突撃!隣の浮気現場!!

「へぇ~、なかなか良い雰囲気の店じゃねーの」
「……店は、な」
「はっ、確かになぁ。それより、スクアーロちゃん、何か飲むか?結構色々あるぜ?」
「……残念ながら、飲み食いする暇はねぇようだなぁ」
「ケッ、オレ達のデートの邪魔するたぁ、無粋な野郎共だなオイ」

街角の小さな酒場。
二人で中に入り、扉が閉まる。
店の奥からゾロゾロと出てきた男達を見て、スクアーロは舌舐めずりでもしそうな顔で、にやりと笑って手を顔の前に持ち上げた。

「退け、テメーらみてぇな雑魚に興味はねぇよ」
「そう言うわけにはいかな、っが!」
「なにっぐぅお!?」

初めに声を上げた男が、ナイフを出してスクアーロにその切っ先を向ける。
だが途端、男の体は後方に吹き飛び、テーブルに激突して気絶する。
次から次へと男達が倒れていくのを眺めながら、シャマルは感心したように息を溢した。

「ほぅ、生で見るとやっぱりすげぇな」
「障害物の多い室内なら、ワイヤーほど使い勝手の良い武器はねぇよ。ま、雑魚にしか効かねぇだろうがな」

キリキリとワイヤーを引き絞り、首を絞めて気絶させる。
誰一人として己の周囲2メートルには寄せ付けないまま、全員を生け捕りにしたスクアーロは、コキリと肩を鳴らすと、奥の扉に向けて足を踏み出した。

「この奥にいるだろう人間は、コイツらとはレベルが違う。……シャマル、テメー、リングは使えるのかぁ?」
「あー……いや、使えねぇ訳じゃねぇが、晴れの炎は直接攻撃には向かねぇからなぁ」
「ならサポートを頼む」
「りょーうかいっ」

やりとりを交わした後、スクアーロが扉を薄く開き、持っていた閃光弾を放り投げてドアを閉める。
しかし次の瞬間、そのドアは内側から吹き飛ばされ、渦巻く炎と轟音が彼らを襲ったのだった。


 * * *


綱吉達がバー・インペラトーレに着き、その入り口のドアに手をかけた時だった。
綱吉の背筋に悪寒が走る。
咄嗟に、無意識に、綱吉は叫んでいた。

「みんなさがって!」

綱吉の声に全員がドアから離れようと後退し、その数秒後。
閃光と爆発音、そして死ぬ気の炎が店を内側から爆発させた。
吹っ飛ぶドア、屋根や、壁まで飛ばされ、次の瞬間には店が跡形もなく無くなっていたのだった。

「なっ……スク……スクは!?」
「あ……ディーノさん、あそこ!」

ハッと気付いてディーノが叫ぶ。
綱吉は立ち込める爆煙の中に、見覚えのあるシルエットを見付けて指差した。
一陣の、風が吹く。
風に飛ばされて見通しの良くなった店の跡。
そこに立っていたのは、不機嫌そうに眉根を寄せたスクアーロと、呆れ顔のシャマルだった。

「チッ……聞いていた通り、血の気の多い連中のようだなぁ」
「血の気が多いにしてもやりすぎじゃね?」
「一般人が来る前に片付けんぞぉ」
「はいよっと」

彼ら二人の前に、10人ほどの人影が見える。
この爆発は彼らの仕業なのだろうか。
だがそれを確かめる間もなく、ユラリとスクアーロが動き出した。

「テメーら!サツの回し者かっがはぁあ!?」
「ゔお゙ぉい!サツだぁ?笑わせるなぁ!沈黙の掟(オルメタ)を破るカスを裁く奴が、テメーらと同じマフィア以外にいるかぁ!?」

男達は全員がリングを持ち、炎による攻撃をしてきていたが、スクアーロはそんなことはお構いなしに、ほんの僅かな隙をついて彼らの懐に入り込むと、自らの雨の炎を纏った剣で切り裂く。
血飛沫を上げて倒れる仲間を見て恐怖したのか、炎を消して逃げようとした男は、何故か体中の穴という穴から血を噴き出して倒れた。

「ったく、正面から戦う気もねー屁垂れ野郎が、随分と意気がったもんだな」

逃げ出す者はシャマルが始末し、それ以外の人間はスクアーロが倒す。
流れるように鮮やかな剣捌きで敵を倒し、その数分後には全ての決着がついていた。
血を流して倒れる男達の群れ。
だが息はあるようで、彼らを後ろ手に縛ったスクアーロは、キョロキョロと辺りを見回し、そして綱吉達の方へと顔を向けた。
何事もなかったかのように、すたすたと近寄ってくる。
驚く綱吉達を尻目に、躊躇なくディーノの手首を掴んだスクアーロは、一言だけ声を掛けると、早足に歩き出した。

「逃げるぞぉ」

彼らはそのまま、より人気のない道へと姿を消していった。
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