太陽は夜にも昇る

私の名前、荻野美奈。
何故か突然、イタリアに来ていた。
訳もわからぬまま、そこで私は捕まって、商品として売りに出された。
今どき、人身売買なんて、あるんだ。
うっすらと霞掛かった頭で、現実逃避をしてみても、状況は変わらない。
私は買われた。
それも結構高い値段で。
前に、日本人とか東洋人って人気が高いって聞いたことがあるような気がする。
どこでだったかな。
まあ、どうでもいっか。
私を買ったのは、どう見ても堅気じゃない厳ついオジサンだった。
頬に古い大きな傷の走る、典型的なその手の人間。
男が私を買った目的は、言わずともわかるだろう。
家に着くと、私は小さな部屋に監禁された。
ベッドと衣装ダンス、小さなテーブル、そして壁の高い位置に小さな明かり取りの窓があった。
男の話す言葉はイタリア語で、何を言っているのかはわからなかったけど、ここが私の部屋で、男の気が向いたときには「相手」をしなければならないことはわかった。

「さい、あく……」

ベッドの上で、裸に毛布だけ被って、涙で腫れた目を乱暴に擦った。
泣き喚いたせいで、喉がヒリヒリと痛んだ。
体も痛い。
立ち上がれない。
また、視界が涙で霞んだ。

「なんで……?なんで、私なの……?」

ただいつも通りに過ごしていただけなのに、突然気付いたら見知らぬ土地にいて、こんな目にあって。
理不尽だ。
私が一体、何をしたって言うのだろう。
きっと今日もまた、あの男はくる。
泣きながら毛布にくるまった。
それから約3ヶ月、私はそんな生活を続けることになる。
その絶望の底にいた私に、優しく手を差し伸べてくれたのは、首元に真っ赤なマフラーを巻いた、真っ黒なヒーローだった。
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