闇に映える白銀
スペルビ・スクアーロは、数ある剣士の中でも、特別飛び抜けた才能を持っていた。
だから、自分は奴に興味を持ったのだと、そう思っていた。
でも、もしかしたら、それは少し違ったのかもしれない。
奴に抱いたこの気持ちは、終生の好敵手に出会えた興奮でも、背を預けて戦える友と出会えた喜びでも、自分の技を受け継ぐ器と出会えた期待でもなく。
そう
その気持ちは
まるで恋にも似た、優しい温かさを持っていて……
死ぬ間際、その気持ちに気付いてしまったのだ。
オレは奴に、恋をしていた。
本当に、情けない話だ……。
でも、良かった。
大切な女を、殺さずに済んで、良かった。
剣士の誇りとか、自分の死を遺して逝くとか、そんなことは、本当はどうでも良かったのだ。
アイツを殺さなくて良かった。
アイツが忘れることの出来ない人になれて良かった。
死んでいくオレの、瞼の裏に滲む銀色は、やはりいつも通りに、美しかった。