太陽は夜にも昇る
突然だけど、ここは家庭教師ヒットマンリボーン、という漫画の世界に良く似ている。
似ているだけで同じじゃないし、この世界で私は相当痛い目にあってきた。
だから、漫画の中、なんて認識は薄いし、彼らの事を紙上のキャラクター達じゃなくて、生身の人間としてしっかり認識している。
だから、リング争奪戦では絶対にスクちゃんが勝つって信じていたし(結果的に勝ったけどボロボロになって帰ってきた)、十年後編でもザクロなんかに負けるとは思ってなかったし(ザクロには勝ったけど白蘭にやられた)、代理戦争編でも上手くやると思ってた(戦士全員の中で一番の重傷だった)。
正直、継承式では出しゃばるんだろうなぁとは思っていたけど、まさかあんなボロボロになるなんて思わなかったし、代理戦争の後に変なことに巻き込まれて、左腕を失うことになるなんて思わなかった。
「このっ!バカ!」
「ゔっ、……うるせぇよ」
「あんたは毎度毎度、大丈夫って言う度にぼろっぼろになって!強いのに何でいっつもあんたが一番重傷になってんのよ!」
「で、でも死んでねぇし」
「死んでなけりゃ良いってもんじゃないでしょうがー!」
「ぐふっ!?」
彼女の実家で、短くなってしまった左腕を見た途端、私はキレた。
信頼して野放しにしてるのに、毎回一人で無理して怪我だらけになって!
「わ、私がどれだけ心配してたのかも知らないでっ!このバカ!バァカ!」
「お前は、バカしか、言えねぇ、のか」
「だっでじんばいじだんだもん゙っ!」
「わかった、から、腹を、締めるなぁ!」
「ああ!スクちゃんが死んだ!この人でなしぃ!」
「あんたのことだよ!」
思わず力任せにスクちゃんのお腹を絞め続けたら、ディーノ君に怒られて引き離された。
ああーん、マイディアスクちゃんがー!
ぐったりするスクちゃんを抱えて守ろうとするディーノ君。
私とスクちゃんの仲を割こうとは、良い度胸だなこの馬野郎め。
「何なのよあんたは!うちのスクちゃん返しなさい!」
「なっ!お前こそ何なんだよ!?つぅかお前に渡したら、次こそスクアーロが窒息死するぞ!?」
「私は……スクちゃんの婚約者よ」
「ダウト」
「スクちゃんの友達よ!わかったらさっさと寄越せ馬!」
「馬っ……オレは跳ね馬だ!略すなよ!」
「馬は馬よ!」
「お前ら耳元で叫ぶなようるせぇ……」
呻くように言ったスクちゃんに、私達はハッと気が付く。
言い争ってる場合じゃなかった!
「スクちゃん腕痛くないの?もう平気なの?」
「ん゙、お゙ー……たぶん、平気」
「……どうせまだ痛むんでしょ。もう、無理ばっかりする上に強がりばっかり……!」
「やっぱり痛むのか!!無理してないでゆっくり休め!」
「平気だし……」
顔をそらしてまだ強がるスクちゃんに、私達は口を揃えて怒鳴ったのだった。
「「良いから休んでなさい!」」
二人に言われて、スクちゃんは渋々とベッドに潜り込んだのだった。
* * *
「……えーと、改めて、荻野美奈です。ミーナで良いよ」
「あ、オレはディーノな。まあ知ってるっぽいけど」
「まあね」
元々知ってたのもあるけど、スクちゃんから有名なマフィアのことについてはちょっとだけ教えてもらってた。
ここは絶対に関わるな、とか、ここならいざと言う時助けてくれるかもしれない、とか。
キャバッローネはいざと言う時、スクちゃんの名前出せば一応保護はしてくれるかも、って教わってたりする。
「で、ミーナとスクアーロはどういう関係なんだ?」
「だから友達よ。私があの子に助けてもらって、それからずっと、あの子と仲良くしてる。どーよ、羨ましいでしょ?」
「……羨ましい」
……本当に悔しそうに言ったディーノ君。
ああ、様子を見ていて思ったけど、ディーノ君は、スクちゃんのことが好きなのかな。
「あなた、スクちゃんのこと好き?」
「……好き、だけど」
「どうして?」
「え?」
予想通りに、好きだと言ったディーノ君。
理由を問うと、不思議そうな顔をされたけれど、すぐに嬉しそうな顔をして、理由を話してくれた。
「んー、まずは、可愛いから」
「ほう……」
「いっつも、何するにも全力で頑張ってるから、オレに対しても全力で向き合ってくれて、その全力の姿勢が可愛かった」
「確かに、スクちゃんは可愛いわね」
「そう!心を許した奴に対しては、たまに弱音吐いたりするから、そこもまた可愛いんだよ!」
「わかる、わかるわ。普段はキリッとしてるからね。ギャップ萌よね」
「そうそう!そんなギャップ見ちゃったらこう……、庇護欲が沸いてきちゃってな……。オレが守らなきゃって思ってさー」
「無茶するからね、あの子」
「それにあいつ、結構優しいだろ?不器用だけどさ、子供にも優しいし。でー、見てると、アイツとオレの間に子供なんか出来たら、こんな風にほのぼのした家庭になったりとかするのかな~……なんて考えちまったりしてな!?」
「そこまで考えるのはキモチワルイ」
「さっきまで同意してくれてたのに!」
ディーノ君はあれかな、乙メンなのかな。
背景に花を散らしながら語っていたディーノ君をバッサリ切った。
「言っとくけど、スクちゃん、子供どころか結婚だってする気ないと思うわよ」
「うぅん……だろうなぁ……」
「それでも、スクちゃんのこと、好きでいてくれるの?」
「当たり前だろ!つーかする気ないならする気にさせるし!」
「……そっか」
ふんっ!と意気込んで宣言したディーノ君は、本当にスクちゃんの事が好きみたいで、また嬉しそうにスクちゃんの好きなところを語り始めていた。
「XANXUSにばっかり構うのはちょっと寂しいけどさ、そういう一途なところもポイントだし、XANXUSだけじゃなくてオレにもあんなに一生懸命になってくれたら良いよなあー。あ、でもちょっと冷たくされるのも照れ隠しだと思えば可愛いって言うかさ、『あー、オレこいつの事好きだな~』って思って本当に堪らねぇし」
「ヤバい、重症だ」
冷たくされて喜ぶとかドMじゃないの。
まさか跳ね馬ディーノがドMさんだったなんて……、ただの一読者だった時には予想もしてなかったぜ。
でも、それだけ彼女の事が好きなんだろうなって思うと、嬉しかった。
「ディーノ君、スクちゃんは結構寂しがり屋だから、目一杯優しくしてあげてね?」
「ん?そんなん当たり前だよ。あ、でもオレ一人じゃダメだからな!」
「え?」
「ミーナも、これからもスクアーロと、仲良くしていってくれよな。アイツが腕を失っても、マフィアやめても、オレの嫁さんになっても、子持ちになっても、お祖母ちゃんになっても、ずっとずっと、友達で居続けろよ。さっき二人の事見てて思ったんだ。スクアーロ、ミーナの事を本当に大切に思ってるんだって。絞め殺されそうになってたけど、ずっと嬉しそうだった」
「うぅん、良い話風に言ってるけど、途中凄く勝手な将来設計入ってたわよね?」
スクちゃん子持ちになってたわよ、勝手に。
でも、ああ、第三者に、私達はそう見えたのか。
大好きな大好きな、私の友達が、私の事を本当に大切に思ってそう、って、言ってくれるのって、凄く嬉しかった。
「絶対に友達やめたりなんかしないわ。一番の友達なんだもん。絶対手放したりしない。ていうか、あんたがスクちゃんに酷いことしたりしたら、私が掻っ攫っていっちゃうんだから」
「そ、そんなことするわけねーだろ!」
「どーかしらねー?悪気がなくても人を傷付ける事ってあるしー?あんたそう言うの多そうよね」
「んなことねーって!」
ちょっとからかうつもりで、そんなこと言ってみた。
でもね、えるしってるか?こいつまだ付き合ってもないんだぜ……。
で、そんな風に二人で騒いでたら、ふらっとスクちゃんが現れた。
ちなみに私達がいたのはキッチンの隣のリビングスペースで、どうやら彼女は飲み物を取りに来たらしかった。
「……コーヒー」
「オレ用意するから、スクアーロは座って待ってろよ。ミーナは?何か飲むか?」
「じゃー私もコーヒーね」
「りょーかーい」
ルンルンっとスキップでもしそうな様子で、キッチンに向かうディーノ君の後ろ姿を、スクちゃんはボンヤリと眺めている。
眉間にシワを寄せて、酷く気難しい顔をしていた。
「どしたのよスクちゃん」
「……何でもねーよ」
「悩んでる顔してるけどね?」
「……あいつと、話しててどう思った?」
「……ハハーン」
「っ……んだよ」
「べっつにぃ~?良い人だよね、ディーノ君。一途で、可愛くて」
「……うん」
スクちゃんは私の座る二人がけのソファーに座ると、私の肩に頭を凭れ掛けさせる。
よしよしと撫でてあげると、満足したように頭が離れた。
「体動かしてないから、何かつまんねぇ」
「ディーノ君と体動かしてきたら?」
「ん゙ー……、そうするかな」
「ベッドで」
「おい何でだ」
今度は軽い頭突きをもらう。
あーもう、照れちゃって、何この可愛い生き物、堪らん。
「スクちゃん悩んでるみたいだけど、」
「悩んでねーよ」
「スクちゃんは余計なこと気にしすぎるところがあるからさ。だから、たまにはあんまり考えないで、好きなように動いてみても良いんじゃないの?」
「……好きなように」
「良いのよ、周りなんか。自由に動いてみなさいよ」
「……おう」
頭突きのまんま、またコテ、と頭を預けてきたスクちゃんを撫でるけれど、今度はそのまま離れなかった。
ああ、何かこう言うの、久々だなぁ。
「……って、何イチャついてんだよ」
「あら~?ディーノ君羨ましいのかな~?まあこの席は譲らないけどね!」
「ズルい!オレもそこに入る!」
「来るなバカ」
「良いじゃねーか別にー」
「来んなバカ」
近寄られるのが恥ずかしいのか、ディーノ君の事を拒絶して、スクちゃんはずりずりと移動しながら、私の体を膝の上に乗せる。
んー……私も強くなったつもりなんだけど、この子の体には敵わないなぁ。
シャツ越しに触れる体は、程よく引き締まっていて、私の体も危なげ無く支えてくれる。
「いやん、スクちゃんったらイケメーン♡」
「るせぇよバカ」
「オレもー、オレ二人とも抱えるからー。入れてくれー」
「来んなバカ」
「スクアーロのいけずー!」
「知るか」
そのまま私の事を抱っこして、肩に顔を埋めてくるスクちゃんの顔がちょっと赤らんでいたことは、黙っておいてあげようかな。
「スクちゃん、頑張ってね」
「……ん」
小さく交わした言葉。
その数日後、電話で二人が恋人同士になったと聞いた時には、私は嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「スクちゃん、今、幸せ?」
『……し、あわせ』
辿々しい言葉に、電話の向こうで赤くなってるだろう彼女を想像して、思わず笑ってしまった。
貴女に救われて、ずっと貴女の傍で生きてきた。
私には力がなくて、ろくに貴女を守れたりはしなかったけれど、貴女の幸せを見届けられて、私も幸せなの。
「近い内に、直接詳しい話聞かせてね?」
『すぐに行く。ミーナ、ミーナに一番、聞いてほしい』
その言葉に、驚いた。
ディーノ君にスクちゃん取られちゃって、ちょっと寂しいな、なんて思ってたけど、当分、私が寂しがる暇はないみたい。
スクちゃん、好き、大好きだよ。
私達は産まれた国も、世界も違うけれど、貴女は私の、一番の友達。
大切な大切な、太陽のようなひとなんだよ。
だからきっと、幸せになろうね?
似ているだけで同じじゃないし、この世界で私は相当痛い目にあってきた。
だから、漫画の中、なんて認識は薄いし、彼らの事を紙上のキャラクター達じゃなくて、生身の人間としてしっかり認識している。
だから、リング争奪戦では絶対にスクちゃんが勝つって信じていたし(結果的に勝ったけどボロボロになって帰ってきた)、十年後編でもザクロなんかに負けるとは思ってなかったし(ザクロには勝ったけど白蘭にやられた)、代理戦争編でも上手くやると思ってた(戦士全員の中で一番の重傷だった)。
正直、継承式では出しゃばるんだろうなぁとは思っていたけど、まさかあんなボロボロになるなんて思わなかったし、代理戦争の後に変なことに巻き込まれて、左腕を失うことになるなんて思わなかった。
「このっ!バカ!」
「ゔっ、……うるせぇよ」
「あんたは毎度毎度、大丈夫って言う度にぼろっぼろになって!強いのに何でいっつもあんたが一番重傷になってんのよ!」
「で、でも死んでねぇし」
「死んでなけりゃ良いってもんじゃないでしょうがー!」
「ぐふっ!?」
彼女の実家で、短くなってしまった左腕を見た途端、私はキレた。
信頼して野放しにしてるのに、毎回一人で無理して怪我だらけになって!
「わ、私がどれだけ心配してたのかも知らないでっ!このバカ!バァカ!」
「お前は、バカしか、言えねぇ、のか」
「だっでじんばいじだんだもん゙っ!」
「わかった、から、腹を、締めるなぁ!」
「ああ!スクちゃんが死んだ!この人でなしぃ!」
「あんたのことだよ!」
思わず力任せにスクちゃんのお腹を絞め続けたら、ディーノ君に怒られて引き離された。
ああーん、マイディアスクちゃんがー!
ぐったりするスクちゃんを抱えて守ろうとするディーノ君。
私とスクちゃんの仲を割こうとは、良い度胸だなこの馬野郎め。
「何なのよあんたは!うちのスクちゃん返しなさい!」
「なっ!お前こそ何なんだよ!?つぅかお前に渡したら、次こそスクアーロが窒息死するぞ!?」
「私は……スクちゃんの婚約者よ」
「ダウト」
「スクちゃんの友達よ!わかったらさっさと寄越せ馬!」
「馬っ……オレは跳ね馬だ!略すなよ!」
「馬は馬よ!」
「お前ら耳元で叫ぶなようるせぇ……」
呻くように言ったスクちゃんに、私達はハッと気が付く。
言い争ってる場合じゃなかった!
「スクちゃん腕痛くないの?もう平気なの?」
「ん゙、お゙ー……たぶん、平気」
「……どうせまだ痛むんでしょ。もう、無理ばっかりする上に強がりばっかり……!」
「やっぱり痛むのか!!無理してないでゆっくり休め!」
「平気だし……」
顔をそらしてまだ強がるスクちゃんに、私達は口を揃えて怒鳴ったのだった。
「「良いから休んでなさい!」」
二人に言われて、スクちゃんは渋々とベッドに潜り込んだのだった。
* * *
「……えーと、改めて、荻野美奈です。ミーナで良いよ」
「あ、オレはディーノな。まあ知ってるっぽいけど」
「まあね」
元々知ってたのもあるけど、スクちゃんから有名なマフィアのことについてはちょっとだけ教えてもらってた。
ここは絶対に関わるな、とか、ここならいざと言う時助けてくれるかもしれない、とか。
キャバッローネはいざと言う時、スクちゃんの名前出せば一応保護はしてくれるかも、って教わってたりする。
「で、ミーナとスクアーロはどういう関係なんだ?」
「だから友達よ。私があの子に助けてもらって、それからずっと、あの子と仲良くしてる。どーよ、羨ましいでしょ?」
「……羨ましい」
……本当に悔しそうに言ったディーノ君。
ああ、様子を見ていて思ったけど、ディーノ君は、スクちゃんのことが好きなのかな。
「あなた、スクちゃんのこと好き?」
「……好き、だけど」
「どうして?」
「え?」
予想通りに、好きだと言ったディーノ君。
理由を問うと、不思議そうな顔をされたけれど、すぐに嬉しそうな顔をして、理由を話してくれた。
「んー、まずは、可愛いから」
「ほう……」
「いっつも、何するにも全力で頑張ってるから、オレに対しても全力で向き合ってくれて、その全力の姿勢が可愛かった」
「確かに、スクちゃんは可愛いわね」
「そう!心を許した奴に対しては、たまに弱音吐いたりするから、そこもまた可愛いんだよ!」
「わかる、わかるわ。普段はキリッとしてるからね。ギャップ萌よね」
「そうそう!そんなギャップ見ちゃったらこう……、庇護欲が沸いてきちゃってな……。オレが守らなきゃって思ってさー」
「無茶するからね、あの子」
「それにあいつ、結構優しいだろ?不器用だけどさ、子供にも優しいし。でー、見てると、アイツとオレの間に子供なんか出来たら、こんな風にほのぼのした家庭になったりとかするのかな~……なんて考えちまったりしてな!?」
「そこまで考えるのはキモチワルイ」
「さっきまで同意してくれてたのに!」
ディーノ君はあれかな、乙メンなのかな。
背景に花を散らしながら語っていたディーノ君をバッサリ切った。
「言っとくけど、スクちゃん、子供どころか結婚だってする気ないと思うわよ」
「うぅん……だろうなぁ……」
「それでも、スクちゃんのこと、好きでいてくれるの?」
「当たり前だろ!つーかする気ないならする気にさせるし!」
「……そっか」
ふんっ!と意気込んで宣言したディーノ君は、本当にスクちゃんの事が好きみたいで、また嬉しそうにスクちゃんの好きなところを語り始めていた。
「XANXUSにばっかり構うのはちょっと寂しいけどさ、そういう一途なところもポイントだし、XANXUSだけじゃなくてオレにもあんなに一生懸命になってくれたら良いよなあー。あ、でもちょっと冷たくされるのも照れ隠しだと思えば可愛いって言うかさ、『あー、オレこいつの事好きだな~』って思って本当に堪らねぇし」
「ヤバい、重症だ」
冷たくされて喜ぶとかドMじゃないの。
まさか跳ね馬ディーノがドMさんだったなんて……、ただの一読者だった時には予想もしてなかったぜ。
でも、それだけ彼女の事が好きなんだろうなって思うと、嬉しかった。
「ディーノ君、スクちゃんは結構寂しがり屋だから、目一杯優しくしてあげてね?」
「ん?そんなん当たり前だよ。あ、でもオレ一人じゃダメだからな!」
「え?」
「ミーナも、これからもスクアーロと、仲良くしていってくれよな。アイツが腕を失っても、マフィアやめても、オレの嫁さんになっても、子持ちになっても、お祖母ちゃんになっても、ずっとずっと、友達で居続けろよ。さっき二人の事見てて思ったんだ。スクアーロ、ミーナの事を本当に大切に思ってるんだって。絞め殺されそうになってたけど、ずっと嬉しそうだった」
「うぅん、良い話風に言ってるけど、途中凄く勝手な将来設計入ってたわよね?」
スクちゃん子持ちになってたわよ、勝手に。
でも、ああ、第三者に、私達はそう見えたのか。
大好きな大好きな、私の友達が、私の事を本当に大切に思ってそう、って、言ってくれるのって、凄く嬉しかった。
「絶対に友達やめたりなんかしないわ。一番の友達なんだもん。絶対手放したりしない。ていうか、あんたがスクちゃんに酷いことしたりしたら、私が掻っ攫っていっちゃうんだから」
「そ、そんなことするわけねーだろ!」
「どーかしらねー?悪気がなくても人を傷付ける事ってあるしー?あんたそう言うの多そうよね」
「んなことねーって!」
ちょっとからかうつもりで、そんなこと言ってみた。
でもね、えるしってるか?こいつまだ付き合ってもないんだぜ……。
で、そんな風に二人で騒いでたら、ふらっとスクちゃんが現れた。
ちなみに私達がいたのはキッチンの隣のリビングスペースで、どうやら彼女は飲み物を取りに来たらしかった。
「……コーヒー」
「オレ用意するから、スクアーロは座って待ってろよ。ミーナは?何か飲むか?」
「じゃー私もコーヒーね」
「りょーかーい」
ルンルンっとスキップでもしそうな様子で、キッチンに向かうディーノ君の後ろ姿を、スクちゃんはボンヤリと眺めている。
眉間にシワを寄せて、酷く気難しい顔をしていた。
「どしたのよスクちゃん」
「……何でもねーよ」
「悩んでる顔してるけどね?」
「……あいつと、話しててどう思った?」
「……ハハーン」
「っ……んだよ」
「べっつにぃ~?良い人だよね、ディーノ君。一途で、可愛くて」
「……うん」
スクちゃんは私の座る二人がけのソファーに座ると、私の肩に頭を凭れ掛けさせる。
よしよしと撫でてあげると、満足したように頭が離れた。
「体動かしてないから、何かつまんねぇ」
「ディーノ君と体動かしてきたら?」
「ん゙ー……、そうするかな」
「ベッドで」
「おい何でだ」
今度は軽い頭突きをもらう。
あーもう、照れちゃって、何この可愛い生き物、堪らん。
「スクちゃん悩んでるみたいだけど、」
「悩んでねーよ」
「スクちゃんは余計なこと気にしすぎるところがあるからさ。だから、たまにはあんまり考えないで、好きなように動いてみても良いんじゃないの?」
「……好きなように」
「良いのよ、周りなんか。自由に動いてみなさいよ」
「……おう」
頭突きのまんま、またコテ、と頭を預けてきたスクちゃんを撫でるけれど、今度はそのまま離れなかった。
ああ、何かこう言うの、久々だなぁ。
「……って、何イチャついてんだよ」
「あら~?ディーノ君羨ましいのかな~?まあこの席は譲らないけどね!」
「ズルい!オレもそこに入る!」
「来るなバカ」
「良いじゃねーか別にー」
「来んなバカ」
近寄られるのが恥ずかしいのか、ディーノ君の事を拒絶して、スクちゃんはずりずりと移動しながら、私の体を膝の上に乗せる。
んー……私も強くなったつもりなんだけど、この子の体には敵わないなぁ。
シャツ越しに触れる体は、程よく引き締まっていて、私の体も危なげ無く支えてくれる。
「いやん、スクちゃんったらイケメーン♡」
「るせぇよバカ」
「オレもー、オレ二人とも抱えるからー。入れてくれー」
「来んなバカ」
「スクアーロのいけずー!」
「知るか」
そのまま私の事を抱っこして、肩に顔を埋めてくるスクちゃんの顔がちょっと赤らんでいたことは、黙っておいてあげようかな。
「スクちゃん、頑張ってね」
「……ん」
小さく交わした言葉。
その数日後、電話で二人が恋人同士になったと聞いた時には、私は嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「スクちゃん、今、幸せ?」
『……し、あわせ』
辿々しい言葉に、電話の向こうで赤くなってるだろう彼女を想像して、思わず笑ってしまった。
貴女に救われて、ずっと貴女の傍で生きてきた。
私には力がなくて、ろくに貴女を守れたりはしなかったけれど、貴女の幸せを見届けられて、私も幸せなの。
「近い内に、直接詳しい話聞かせてね?」
『すぐに行く。ミーナ、ミーナに一番、聞いてほしい』
その言葉に、驚いた。
ディーノ君にスクちゃん取られちゃって、ちょっと寂しいな、なんて思ってたけど、当分、私が寂しがる暇はないみたい。
スクちゃん、好き、大好きだよ。
私達は産まれた国も、世界も違うけれど、貴女は私の、一番の友達。
大切な大切な、太陽のようなひとなんだよ。
だからきっと、幸せになろうね?