Vista mare con te
「ほい、完成!」
「わざわざ髪までいじるのかよ」
「良いだろ?可愛いんだし」
とある広場のベンチに座ったスクアーロの髪を、緩いお団子に結って、ディーノはにこりと笑った。
本当は美容室とかに行って、プロにしてもらった方が良かったのかも知れないが、何となく、自分でしたかったのだ。
幸い、髪を縛るゴムや櫛は先程のブティックに売っていたのを買えたし、スクアーロも他人に背中を見せるよりは、ディーノにしてもらう方がましと言うことで、渋々だがさせてもらえた訳である。
チラリと鏡を見ながら、スクアーロはムッとした様子で言う。
「やっぱり、こんなのオレには……」
「……オレの選んだ服、気に入らないか?」
「っそうじゃねぇけど!その……こんな格好、普段しねーから、何か落ち着かないし……」
「スゴい似合ってんだけどなぁ。普段からそういう格好、するようにしたら良いのに」
「そ、そんなの無理だ!」
「む……、まあ無理にとは言わねーけどさ。せめてオレの前でくらい可愛い格好してくれたっていーじゃん」
「……善処は、する……」
「んー、ま、今はそれでいっか」
スクアーロが居心地悪そうにもぞもぞしながら答えるのを見ていたら、あまり無理に強請るのも馬鹿らしく思えてきて、ディーノはふっと息を吐くと、肩を竦めてベンチから立ち上がった。
「跳ね馬?」
「飲み物買ってくるよ。何か飲みたいのとか、ある?」
「ん……じゃあ、コーヒー。ブラックで」
「りょーうかい」
ディーノはそう言うと、近くの売店に向かって駆けていった。
途中振り返ると、スクアーロがうつ向いて座っているのが見える。
「善処する、か……。無理矢理女の子らしくする気はねーけど、もうちっとくらい、オレ好みの格好とかしてくれたって良いのに……。ま、時間はあるんだしゆっくり行くかぁ」
ギャップとか、恥じらう姿とか、可愛いと思うけれども、折角ならもっと女らしくしてくれた方が嬉しいな……と思うのは、欲張りすぎだろうか。
気難しげな表情をしながら、飲み物を買って、彼女の元に戻ろうとしたときだった。
先程まで自分が座っていた彼女の隣に、知らない男が座っている。
「っ!スクアーロ……!」
驚いて、一瞬停止。
しかしその直後、ディーノは慌てて駆け戻っていた。
* * *
「お嬢さん、隣良いかい?」
「……あ、オレ?」
「そうそう、君だよ。スゴく綺麗な髪だね。ふふ、もしかして天国から天使が降りてきたんじゃないのかと思っちゃったよ」
「は、はあ?」
ディーノが席を外すのと入れ代わりに、一人の男がスクアーロの隣に座る。
ナンパか?この自分に?
動揺するスクアーロに対して、楽しそうに笑い掛けながら、男は開いた距離を詰める。
しかしまるで磁石のように離れて後退るスクアーロを見て、男は更に楽しそうに笑う。
「恥ずかしがってるのかい?可愛いね、君」
「っ!あの、何ですか。オレ人待ってんですけど」
「さっきここに座ってた男だろ?まだ買い物してるし、大丈夫だよ」
「そうじゃなくて……」
「この銀髪、本当に綺麗。まるで星の光のようだね。もちろん髪以外もとても美しいけれど」
「だから、あの……」
「あ、でもここ、こうしたらもっと可愛いんじゃないかな」
「ちょっ!?」
男は手を伸ばしてスクアーロの前髪に触れようとする。
だが男の手が触れるより早く、スクアーロはそれを叩き落とした。
ヴァリアークオリティーである。
無駄遣い甚だしいが、スクアーロは毅然とした表情で男をキッと睨んだ。
「髪、大事な人に結ってもらったんで、いじらないでください」
「え?」
「スクアーロ!大丈夫か?」
「……別に、大丈夫。他の場所行くぞ」
「え?あ、ああ……」
慌てて駆け付けてきたディーノの手首をしっかりと掴んで、スクアーロは早足にその場を立ち去った。
「わざわざ髪までいじるのかよ」
「良いだろ?可愛いんだし」
とある広場のベンチに座ったスクアーロの髪を、緩いお団子に結って、ディーノはにこりと笑った。
本当は美容室とかに行って、プロにしてもらった方が良かったのかも知れないが、何となく、自分でしたかったのだ。
幸い、髪を縛るゴムや櫛は先程のブティックに売っていたのを買えたし、スクアーロも他人に背中を見せるよりは、ディーノにしてもらう方がましと言うことで、渋々だがさせてもらえた訳である。
チラリと鏡を見ながら、スクアーロはムッとした様子で言う。
「やっぱり、こんなのオレには……」
「……オレの選んだ服、気に入らないか?」
「っそうじゃねぇけど!その……こんな格好、普段しねーから、何か落ち着かないし……」
「スゴい似合ってんだけどなぁ。普段からそういう格好、するようにしたら良いのに」
「そ、そんなの無理だ!」
「む……、まあ無理にとは言わねーけどさ。せめてオレの前でくらい可愛い格好してくれたっていーじゃん」
「……善処は、する……」
「んー、ま、今はそれでいっか」
スクアーロが居心地悪そうにもぞもぞしながら答えるのを見ていたら、あまり無理に強請るのも馬鹿らしく思えてきて、ディーノはふっと息を吐くと、肩を竦めてベンチから立ち上がった。
「跳ね馬?」
「飲み物買ってくるよ。何か飲みたいのとか、ある?」
「ん……じゃあ、コーヒー。ブラックで」
「りょーうかい」
ディーノはそう言うと、近くの売店に向かって駆けていった。
途中振り返ると、スクアーロがうつ向いて座っているのが見える。
「善処する、か……。無理矢理女の子らしくする気はねーけど、もうちっとくらい、オレ好みの格好とかしてくれたって良いのに……。ま、時間はあるんだしゆっくり行くかぁ」
ギャップとか、恥じらう姿とか、可愛いと思うけれども、折角ならもっと女らしくしてくれた方が嬉しいな……と思うのは、欲張りすぎだろうか。
気難しげな表情をしながら、飲み物を買って、彼女の元に戻ろうとしたときだった。
先程まで自分が座っていた彼女の隣に、知らない男が座っている。
「っ!スクアーロ……!」
驚いて、一瞬停止。
しかしその直後、ディーノは慌てて駆け戻っていた。
* * *
「お嬢さん、隣良いかい?」
「……あ、オレ?」
「そうそう、君だよ。スゴく綺麗な髪だね。ふふ、もしかして天国から天使が降りてきたんじゃないのかと思っちゃったよ」
「は、はあ?」
ディーノが席を外すのと入れ代わりに、一人の男がスクアーロの隣に座る。
ナンパか?この自分に?
動揺するスクアーロに対して、楽しそうに笑い掛けながら、男は開いた距離を詰める。
しかしまるで磁石のように離れて後退るスクアーロを見て、男は更に楽しそうに笑う。
「恥ずかしがってるのかい?可愛いね、君」
「っ!あの、何ですか。オレ人待ってんですけど」
「さっきここに座ってた男だろ?まだ買い物してるし、大丈夫だよ」
「そうじゃなくて……」
「この銀髪、本当に綺麗。まるで星の光のようだね。もちろん髪以外もとても美しいけれど」
「だから、あの……」
「あ、でもここ、こうしたらもっと可愛いんじゃないかな」
「ちょっ!?」
男は手を伸ばしてスクアーロの前髪に触れようとする。
だが男の手が触れるより早く、スクアーロはそれを叩き落とした。
ヴァリアークオリティーである。
無駄遣い甚だしいが、スクアーロは毅然とした表情で男をキッと睨んだ。
「髪、大事な人に結ってもらったんで、いじらないでください」
「え?」
「スクアーロ!大丈夫か?」
「……別に、大丈夫。他の場所行くぞ」
「え?あ、ああ……」
慌てて駆け付けてきたディーノの手首をしっかりと掴んで、スクアーロは早足にその場を立ち去った。