if群青×黒子、違う世界の人たち

秋田県の、とあるミッション系の私立高校。
その高校の1年生の教室で、炎真は巨人と……否、自分の護衛対象と向き合っていた。

「ふーん、交換生かー。まーよろしくねー」
「よ、よろしく」

たむたむと頭を叩かれながら、炎真はボソボソと返事を返す。
高校一年生にしては小柄な炎真と、2mを越える身長を持つ彼との間には、余りにも大きな壁が存在している。
周りの生徒は、同情の視線を向けるだけで、炎真を助け出す気はないらしい。
巨人、もとい、紫原敦は、身を縮こませる炎真を見て、不思議そうに首を傾げている。

「お、大きいんだね、紫原君……」
「んー、まあねー」
「……」

……会話が途切れてしまった。
元々喋るのが苦手な炎真。
相手の紫原も、自発的に喋るタイプではないらしく、何故かずっと、炎真と挨拶をした後は、頭をたむたむと叩き続けている。
ただでさえバカなのに、もっとバカになったらどうすれば良いんだろう。
ツナ君、僕頑張ろうと思ってたけど、無理かもしれないよ……。
ジュリー、何で2年生の教室に行っちゃったんだよ……。
心の中で二人に助けを求めながら、炎真は授業が始まるまでずっと、紫原にオモチャにされていたのであった……。


 * * *


「ん?今誰かに呼ばれたような……」
「どうかしたかい?」
「べっつにー!それよりよー辰也、お前さっきの可愛子ちゃんのケー番しらねー?」
「いや、知らないよ?君はそればっかりだな……」

自分に学校の案内をしてくれるという氷室辰也の顔を、その軽薄さで引きつらせながら、加藤ジュリーはキョロキョロと辺りを見回す。

「んー?アーデル辺りが噂してんかな?」
「アーデルさんがどんな人か知らないけど、それは無さそうな気がするかな」

残念ながら、心の中でジュリーを呼んだのは炎真であったし、その頃アーデルハイトは至門高校にて、粛清活動の真っ最中であった。
ジュリーは唇をつき出して不満を訴えながら、氷室に質問を投げ掛ける。

「辰也さ、部活で可愛い子とかいないのん?やっぱり私立って可愛子ちゃんたくさん居んのかなぁ~♪」
「私立高校に対しての認識、間違ってると思うけど?君、交流に来たんだよね?女の子以外と交流する気、あるのかい?」
「ない☆」
「だと思ったよ」

やれやれと肩をすくめる氷室は、なかなか絵になっている。
彼ならば女子にも人気があるだろうが、ジュリーの場合は、下手をすれば通報されかねない。
胡散臭いと言うか、怪しげと言うか……。
氷室がそんなことを思っているとは露知らず、ジュリーは更に問い掛けたのだった。

「辰也の部活ってなんだ?オレちんにも紹介して♪」
「マネージャー、逃げないかなぁ……」

氷室はかなり迷惑がっていたようだが、結局放課後に、部活に連れていくことを了承したのだった。
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