if群青×黒子、違う世界の人たち

「さて、クローム。沢田綱吉の話によれば、一般人の高校生が憎っくきマフィアに狙われているそうです。沢田綱吉を手伝うのは癪ですが、それがマフィア撲滅へと繋がることなれば、我々も協力を惜しむ気はない。哀れな一般人達を守ってやりましょう。良いですねクローム?」
「はい、骸様」
「おっと。それと、学校では僕のことは『骸さん』、とそう呼びなさい。様付けでは怪しまれますからね」
「はい、骸さん」

今朝、クローム髑髏はそのような会話をして、骸と共に桐皇高校に潜入した。
骸は二年生の教室に、クロームは一年生の教室にいる。
骸の言うように、クロームは青峰や桃井という高校生を守る気でいた。
だが、黒曜凪の名前で潜入したクロームは、朝の時点で既に躓きかけていた。

「凪ちゃんの高校、並盛って言うんでしょ?」
「あ、はい……」
「凪ちゃん可愛いけど、彼氏とかいるの!?」
「えっ?あの……私……」
「凪ちゃん、変わった髪型だね……」
「あ……その……」

怒濤の質問攻めに答えることもままならず、次第に俯いてしまうクロームにクラスメイト達も困ったように一人、また一人と離れていく。
人見知りで、消極的なクロームが、すぐにクラスに溶け込むのは難しいらしい。
だが、落ち込んで小さくなるクロームに、一人の女子生徒が話し掛けてきた。

「え、と……凪ちゃんだよね?」
「え……?」
「あ!私ね、私桃井さつきって言うの!後ろの席だから、宜しくね!!」
「は、はい……!」

桃井さつき、今回綱吉から守ってくれ、と頼まれた内の一人だった。
サラサラと流れる桃色の髪、大きな瞳に整った顔立ち。
京子やハルとは、また違ったタイプの美少女である。

「いきなりたくさん話し掛けられて、驚いちゃったよね?」
「あっ、平気……です」
「みんな良い人たちばかりだから、きっと直ぐに慣れるよ!あと、敬語は禁止!私達クラスメイトなんだから!ね?」
「あ、あの……」
「ん?」
「わ、わかった……」
「っ~!凪ちゃんかっわいいー!!」
「えっ?」

桃井にガバリと抱き付かれて、クロームは頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。
骸様、この人はとても良い人みたい。
だけど、ちょっと……

「さつきちゃん……?」
「可愛いー!!」

変わった人です。


 * * *


「クフ……」
「樺根君、何か言った?」
「いいえ、何でもありませんよ。それより、一時間目の授業は何でしょうか?」

骸は愛想よく微笑みながら、自分の周りに群がる女子生徒達に話し掛けていた。
黄色い声を上げる生徒達を相手にしつつ、クロームの様子を窺う。
桃井さつきの積極性に、だいぶ困惑しているらしい。
だがこの分なら、護衛対象者達と仲良くなるのには、そう時間はかからないだろう。

「樺根君聞いてるー?」
「ええ、聞いてますよ?」
「それでねー!」

姦しく話す女子生徒の話など、骸は聞いてはいなかった。
話を聞く振りをしながら、クラスの様子を観察する。
突然来た謎の転校生、しかも顔が良いせいで女子達に持て囃されている骸を見て、大半の男子生徒は嫉妬と羨望の眼差しを送ってきている。
その中の一人に、事前に見た資料に載っていた者を見付けた。
確か……若松、と言ったか。
狙われる可能性は少ないようだが、それでも警戒しておいて損はない。
若松の顔を確りと目に焼き付けて、骸はクロームに指示を送った。

――放課後、桃井さつきに部活を案内してもらうように……

そして骸もバスケ部へと近付くべく、周りの少女達に話を振った。

「そう言えば、この高校はバスケ部が強いんでしたよね?」
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