お礼とそして、

「なんでオレがキスしようとする度に邪魔が入るんだ!……と、そう思ったわけだ」
「そ、そうかぁ……」

ディーノとスクアーロ、二人は数十分後、ディーノの泊まるホテルの部屋のベッドの上で、正座をして向かい合っていた。
雲雀の時、先程の黒曜ヘルシーランドの時、遡ればイタリアでキスをしようとした時も、何だかんだで邪魔が入っている。
それ以外の時はスクアーロ本人に嫌がられて、ディーノは一度足りとも自分から唇を重ねたことがないのである。
その事にだいぶ憤りを隠せないでいるディーノの前で、スクアーロは居心地が悪そうに足をもぞもぞと動かす。

「で、スクアーロ。お前もう挨拶回りは終わりなんだろ?」
「まあ……、白蘭達は向こうで話したし、後は……大丈夫、かな」
「……よし、なら今日はこの部屋に泊まれ。良いな?」
「はっ!?良くねぇよ!なんでいきなりそうなるんだぁ!?」
「誰にも邪魔されずにスクアーロと如何わしい事がしたい」
「キメ顔で言うことじゃねぇだろぉ!」

ボカっと脳天に拳を落とされ、ディーノはベッドの上でゴロゴロと転がり悶絶する。
容赦が無さすぎる。

「だって酷いと思わねーか!?いざって時に限って誰かが邪魔するんだぜ!?もう人外的な何かの意思すら感じるぜ!!」
「考えすぎだろぉ」

コロコロと転がり、ディーノはスクアーロの膝にコツンと頭をぶつけて止まる。
憮然として言ったスクアーロを見上げて、ディーノは唇を尖らせた。
まるで拗ねた子供のようである。

「スクアーロとキスしたい」
「……」
「だめ?」
「好きにしろ、ばか。……お前は、狡いんだよ……。お前なんか嫌いだ、バカ」
「じゃあする」

がばりと起き上がり、ディーノはスクアーロの肩を掴む。
さっきは混乱を呼ぶだけだった暴言も、照れ隠しだとわかっていると、愛おしさが募るだけだ。
スクアーロに覆い被さるようにして、顔を近付けた。

「おい、ボス!……っと、悪い」
「うわぁあっ!?」
「ふぐっ!?」

本日三度目の邪魔。
しかも今度の邪魔は、自身の右腕であるロマーリオだった。
そして今回は、驚いたスクアーロが反射的に拳を突き出してしまう。
その拳は吸い込まれるようにディーノの鳩尾に減り込み、あっという間に、彼の意識を奪ったのだった。
ブラックアウトしていく思考の中で、ディーノは思った。

―― 今日は、厄日だ……!

跳ね馬ディーノの厄日は、こうして(強制的に)幕を閉じたのであった……。
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