白銀に手を伸ばす
※オマケ※
その日、ヴァリアー邸は上を下への大騒ぎになっていた。
日付も変わって暫く経った深夜に、酒の匂いを纏わせて帰ってきた幹部達が原因である。
いや、幹部の一人と、我らがボスが原因であった。
スクアーロとXANXUS。
酔い潰れて爆睡するスクアーロを、コレまた正気を失ったXANXUSが担いで、二人っきりでXANXUSの寝室に入っていってしまったのである。
寝室に二人きり。
だが男同士で、しかもあの巨乳大好きのXANXUSに限って間違いは起こらないだろう、と言うのが専らの意見であった。
だがスクアーロの直属の部隊である、雨部隊と情報部隊だけは違った。
自分達の可愛い可愛い隊長なら、ボスに襲われたっておかしくない。
そんなことを真顔で言い切る彼らは、とても正気には見えない。
周りの者は、スクアーロを見るお前達の視界には隊長大好きフィルターが掛かっているのだと、お前達の言う可愛い可愛い隊長はこの間平気な顔で新人を含めた20人の隊員と戦って無傷で勝利していたぞ、と言おうとしたが、彼らの勢いの前には口をつぐむしかなかった。
「いくらXANXUS様でも、隊長の色気には目覚めざるを得ないと思うんです」
「だがXANXUS様の部屋に侵入して、隊長を奪還するなど……オレ達には無理だ」
「じゃあ諦めろって言うんですか!?」
「隊長が無理矢理されて、立ち直れなくなったらどうするんですか!?」
「そうならないために今からオレ達に出来ることをするんだ!情報部隊!」
「任せろ!オレ達の用意したこの機械を使えば、ドアの外からでも部屋の中の会話を聞くことができる」
「その機械で……一体どうするんだ?」
「中の会話を聞き、そこで隊長の無事が確認できれば良し……。そして隊長のピンチがわかったら、その時は……」
「……我々で捨て身の攻撃を仕掛け、その隙に隊長には逃げていただく」
「なっ……!死ぬ気かお前!」
「だが隊長の為ならば仕方ないだろう!!それとも貴様、隊長がボスに良いようにされるのを良しとするのか!?」
「!……いいや、行こう。オレ達の隊長を守るぞ!」
だいぶ、周りの見えていない会議を終え、彼らはボスの私室の前まで移動した。
情報部隊の男がドアに機械を張り付けると、付属のスピーカーから声が聞こえてきた。
―― ザッ……ザザッ……
『……ゔっ!てめっ、なに、しやがる!!』
『大人…くして…』
『っざけんなぁ!オレは出てく!!離せ!』
スクアーロの怒鳴り声、そしてXANXUSの苛立った声が聞こえた瞬間、隊員達はハッと息を飲む。
『抜……けぇ…ね……え!』
『うるせ……カス!耳元で叫んで……ゃねぇ、カッ消す…』
『っせぇ!離せ!』
ザワザワと隊員達の声が波立つ。
冷や汗を流しながら、若い隊員が言った。
「これは、……どういう状況なんでしょう!?隊長は……隊長は大丈夫でしょうか!?」
「ええい、騒ぐな!!今聞こえてきた事を整理しろ」
「まずスクアーロ様が『なにしやがる』と言っていました。その後XANXUS様の声で『大人しくしろ』という内容の言葉が」
「スクアーロ様はどうやら嫌がって暴れているようですね……」
「その後、『抜けねぇ』と言う言葉が聞き取れました。耳元で叫ばれXANXUS様もご立腹のようですね」
答えたのは情報部隊の双子隊員だ。
彼らの言葉に、他の隊員達に衝撃が走った。
隊長大好きフィルターの掛かっている彼らの脳は、容易に間違った結論を弾き出したのだった。
「た、隊長が襲われてます!早く中に!!」
「中にって言うか……隊長がナカになんかあのあれボスのボスがっ!!」
「もっ、もちつけぇ!」
「あんたが落ち着け!とにかく部屋に突入するぞ!」
リーダー格の男がドアノブに手を掛け回そうとした時だった。
ガチ、と固い音が鳴り、開かないドアを前に全員に静寂が落ちた。
「……」
「……」
「……鍵ぃぃぃい!!情報部隊!」
「いい、い今開けます!」
ガチャガチャと道具を入れた鞄をまさぐる音に混ざり、部屋からの声が聞こえてくる。
『…っでぇ!!なにし……る!?』
『テメー……オレのベッドに血なん…つけてんじゃねぇ……』
『テメー…せいで出たん…ぁ!!』
「ちょっとぉぉお!隊長大丈夫なんですか!?し、る?しるってなんですか!?汁!?」
「血が出たって隊長はもうっ!もう!」
「最後まで諦めるな!」
隊員達は慌てふためき、中には神に祈りを捧げ始める者もいる。
マフィアに信じる神がいるのかは、不明だ。
『わ…っ!?』
『洗っとけ…』
『っ……クソ、わぁ……よ!!』
隊員達の様相は、まさに阿鼻叫喚、という言葉がぴったりであった。
地面に突っ伏すもの、逆に頭を抱えてブリッジを決めるもの、いっそ悟った表情で合掌しているもの。
そして……
「鍵開きました!!」
「クソッ!!突入するぞ……!」
「突に……」
だが彼らがドアを開こうとした時、ドアノブが勝手に回り、開いた……。
「……あ゙あ?何してんだテメーら」
「たっ、隊長ー!!」
「隊長だ!隊長が生還なされたぞ!!」
「隊長!中でナニしてたんですか!?ボスに掘られたんですか!?」
「殺すぞテメー。何言ってやがんだぁ」
突然中から現れたのはスクアーロだった。
迫ってきた隊員をボコッと殴り、怒ったような顔で歩き出す彼を追い、隊員達は鬼気迫る顔で問い詰める。
「いったい中で何をなさっていたのか、答えてください隊長!!いたっ!」
「はあ!?」
「『大人しくしろ』とか『離せ』とかって!はぶっ!?」
「……ああ、あれかぁ。何ってなんか……何だろうなあれ?」
「ハッキリしてくださいよ!抜けないとかって言ってましたよね!?何入れられたんですか!?ナニ入れられたんですか!?ぐへっ!!」
「はあ?入れられたって……、ザンザスに捕まったから、腕ん中から抜けようとしただけだぞぉ」
「え……?いやでも、血が出たって……。あいたっ!!」
「顔面殴られて鼻血出たんだぁ。ほら、シーツにも血がついて怒られた。つぅかテメーら、外で聞いてたのかぁ?つかあの分厚いドアで良く聞こえたな」
「え!?いや、それはまあ、ヴァリアーですからね!」
しつこく付きまとってくる隊員達を鬱陶しそうに叩いたり蹴ったりしながら、不思議そうに聞くスクアーロ。
それを笑って誤魔化しながら、隊員達はこそこそと小声で話す。
「ちょっ、ちょっと!どういうことですか!?」
「隊長平然とした顔で出てきたぞ!?」
「こ、これは……オレ達の勘違い……?」
「と言うより、考えすぎですね」
「ええ、考えすぎでしょう」
「まあ、隊長が無事ならそれで……」
「良い、か……」
「まあ、無事なら……」
「なあ?」
悩ましげに頷き合うガタイの良い男達という絵面は、見ていてあまり気分の良いものではない。
本人達がそう思い、リーダー格の男は直ぐに解散を言い渡した。
彼らはヴァリアー。
最強の暗殺部隊として仕事もたくさんある。
渋々と散開していった隊員達を見送り、今日は非番であった一人の隊員がスクアーロに近寄る。
「でも、驚きましたよ隊長。突然ボスに連れられてその後、暫く出てこなかったんですから。……本当に大丈夫だったんですか?」
「……たぶん?」
「ええ……、たぶんて何ですか。オレ達滅茶苦茶心配したんですよ?」
「なんか、夜ここに帰ってくるまでの記憶が曖昧でなぁ……」
「え!?」
「なんか頭痛いしよぉ……」
「えぇ!!早く休んだ方が良いですよ。隈出来てるみたいですし、なんか体も……あれ?」
と、突然隊員は足を止め、スクアーロの体を足から頭までザッと見回す。
スクアーロもまた、足を止めて、不思議そうに見返した。
「あ?」
「……隊長、何かホッソリしましたか?」
「は……」
「なんか胸板が薄いような気が……、まさか痩せ……」
「ほっそりなんてしてねぇ!!」
「え、ぶぐぉっ!?」
何の前触れもなく、唐突にスクアーロの拳が隊員の顔面に炸裂した。
ダッと駆け出し逃げていくスクアーロとは逆に、他の隊員達が顔を真っ青にして駆け寄った。
「おい!どうした!?」
「ちょっ、鼻折れてるぞ!?」
「医者のとこ運べ!」
後にスクアーロはその隊員の元へ謝罪に訪れたが、彼は倒れる前後の記憶を失っていたのだった。
|┌^o^)┐ホモォ…?
だってスクちゃん男の子みたいだからぁ……どうしてもそう見えちゃうのよねん♡BYルッス
その日、ヴァリアー邸は上を下への大騒ぎになっていた。
日付も変わって暫く経った深夜に、酒の匂いを纏わせて帰ってきた幹部達が原因である。
いや、幹部の一人と、我らがボスが原因であった。
スクアーロとXANXUS。
酔い潰れて爆睡するスクアーロを、コレまた正気を失ったXANXUSが担いで、二人っきりでXANXUSの寝室に入っていってしまったのである。
寝室に二人きり。
だが男同士で、しかもあの巨乳大好きのXANXUSに限って間違いは起こらないだろう、と言うのが専らの意見であった。
だがスクアーロの直属の部隊である、雨部隊と情報部隊だけは違った。
自分達の可愛い可愛い隊長なら、ボスに襲われたっておかしくない。
そんなことを真顔で言い切る彼らは、とても正気には見えない。
周りの者は、スクアーロを見るお前達の視界には隊長大好きフィルターが掛かっているのだと、お前達の言う可愛い可愛い隊長はこの間平気な顔で新人を含めた20人の隊員と戦って無傷で勝利していたぞ、と言おうとしたが、彼らの勢いの前には口をつぐむしかなかった。
「いくらXANXUS様でも、隊長の色気には目覚めざるを得ないと思うんです」
「だがXANXUS様の部屋に侵入して、隊長を奪還するなど……オレ達には無理だ」
「じゃあ諦めろって言うんですか!?」
「隊長が無理矢理されて、立ち直れなくなったらどうするんですか!?」
「そうならないために今からオレ達に出来ることをするんだ!情報部隊!」
「任せろ!オレ達の用意したこの機械を使えば、ドアの外からでも部屋の中の会話を聞くことができる」
「その機械で……一体どうするんだ?」
「中の会話を聞き、そこで隊長の無事が確認できれば良し……。そして隊長のピンチがわかったら、その時は……」
「……我々で捨て身の攻撃を仕掛け、その隙に隊長には逃げていただく」
「なっ……!死ぬ気かお前!」
「だが隊長の為ならば仕方ないだろう!!それとも貴様、隊長がボスに良いようにされるのを良しとするのか!?」
「!……いいや、行こう。オレ達の隊長を守るぞ!」
だいぶ、周りの見えていない会議を終え、彼らはボスの私室の前まで移動した。
情報部隊の男がドアに機械を張り付けると、付属のスピーカーから声が聞こえてきた。
―― ザッ……ザザッ……
『……ゔっ!てめっ、なに、しやがる!!』
『大人…くして…』
『っざけんなぁ!オレは出てく!!離せ!』
スクアーロの怒鳴り声、そしてXANXUSの苛立った声が聞こえた瞬間、隊員達はハッと息を飲む。
『抜……けぇ…ね……え!』
『うるせ……カス!耳元で叫んで……ゃねぇ、カッ消す…』
『っせぇ!離せ!』
ザワザワと隊員達の声が波立つ。
冷や汗を流しながら、若い隊員が言った。
「これは、……どういう状況なんでしょう!?隊長は……隊長は大丈夫でしょうか!?」
「ええい、騒ぐな!!今聞こえてきた事を整理しろ」
「まずスクアーロ様が『なにしやがる』と言っていました。その後XANXUS様の声で『大人しくしろ』という内容の言葉が」
「スクアーロ様はどうやら嫌がって暴れているようですね……」
「その後、『抜けねぇ』と言う言葉が聞き取れました。耳元で叫ばれXANXUS様もご立腹のようですね」
答えたのは情報部隊の双子隊員だ。
彼らの言葉に、他の隊員達に衝撃が走った。
隊長大好きフィルターの掛かっている彼らの脳は、容易に間違った結論を弾き出したのだった。
「た、隊長が襲われてます!早く中に!!」
「中にって言うか……隊長がナカになんかあのあれボスのボスがっ!!」
「もっ、もちつけぇ!」
「あんたが落ち着け!とにかく部屋に突入するぞ!」
リーダー格の男がドアノブに手を掛け回そうとした時だった。
ガチ、と固い音が鳴り、開かないドアを前に全員に静寂が落ちた。
「……」
「……」
「……鍵ぃぃぃい!!情報部隊!」
「いい、い今開けます!」
ガチャガチャと道具を入れた鞄をまさぐる音に混ざり、部屋からの声が聞こえてくる。
『…っでぇ!!なにし……る!?』
『テメー……オレのベッドに血なん…つけてんじゃねぇ……』
『テメー…せいで出たん…ぁ!!』
「ちょっとぉぉお!隊長大丈夫なんですか!?し、る?しるってなんですか!?汁!?」
「血が出たって隊長はもうっ!もう!」
「最後まで諦めるな!」
隊員達は慌てふためき、中には神に祈りを捧げ始める者もいる。
マフィアに信じる神がいるのかは、不明だ。
『わ…っ!?』
『洗っとけ…』
『っ……クソ、わぁ……よ!!』
隊員達の様相は、まさに阿鼻叫喚、という言葉がぴったりであった。
地面に突っ伏すもの、逆に頭を抱えてブリッジを決めるもの、いっそ悟った表情で合掌しているもの。
そして……
「鍵開きました!!」
「クソッ!!突入するぞ……!」
「突に……」
だが彼らがドアを開こうとした時、ドアノブが勝手に回り、開いた……。
「……あ゙あ?何してんだテメーら」
「たっ、隊長ー!!」
「隊長だ!隊長が生還なされたぞ!!」
「隊長!中でナニしてたんですか!?ボスに掘られたんですか!?」
「殺すぞテメー。何言ってやがんだぁ」
突然中から現れたのはスクアーロだった。
迫ってきた隊員をボコッと殴り、怒ったような顔で歩き出す彼を追い、隊員達は鬼気迫る顔で問い詰める。
「いったい中で何をなさっていたのか、答えてください隊長!!いたっ!」
「はあ!?」
「『大人しくしろ』とか『離せ』とかって!はぶっ!?」
「……ああ、あれかぁ。何ってなんか……何だろうなあれ?」
「ハッキリしてくださいよ!抜けないとかって言ってましたよね!?何入れられたんですか!?ナニ入れられたんですか!?ぐへっ!!」
「はあ?入れられたって……、ザンザスに捕まったから、腕ん中から抜けようとしただけだぞぉ」
「え……?いやでも、血が出たって……。あいたっ!!」
「顔面殴られて鼻血出たんだぁ。ほら、シーツにも血がついて怒られた。つぅかテメーら、外で聞いてたのかぁ?つかあの分厚いドアで良く聞こえたな」
「え!?いや、それはまあ、ヴァリアーですからね!」
しつこく付きまとってくる隊員達を鬱陶しそうに叩いたり蹴ったりしながら、不思議そうに聞くスクアーロ。
それを笑って誤魔化しながら、隊員達はこそこそと小声で話す。
「ちょっ、ちょっと!どういうことですか!?」
「隊長平然とした顔で出てきたぞ!?」
「こ、これは……オレ達の勘違い……?」
「と言うより、考えすぎですね」
「ええ、考えすぎでしょう」
「まあ、隊長が無事ならそれで……」
「良い、か……」
「まあ、無事なら……」
「なあ?」
悩ましげに頷き合うガタイの良い男達という絵面は、見ていてあまり気分の良いものではない。
本人達がそう思い、リーダー格の男は直ぐに解散を言い渡した。
彼らはヴァリアー。
最強の暗殺部隊として仕事もたくさんある。
渋々と散開していった隊員達を見送り、今日は非番であった一人の隊員がスクアーロに近寄る。
「でも、驚きましたよ隊長。突然ボスに連れられてその後、暫く出てこなかったんですから。……本当に大丈夫だったんですか?」
「……たぶん?」
「ええ……、たぶんて何ですか。オレ達滅茶苦茶心配したんですよ?」
「なんか、夜ここに帰ってくるまでの記憶が曖昧でなぁ……」
「え!?」
「なんか頭痛いしよぉ……」
「えぇ!!早く休んだ方が良いですよ。隈出来てるみたいですし、なんか体も……あれ?」
と、突然隊員は足を止め、スクアーロの体を足から頭までザッと見回す。
スクアーロもまた、足を止めて、不思議そうに見返した。
「あ?」
「……隊長、何かホッソリしましたか?」
「は……」
「なんか胸板が薄いような気が……、まさか痩せ……」
「ほっそりなんてしてねぇ!!」
「え、ぶぐぉっ!?」
何の前触れもなく、唐突にスクアーロの拳が隊員の顔面に炸裂した。
ダッと駆け出し逃げていくスクアーロとは逆に、他の隊員達が顔を真っ青にして駆け寄った。
「おい!どうした!?」
「ちょっ、鼻折れてるぞ!?」
「医者のとこ運べ!」
後にスクアーロはその隊員の元へ謝罪に訪れたが、彼は倒れる前後の記憶を失っていたのだった。
|┌^o^)┐ホモォ…?
だってスクちゃん男の子みたいだからぁ……どうしてもそう見えちゃうのよねん♡BYルッス