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白銀に手を伸ばす

「……」

目を覚ました途端、視界の中に白い塊が入ってきた。
……これは、なんだ。
一度目を閉じて、もう一度開ける。
白い塊は変わらず目の前にある。

「……」

自分が寝る前に何をしていたのか、思い出してみる。
零地点突破の封印から出て……いや、違う、もっと後だ。
沢田綱吉どもに喧嘩を売った……よりももっと後だ。
不様に負けて……クソ、カスの癖に何故オレが負けなければならない。
無意識に腕に抱えていたものに力を込める。

「うん゙ー……」
「……ああ?」

白い塊が身動ぎして呻き声を上げたのを見て、ようやくオレは思い出した。
カスザメども幹部に連れられて、遊園地だのバーだのに行った。
いつものように酒を飲み……、しかしその後の記憶はおぼろ気だ。
だが確か、寝る前に抱き枕を持って寝た気がする。
抱き枕……いや、これは……。

「カスザメ、だと……?」

オレが抱えていたのは、抱き枕ではなく、ぐっすり眠るカスザメの体だった。
抱き枕じゃない……だと?

「……んで、カスザメがここに居やがる」

オレの腕の中にいて良いのは、従順で美人でスタイルが良くバストがFカップ以上の女である。
……だがカッ消すのも面倒くせぇ。
抱き心地が悪いわけでもない、このまま寝るか。
モゾモゾと動いて寝返りを打とうとするカスを押さえ付けて、より落ち着く姿勢を探す。

「ん゙……、なん、だコレ……?」

しかし無理矢理押さえ付けたのがダメだったのか、カスザメはパチリと目を開けて、オレの腕を退かそうとし始めた。
カスが……、うざってーな。

「ん?……シャツ?」
「カスザメが、枕の分際でなに勝手に動いてやがる」
「んあ?……は?」

顔を胸板に押し付けていたせいで服以外何も見えなかったのだろう、カスザメはシャツを掴んで軽く引っ張りやがった。
そしてオレの声に反応して顔を上げる。
大口を開けた間抜け面。
暫くその面を眺めていたが、突然カスザメが叫んだ為、顔をしかめて耳を塞ぐ。
クソ、うるせぇ。

「ゔお゙ぉい!?なんっ!なんで、なんでお前がオレの横に!?」
「テメーがオレの隣に居たんだろうが」
「んな訳ねぇだろうがぁ!つぅかなんだコレ!?頭痛ぇ!!」

蹲って頭を抱えだしたカスザメ。
酒飲んでたし、二日酔いだろう。
とりあえずもう一度寝るために、カスザメの体を腕で締めて大人しくさせようと試みた。

「ゔっ!てめっ、なに、しやがる!!」
「大人しくしてろ」
「っざけんなぁ!オレは出てく!!離せ!」

暴れるカスザメを更に締め付けると、オレの腕から抜け出そうと、藻掻きながら叫びだした。

「抜ぅぅけぇぇねぇぇえ!」
「うるせぇぞカス!耳元で叫んでんじゃねぇ、カッ消すぞ」
「っせぇ!離せ!」

もう抱き枕としては使えないか。
仕方なく、腕を離し、離したついでにぶん殴った。

「いっでぇ!!なにしやがる!?」
「テメー……オレのベッドに血なんかつけてんじゃねぇぞ」
「テメーのせいで出たんだぁ!!」

オレの拳はカスザメの顔の真ん中に命中し、そのせいで奴の鼻から血が垂れた。
ベッドに付いた血に舌打ちをしたが、イラついたところで汚れが無くなる訳もない。
起き上がってシーツを剥がすと、ティッシュで鼻を押さえるカスに向けてぶん投げた。

「わぶっ!?」
「洗っとけ」
「っ……クソ、わぁったよ!!」

シーツを乱暴に掴み、部屋を飛び出していくカスザメ。
奴が出ていった後、部屋に武器やら防具やらが散らばっている事に気が付く。
恐らくカスザメのだが、なんでこんなもんがオレの部屋に……。
ムカついたから、全部ゴミ箱に捨てて、もう一度寝るためにベッドに倒れ込んだ。
顔を埋めた枕から、ふわりと、微かに甘い匂いがする。

「……この、匂い」

カスザメのか。

「……」

立ち上がってゴミ箱に手を突っ込み、さっき捨てたモノを取り出す。
纏めて適当な場所に置いて、またベッドに倒れ込んだ。
数秒後、枕に顔を押し付けて眠るXANXUSの寝息が聞こえ始めた。
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