if群青×黒子、違う世界の人たち
洛山高校、放課後の部活の時間に、綱吉と山本は、バスケ部の活動する体育館へと訪れていた。
床と擦れて鳴くバスケシューズの音、選手達の荒々しい掛け声、大きく揺れるゴールリング、弾むバスケットボール。
冬だと言うのに、体育館の中には熱気が籠っており、その熱気と勢いに気圧されながら、綱吉は感嘆のため息を溢した。
「スゴい……、全員が真剣なんだね」
「オレ、バスケはやったことねーけど、皆スゲー必死にやってるってのはわかるのな」
ただただ、スゴいと感想を漏らすことしか出来ない彼らに、赤司は落ち着いた声で語りかけた。
「洛山は、日本でも指折りのバスケ強豪校だ。開闢の帝王、とさえ呼ばれるこの高校で、必死で練習をしない奴はいないだろう」
「帝王……」
帝王、という、その言葉は、この高校よりもむしろ、赤司単体にこそよく似合うのではないだろうか。
そんな思いを抱きながら、綱吉は赤司の顔をそろりと見上げる。
確か、赤司の眼は『帝王の眼』なんて呼ばれていたのだっけ。
「どうかしたのかい、綱吉?」
「へっ!?いや、何でもないよ!?」
見詰めすぎたのだろうか。
それとも、赤司独特の視野の広い眼のせいだろうか。
振り向いた赤司と目があってしまい、綱吉は慌てて誤魔化し、赤司から目を背ける。
目を背けたその先では、一軍のレギュラーメンバーが練習をしていた。
資料で見たメンバーが3人、それともう一人三年生らしき人物が、シュート練習をしているのが見えた。
「あ、あの人達、一軍のレギュラーなんだよね!?やっぱスゴいなー……。シュートってあんなにスポスポ入るもんなんだね……」
「練習の賜物って奴だな!!あの黒髪の人とか、フォームスゴい綺麗なのな!!」
「ああ、玲央か。そうだね、玲央はSGだから、僕達のチームでも特にシュートは上手いんじゃないかな」
「そ、そうなんだ……。なんか皆さんキャラが濃そう……。あ、でも三年生っぽいあの人は、そんなこと無さそうだな……」
黒髪の……玲央という人は何だか、時折動きがクネクネとしているし、他の二人も筋骨隆々だし、やたらと動きがアクロバティックだ。
だが影の薄そうな三年生らしき人は、その3人からは1歩引いたところで、無難に練習メニューをこなしている。
淡々としたその性格は、綱吉の側にはあまりないものである。
「君は……、」
「え?」
「三年生っぽい人ってどれなのな?」
「なに言ってんの山本、ほらあそこにいるじゃん、あの薄墨色の髪の人」
「ん?……あ、本当なのな!」
ぽそりと呟いた綱吉に、赤司が目を見開く。
山本の問いに当然のように答える綱吉を見て、赤司は更に大きく目を見張った。
「綱吉、君、すぐにあの人の事を見付けたのかい?」
「へ?すぐに……まあ、すぐに、かなあ?」
というか、普通に気付くよね?と言う綱吉を、赤司は暫くの間マジマジと見詰めていたが、やがてその口端をゆるゆると持ち上げる。
赤司は笑った、そのはずだ。
だが綱吉は、背筋に冷たいものが伝うのを感じて固まる。
まるで、蛇に睨まれた蛙。
赤司の鋭い視線に射抜かれて、動けなくなった綱吉に、彼は至極嬉しそうに声を掛けた。
「彼は見付からないために作った選手なんだよ、綱吉」
「へ?見付からないため……?」
「そう、パス特化したサポート型の選手、新型の幻の6人目……」
「へ、6人目?え?」
そう言えば、もらった資料に名前が書いてあったような……。
綱吉は絶賛混乱中である。
何故って、それは赤司が瞳をカッ開いて……ではなく輝かせて、興味深そうに綱吉を見詰めているからである。
何か不味いことを言ってしまったのだろうか、などと内心冷や汗びっしょりになるが、赤司は至極上機嫌そうに話を続けた。
「わからないかも知れないけど、これはスゴいことなんだよ、綱吉。普通の人間ならまず、彼を見付けることは出来ない。僕のように特別な目を持った人間でもなければね」
「は、はあ……」
「折角だし、この高校にいる間だけでも、バスケ部に入部してみないかい?」
「はあ……、……って、はあ!?」
「見たところ、筋肉もそこそこついているみたいだし。君なら歓迎だよ、綱吉。もちろん武も、一緒にどうかな?」
「良いぜ!面白そうなのな!!」
「いや、入部ってそんな突然……!てか山本は良いの!?」
あまり近くにいすぎて、自分達の素性を知られてしまっては困る。
そう案じて、返事を渋る綱吉に、山本は快活に笑って言ったのだった。
「大丈夫だってツナ、なんとかなるのな」
「適当!!適当だよ山本!あの、赤司君!オレなんか入ったってろくなこと出来ないよ!?オレのアダ名ダメツナだし!」
「綱吉はダメなんかじゃあない。出来ないことは僕達が教える。まずは一軍と一緒に練習を始めてみてくれないかい?」
「いきなり一軍と!?」
粘った綱吉だったが、結局赤司にごり押しされ、そのすぐ後から練習に参加する事になったのであった……。
床と擦れて鳴くバスケシューズの音、選手達の荒々しい掛け声、大きく揺れるゴールリング、弾むバスケットボール。
冬だと言うのに、体育館の中には熱気が籠っており、その熱気と勢いに気圧されながら、綱吉は感嘆のため息を溢した。
「スゴい……、全員が真剣なんだね」
「オレ、バスケはやったことねーけど、皆スゲー必死にやってるってのはわかるのな」
ただただ、スゴいと感想を漏らすことしか出来ない彼らに、赤司は落ち着いた声で語りかけた。
「洛山は、日本でも指折りのバスケ強豪校だ。開闢の帝王、とさえ呼ばれるこの高校で、必死で練習をしない奴はいないだろう」
「帝王……」
帝王、という、その言葉は、この高校よりもむしろ、赤司単体にこそよく似合うのではないだろうか。
そんな思いを抱きながら、綱吉は赤司の顔をそろりと見上げる。
確か、赤司の眼は『帝王の眼』なんて呼ばれていたのだっけ。
「どうかしたのかい、綱吉?」
「へっ!?いや、何でもないよ!?」
見詰めすぎたのだろうか。
それとも、赤司独特の視野の広い眼のせいだろうか。
振り向いた赤司と目があってしまい、綱吉は慌てて誤魔化し、赤司から目を背ける。
目を背けたその先では、一軍のレギュラーメンバーが練習をしていた。
資料で見たメンバーが3人、それともう一人三年生らしき人物が、シュート練習をしているのが見えた。
「あ、あの人達、一軍のレギュラーなんだよね!?やっぱスゴいなー……。シュートってあんなにスポスポ入るもんなんだね……」
「練習の賜物って奴だな!!あの黒髪の人とか、フォームスゴい綺麗なのな!!」
「ああ、玲央か。そうだね、玲央はSGだから、僕達のチームでも特にシュートは上手いんじゃないかな」
「そ、そうなんだ……。なんか皆さんキャラが濃そう……。あ、でも三年生っぽいあの人は、そんなこと無さそうだな……」
黒髪の……玲央という人は何だか、時折動きがクネクネとしているし、他の二人も筋骨隆々だし、やたらと動きがアクロバティックだ。
だが影の薄そうな三年生らしき人は、その3人からは1歩引いたところで、無難に練習メニューをこなしている。
淡々としたその性格は、綱吉の側にはあまりないものである。
「君は……、」
「え?」
「三年生っぽい人ってどれなのな?」
「なに言ってんの山本、ほらあそこにいるじゃん、あの薄墨色の髪の人」
「ん?……あ、本当なのな!」
ぽそりと呟いた綱吉に、赤司が目を見開く。
山本の問いに当然のように答える綱吉を見て、赤司は更に大きく目を見張った。
「綱吉、君、すぐにあの人の事を見付けたのかい?」
「へ?すぐに……まあ、すぐに、かなあ?」
というか、普通に気付くよね?と言う綱吉を、赤司は暫くの間マジマジと見詰めていたが、やがてその口端をゆるゆると持ち上げる。
赤司は笑った、そのはずだ。
だが綱吉は、背筋に冷たいものが伝うのを感じて固まる。
まるで、蛇に睨まれた蛙。
赤司の鋭い視線に射抜かれて、動けなくなった綱吉に、彼は至極嬉しそうに声を掛けた。
「彼は見付からないために作った選手なんだよ、綱吉」
「へ?見付からないため……?」
「そう、パス特化したサポート型の選手、新型の幻の6人目……」
「へ、6人目?え?」
そう言えば、もらった資料に名前が書いてあったような……。
綱吉は絶賛混乱中である。
何故って、それは赤司が瞳をカッ開いて……ではなく輝かせて、興味深そうに綱吉を見詰めているからである。
何か不味いことを言ってしまったのだろうか、などと内心冷や汗びっしょりになるが、赤司は至極上機嫌そうに話を続けた。
「わからないかも知れないけど、これはスゴいことなんだよ、綱吉。普通の人間ならまず、彼を見付けることは出来ない。僕のように特別な目を持った人間でもなければね」
「は、はあ……」
「折角だし、この高校にいる間だけでも、バスケ部に入部してみないかい?」
「はあ……、……って、はあ!?」
「見たところ、筋肉もそこそこついているみたいだし。君なら歓迎だよ、綱吉。もちろん武も、一緒にどうかな?」
「良いぜ!面白そうなのな!!」
「いや、入部ってそんな突然……!てか山本は良いの!?」
あまり近くにいすぎて、自分達の素性を知られてしまっては困る。
そう案じて、返事を渋る綱吉に、山本は快活に笑って言ったのだった。
「大丈夫だってツナ、なんとかなるのな」
「適当!!適当だよ山本!あの、赤司君!オレなんか入ったってろくなこと出来ないよ!?オレのアダ名ダメツナだし!」
「綱吉はダメなんかじゃあない。出来ないことは僕達が教える。まずは一軍と一緒に練習を始めてみてくれないかい?」
「いきなり一軍と!?」
粘った綱吉だったが、結局赤司にごり押しされ、そのすぐ後から練習に参加する事になったのであった……。