Vista mare con te

さて、お互い照れながら始まったデートだったが、やはり立ち直るのはディーノの方が早かった。
でれでれとした顔で、嬉しそうにスクアーロと手を繋ぎながら、気になっていた事を1つ訪ねた。

「じゃあ……映画が見たいって言うのは適当に言ったのか?」
「ゔっ……その、ごめん……」
「別に謝ることじゃねーって!スクアーロから誘ってくれて嬉しかったし。でもそんなら別にわざわざ映画に行く必要ないってことだよな?」
「ん……そうだが、どこか行きたいところあるのかぁ?」

街を歩きながら、1度手を離してスクアーロの姿をじっと見詰める。
まじまじと見詰められたスクアーロは、居心地が悪そうにモジモジとしている。

「跳ね馬?」
「……折角のデートなのに、その服は余りにも色気がないと思うんだよな」
「服……やっぱり変かぁ?」

確かに、ルッスーリアにも言われた通り、男っぽい飾り気のない服装。
ディーノにも指摘されて、しょんぼりと少し落ち込んだ様子の彼女に、笑いながらディーノは言った。

「変じゃねーよ?すっげー似合ってる。でもオレとデートする時くらい、いつもとは違う格好を見せてくれたって良いんじゃねーの?」
「……ごめ」
「だから!」
「っ!?」
「これからスクアーロを女の子らしくプロデュースして、かつ今日を目一杯楽しんでもらいたいと思います!」
「はぁ!?」

ディーノは驚くスクアーロの手を引いて走り出し……、いつものように転けた。
頭を押さえてため息を吐くスクアーロに照れて笑いながら、立ち上がったディーノは今度こそしっかりと地面を踏み締めて歩き出した。

「あはは、何か締まらねーな……」
「いつもの事だから気にしねーよ」
「うぅ……と、とりあえず気を取り直して行くぜ!」


 * * *


そして数分後、スクアーロはとある店の中で、一人の男と顔を見合わせて困惑した顔で立ち尽くしていた。

「あの……誰?」
「えぇっと……ディーノ様?こちらの方は確か……」
「ヴァリアーのスクアーロだ。そんでもってオレの彼女だぜ」
「え……?……え!?あの……失礼ですが……男の方では?」
「あ……いや、その……」
「正真正銘の女の子だぜ」
「っ~~~!!」
「マジでございますか……!」
「そう言うわけでスクアーロのマッサージ、頼んだぜ!」
「マジでかぁ……!」

スクアーロが連れてこられたのは、街角の小さなマッサージ店で、そこの店主である男は、突然の来客とカミングアウトに、大分混乱している様子であった。
彼は裏社会の人間を客として迎える事も多く、スクアーロを知らないわけではない。
だからこそ、目の前で困った顔でいる彼女の事を、どうすれば良いのか分からずにいるのだが、ディーノはそれには構わずスクアーロをグイグイと押し出す。

「スクアーロ、いっつも仕事ばっかで疲れてんだろ?まずはしっかりリラックスして欲しいって思ってさ!」
「お前はどうすんだよ」
「ん?じゃあオレもお願いして良いかな?」
「か、構いませんが……」
「あっ!そうそう、」

他の女性店員にスクアーロを託したディーノは、にっこりと笑いながら店主に近付いてきた。

「……?何でしょうか?」
「スクアーロには女の子の店員だけつけてくれよ、な?」
「え……は、はい」

余りにも真剣な表情で頼んでくるディーノに、店主は少し引きながら答えたのである。
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