいたくなった。
やめてと叫んで、逃げ出したくなった。
だが、綱吉が動くことはなく、……動くことは出来ず、彼の前で遂に襖は開ききって、その向こうにある光景が綱吉の目に飛び込んできた。
「山本……!?」
畳の上に転がっている山本武は、ワイヤーやら紐やら何やらでガッチガチに拘束されていて、部屋に踏み込んだスクアーロは、そんな山本を容赦なく蹴って起こした。
「ゔお゙ぉい、山本武!さっさと起きろぉ」
「んー……んぐ、むむぅんぐぅ!?」
猿轡まで噛まされていた山本は、まともに話すことも出来ずに、訴えかけるような目でスクアーロを見上げる。
スクアーロがそんな山本の猿轡を解いてやった、その途端。
ガチンッと歯を噛み合わせる音が空気を震わせた。
山本が、スクアーロの首に噛みつこうとしたのだ。
スクアーロは余裕でその攻撃を避けたが、それを見ていた者達には震撼が走っていた。
「え……?や、山本、何して……」
「……説明しろ、スクアーロ。山本はどうしちまったんだ?」
悲痛な顔でその様子を見ていた剛は、一言も話さなかったが、綱吉とリボーンは、困惑と緊張を高めて、スクアーロを見つめた。
スクアーロはスクアーロで、緊張を解くように大きく息を吐き出して、山本が少しでも動けなくなるように柱に縛り付けていた。
『理由なく殺す』その意味が今の攻撃でよくわかった。
殺気も殺意も感じなかった。
匂宮出夢や哀川潤に聞いていなければ、今の攻撃は避けられなかったかもしれない。
「うん?あれ、オレ何してんだ?」
首を傾げてそう言った山本に、未だ困惑し続ける綱吉とリボーンに、スクアーロは冷酷に告げた。
「単刀直入に言う。山本武は、お前は、殺人鬼になった。今までの山本武に戻ることは出来ねぇ。今のお前は、理由なく人を殺す。裏世界の住人、零崎になったんだぁ」
沈黙が、5人を包み込んだ。
「書き置き見たが……どこ行ってたんだい兄ちゃん?」
「ちょっとなぁ」
「ちょっと?」
「それより、山本……武は起きたのかぁ?」
「いや、それがまだな……」
強く叩きすぎたかな、と頬を掻いた剛に、スクアーロはなら起こせば良いとだけ言う。
「知り合いが明日の正午に来る。それまでに、出来るだけのことをしておかなきゃならねーからな。」
「出来るだけのこと?」
「ああ、……入れ」
スクアーロの声に従って、控え目な音を立ててドアが開いた。
外から恐る恐る入ってきたのは……、
「……ツナ君かい?」
「や、山本のお父さん!」
「ちゃおッス」
沢田綱吉と、アルコバレーノリボーン。
スクアーロが連れてきたらしい二人は、特に詳しい説明は受けてないらしく、困惑した様子であった。
「あの、なんで山本ん家に?……っていうか、山本は?」
「説明しろ、スクアーロ」
所在なさげに立つ沢田綱吉と、不機嫌そうに口をへの字にしたリボーンに、スクアーロは何も言わぬまま、ただ着いてくるようにだけ指示して、店の奥に進んだ。
剛も最後に着いてくる。
剛は、涙の後も、疲れた様子もなかったが、目尻が少し赤くなっていた。
スクアーロはそれを気にすることも、指摘することもしなかったが、無言で彼を一瞥した。
その様子にも、何かただならぬモノを感じたのだろう。
綱吉の表情はより一層不安に揺れ、我慢ならずにスクアーロの背に話し掛けた。
「あの!山本はどこですか!?山本に、何か……何かあったんですか?」
「……、これからテメーに何があったか話してやる。本当は、何も言わねー方が、良いのかもしれねーが……」
「勿体ぶらねーで早く話せ。山本に何があった?」
「……まずは、見てもらった方が早えだろうな」
スクアーロが立ち止まったのは、客間に繋がる襖の前だった。
そこに何があるのだろう。
スクアーロが襖に手をかける。
するすると、襖が開く。
綱吉の脳内には警鐘が鳴り響いていた。
見たくない。
この先のものを見てしまったら、もう戻れなくなる気がする。
どんどん大きくなる警鐘。
襖が開ききる前に、取っ手を掴む手を振り払って、思いきり閉めてしまいたくなった。
やめてと叫んで、逃げ出したくなった。
だが、綱吉が動くことはなく、……動くことは出来ず、彼の前で遂に襖は開ききって、その向こうにある光景が綱吉の目に飛び込んできた。
「山本……!?」
畳の上に転がっている山本武は、ワイヤーやら紐やら何やらでガッチガチに拘束されていて、部屋に踏み込んだスクアーロは、そんな山本を容赦なく蹴って起こした。
「ゔお゙ぉい、山本武!さっさと起きろぉ」
「んー……んぐ、むむぅんぐぅ!?」
猿轡まで噛まされていた山本は、まともに話すことも出来ずに、訴えかけるような目でスクアーロを見上げる。
スクアーロがそんな山本の猿轡を解いてやった、その途端。
ガチンッと歯を噛み合わせる音が空気を震わせた。
山本が、スクアーロの首に噛みつこうとしたのだ。
スクアーロは余裕でその攻撃を避けたが、それを見ていた者達には震撼が走っていた。
「え……?や、山本、何して……」
「……説明しろ、スクアーロ。山本はどうしちまったんだ?」
悲痛な顔でその様子を見ていた剛は、一言も話さなかったが、綱吉とリボーンは、困惑と緊張を高めて、スクアーロを見つめた。
スクアーロはスクアーロで、緊張を解くように大きく息を吐き出して、山本が少しでも動けなくなるように柱に縛り付けていた。
『理由なく殺す』その意味が今の攻撃でよくわかった。
殺気も殺意も感じなかった。
匂宮出夢や哀川潤に聞いていなければ、今の攻撃は避けられなかったかもしれない。
「うん?あれ、オレ何してんだ?」
首を傾げてそう言った山本に、未だ困惑し続ける綱吉とリボーンに、スクアーロは冷酷に告げた。
「単刀直入に言う。山本武は、お前は、殺人鬼になった。今までの山本武に戻ることは出来ねぇ。今のお前は、理由なく人を殺す。裏世界の住人、零崎になったんだぁ」
沈黙が、5人を包み込んだ。