群青色のない世界
「あの、ボス……。この写真って、誰ですか?」
金髪の少年が、棚の上の写真立てを見ながら尋ねる。
写真の中には、白銀色の長い髪を押さえて、口許にほんのりと笑みを浮かべた人物が写っている。
その横にいるのは金髪癖っ毛の若い男性だ。
「この金髪の人、ボスですよね?」
「ん?……ああ、そうだな。イケメンだろー?」
「あ、まーまーイケメンですし、この写真のボスからも、今と変わらずへなちょこ臭がしてますよ!!」
「ふざけてじゃなくて本気なのが辛い!」
無邪気って罪深いよな……と凹んでいる男……ボスに、少年はもう一度問いかける。
「この銀髪の人、どなたですか?綺麗な方ですね」
「おー、綺麗だろう?ソイツはまあ……オレの大切な人、かなあ……」
「大切な人……恋人、か、もしかして奥さんですか!?」
少年が目を輝かせて聞いてくるのに対して、ボスはその頭を優しく撫でながら目を細めて答える。
「恋人……ではあったかな。籍は入れてなかったよ。最後まで結局結婚はしてくれなかったからなぁ。あ、別にフラれたとかじゃないからな!」
「でも……結婚なさってないんでしょう?それに、今は付き合ってる人いないって……えーと、部下の人が言ってました」
「んー、いや……まあ、アイツはもう2度と、会えないところに行っちまったからな」
「あ……」
哀しそうに伏せられたボスの目に、少年も事情を察して顔色を変える。
その少年に、気にするな、と言って、
穏やかに笑うボスに、少年は言いづらそうに躊躇いながらまた口を開く。
「あの、ごめんなさい」
「良いんだよ。むしろ、こいつのことを話せて、少し嬉しいくらいだから……」
「まだ、好きなんですか?」
「ああ。ずっと好きだよ」
ボスの答えは早かった。
遠い過去を思い返すように、目を閉じて大きく息を吸う。
「ソイツがな、生まれ変わってまた逢ったら、もう一度恋をするだろう、と言っていたんだ。オレ達の心は、きっとまだ繋がっている」
「ボス、……でも、あの」
「ん?」
「……僕が、一人前になるまでは、一緒にいてくれる?この人を追って、どこか……どこか遠い所に、行ったりとか、しない?」
「ふっ、ははは!当たり前だ。まだまだ、お前の側にいるよ」
可愛いな、お前は、などと言いながら少年の髪をぐちゃぐちゃに掻き乱す。
少年は気恥ずかしそうにその手を外して、今度は少年の方からボスの頭に手を伸ばした。
ボスの、色素の抜けた白髪の上を、少年の手が優しく撫でる。
「あの、お礼……」
「ふふ、そうか。優しい子だな、お前は……」
穏やかな時間が通りすぎていく。
「この方がボスの恋人なら、この方は僕のお母様みたいなものですね!」
「ぷっ!はははは!!そうだな!アイツは母親なんて柄じゃなかったけど、そう言うことになるかもな」
二人の間に血の繋がりはない。
だが微笑みあう二人は、確かに親子のようだった……。
金髪の少年が、棚の上の写真立てを見ながら尋ねる。
写真の中には、白銀色の長い髪を押さえて、口許にほんのりと笑みを浮かべた人物が写っている。
その横にいるのは金髪癖っ毛の若い男性だ。
「この金髪の人、ボスですよね?」
「ん?……ああ、そうだな。イケメンだろー?」
「あ、まーまーイケメンですし、この写真のボスからも、今と変わらずへなちょこ臭がしてますよ!!」
「ふざけてじゃなくて本気なのが辛い!」
無邪気って罪深いよな……と凹んでいる男……ボスに、少年はもう一度問いかける。
「この銀髪の人、どなたですか?綺麗な方ですね」
「おー、綺麗だろう?ソイツはまあ……オレの大切な人、かなあ……」
「大切な人……恋人、か、もしかして奥さんですか!?」
少年が目を輝かせて聞いてくるのに対して、ボスはその頭を優しく撫でながら目を細めて答える。
「恋人……ではあったかな。籍は入れてなかったよ。最後まで結局結婚はしてくれなかったからなぁ。あ、別にフラれたとかじゃないからな!」
「でも……結婚なさってないんでしょう?それに、今は付き合ってる人いないって……えーと、部下の人が言ってました」
「んー、いや……まあ、アイツはもう2度と、会えないところに行っちまったからな」
「あ……」
哀しそうに伏せられたボスの目に、少年も事情を察して顔色を変える。
その少年に、気にするな、と言って、
穏やかに笑うボスに、少年は言いづらそうに躊躇いながらまた口を開く。
「あの、ごめんなさい」
「良いんだよ。むしろ、こいつのことを話せて、少し嬉しいくらいだから……」
「まだ、好きなんですか?」
「ああ。ずっと好きだよ」
ボスの答えは早かった。
遠い過去を思い返すように、目を閉じて大きく息を吸う。
「ソイツがな、生まれ変わってまた逢ったら、もう一度恋をするだろう、と言っていたんだ。オレ達の心は、きっとまだ繋がっている」
「ボス、……でも、あの」
「ん?」
「……僕が、一人前になるまでは、一緒にいてくれる?この人を追って、どこか……どこか遠い所に、行ったりとか、しない?」
「ふっ、ははは!当たり前だ。まだまだ、お前の側にいるよ」
可愛いな、お前は、などと言いながら少年の髪をぐちゃぐちゃに掻き乱す。
少年は気恥ずかしそうにその手を外して、今度は少年の方からボスの頭に手を伸ばした。
ボスの、色素の抜けた白髪の上を、少年の手が優しく撫でる。
「あの、お礼……」
「ふふ、そうか。優しい子だな、お前は……」
穏やかな時間が通りすぎていく。
「この方がボスの恋人なら、この方は僕のお母様みたいなものですね!」
「ぷっ!はははは!!そうだな!アイツは母親なんて柄じゃなかったけど、そう言うことになるかもな」
二人の間に血の繋がりはない。
だが微笑みあう二人は、確かに親子のようだった……。