夜は短し、遊べよマフィア

「んだぁ?結局誰も、ザンザスに一回も勝てなかったのかぁ?」
「だーって!最後のとこの10点だけぜーってぇ撃てねーんだもん!あれ撃てるとかマジボスおかしい!!あんなん王子にだって撃てねーよ!!」
「そもそもあの銃がショボいのが悪いのだ!!だがあんな銃でも全ての的を撃ち落とすとは流石ボス!」
「本当ボス凄いわぁ。私なんて最初の点数と全然変わらなかったのに……」

スクアーロ達が昼食を確保するまでに、ベル達は2回ほど例のアトラクションに挑戦していた。
だが一度もXANXUSには勝てなかったそうだ。
XANXUSは当たり前だと言うように鼻を鳴らし、買ってきたホットドッグにかぶり付いている。
落ち込むベル達を笑って慰めながら、スクアーロはコーヒーを啜る。

「銃はザンザスの十八番だからなぁ。どう足掻いたって勝てやしねぇだろ」
「しし、わかってっけどさ、でも悔しい」
「せめてベルちゃん達には追い付きたかったわぁ……」
「ま、そんなに悔しいなら、今から腕を磨くんだなぁ」
「ねぇ、ちょっといい?」
「どうしたぁ?」

クツクツと笑うスクアーロの横で、パンフレットを見ていたマーモンが声を上げた。
マーモンは小食のため、既に昼食は食べ終わっていて、暇を潰すためにパンフレットを開いていた。
どうやら面白そうなアトラクションを見付けたらしい。

「次はここ行ってみない?コーヒーカップ」
「お!それってオカマが車ん中で話してたのだろ?王子そこ行ってみてー!!」
「隣にゴーカートもあるんだなぁ」
「私はゴーカートの方も乗ってみたいわ!!」
「ならそこ行ってみっか」

丁度全員が食べ終わり、そのままマーモンの提案通りにコーヒーカップに行ってみることになった。
ゾンビハンターのアトラクションのおかげで機嫌の良いXANXUSも、珍しく文句を言わずに着いてくる。
ほのぼのとした空気が彼らを包む、その時、はるか遠く、日本にて、ようやくヴァリアー達の脱走が判明していた……。



 * * *



「……わるいボス、まさか全員に逃げられるとは……」
「いや、あのマーモンが幻術だ。むしろよく気付いたなって言いてーよ」

彼らを軟禁していた病院にて、跳ね馬ディーノは重たいため息を吐いて、空っぽになったベッドを見遣る。
ディーノがツナ達と寿司屋で打ち上げをしている間に、彼らは逃げ出したらしい。
しかも逃走を悟らせないように、彼ら自身の髪の毛を媒介に、強化された幻術を残し、全く誰にも気付かれないまま、今の今まで騙し通したのだ。
彼らが逃げ出したと思われる時間からは、既に半日を優に越える時間が経過している。
ロマーリオが脱走に気付き、連絡を受けたディーノが直ぐに捜索を指示したが、どうにもマーモンが痕跡を消しているらしく、見付かりそうもない。
翌日には、イタリアから来るボンゴレの幹部に引き渡す予定だったと言うのに、困ったものだ。

「9代目と守護者には連絡取れたか?」
「いや、今連絡取ってるとこだが……」
「ボス!9代目と連絡取れました!」
「本当か!?」

ロマーリオの言葉を遮るように、部下の一人が部屋に飛び込んでくる。
どうやら9代目から伝言を預かってきたらしく、息を切らしながら伝えた。

「恐らく彼らはイタリアに帰っているはず、待っていれば必ずヴァリアーのアジトに帰ってくるから、門外顧問に迎えに行ってもらうよう既に頼んであるので、心配は不用、とのことです!」
「は……はあ!?」
「キャバッローネを責めたり、咎めたりすることもないから、安心してくれ、とも言っていました」
「それは……ありがたいけどよぉ。本当に帰ってくるのか?」

ディーノの心配は最もだった。
8年前のクーデター、今回の争奪戦。
彼らはあくまで、ボンゴレにとって裏切り者であり、彼ら自身もまた、ボスであるXANXUSを騙していた、9代目及びボンゴレその物を嫌っている様子だった。
そんな彼らが本当に戻ってくるのか。
普通に考えればそのまま帰ってこなさそうなものだが……。

「……9代目がそれを言っていたんだな?」
「はい!」
「9代目と、9代目の超直感を信じるしかねーな……」
「オレ達はどうする、ボス?」
「9代目は責めねーって言ってくれてるが、アイツらを逃がしちまった挙げ句、今まで気付けなかった責任がある。今すぐ向こうに戻って、取り合えず門外顧問と連絡とる。ロマーリオ、飛行機の手配頼んだぜ」
「任せろ」

ロマーリオ達が出ていく。
一人残ったディーノは、ガシガシと頭を掻いてまたため息を吐いた。

「逃げ出したりなんて、するような奴じゃないと思ってたんどけどな……」

ほんの僅かな間だが、彼らと……と言うよりかは、スクアーロと接して、思っていたよりも彼女がずっと、マトモであると実感した。
まあ持ってるものとか、たまーに発言が危険だったりはするが、今回の事だって彼女は綱吉達を傷付けたくて戦っていたわけではなかったし、捕まえてからも大人しくしていたから、まさか突然なんの前触れもなく逃げ出すとは、ディーノも思っていなかったのだ。

「何で逃げ出したんだろな……」

いくら考えてもわかることではない。
ディーノは軽く頭を振って、部屋を出た。
向こうで奴らに会ったら、しっかり怒って、そんで理由を聞こう。
そう決意したディーノは気を引き締めて、部屋を出ていった。
因みにその頃、ヴァリアー達は……。



 * * *



「待ってベルちゃ早い早い早い早いはやんhfyうwjszbqk」
「ゔっ……!!ゔおえぇえぇぇ……」
「ししししし!やべー!!チョーはえぇ!!」
「アイツら、死んでねーか?」
「知るか」
「ベル、容赦ないね……」

3人一組でコーヒーカップに乗ったため、絶叫大好きベルフェゴールにより大事故が起こっていた……。
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