龍華様(朱とまじわれば×探偵×泥棒)
左手、怪盗キッドとか言うこそ泥からの予告状。
右手、ルパン三世なる輩からの予告状。
指定してあるものはどちらも、ボンゴレの秘宝、『七色の天空(スカイ・ディ・セッテ・コロリ)』という、7つ一揃いの宝石だ。
「……」
「スクアーロ君?」
「今すぐその石壊せば解決するよな?」
オレの素晴らしい提案は無言で却下されたのだった。
* * *
某月某日、日本。
本日は快晴なり。
だがオレの心は酷い荒れ模様だ。
「キッドは空から来る!常に監視の目を絶やすな!」
「アッアッア!今日こそはあのこそ泥めを捕まえるのじゃ‼」
「ルパンがどんな手を使って来るかわからん!総員気を引き締めてかかれ‼」
「……帰ろう」
「ちょー!!!スクアーロ待って待って待って!」
立ち去ろうとしたオレの腕を、沢田ががっしりと掴んで引き留めようとする。
それを無視してずりずりと引きずりながら、沢田だけに聞こえるように文句を言った。
「うるせぇぞドカス。オレぁ暗殺部隊であって宝石のお守りなんて専門外なんだぁ!」
「そんなこと言わないでよ!というかあの濃ゆい人達の中にオレを置いていかないで!一人にしないで!」
「あー思い出したオレ今日ザンザスと箱根に行く予定があったんだった帰る」
「嘘じゃん絶対嘘じゃん!ていうかザンザスこのホテルのスイートにいるじゃん!デートならここですれば良いでしょう!」
「デートじゃねぇわカス!」
ごちっと拳を落とすが、リボーンの暴力……もとい、教育に慣れてる沢田はびくともしない。
沢田いわく『濃ゆい人』、キッド先任刑事だとか言う中森銀三、そして今回キッドが絡むと聞いてしゃしゃり出てきた鈴木財閥相談役の鈴木次郎吉、ICPOのルパン三世先任捜査官銭形幸一。
それぞれの獲物を捕らえるために熱を上げる男達の中に取り残されたら……、まあ、悲惨だろうな。
「……ちっ!くそ、イタリア帰る前に竹寿司でただ食いしてやる……」
「あ、ありがとうぅぅ!!!」
「友達の家が荒らされることに躊躇ねぇなお前は!」
こいつもまあ図太くなったものだ。
日本でのボンゴレの責任者として、あの濃ゆい男達と対等に渡り合っている辺り、成長したのだろう。
……身長の方はチビのままだが。
しかし解せぬのは端の方で固まってる奴らだ。
「ぬぁっ!はっはー!安心してください!この毛利小五郎がキッドもルパンもまとめて捕まえて見せましょう‼」
ちょび髭のオッサン……警察ではなく私立の探偵らしい。
有名人だと聞いたが、知らんな。
「キッド様が捕まるわけないじゃない!おじ様と言えども麗しのキッド様は捕まえられないのよ~!」
鈴木財閥の令嬢だとか言う茶髪の少女。
「もう、二人ともあんまり騒がないでよね!」
しっかりした令嬢と同じくらいの歳の長髪の少女。
「……」
さっきからジトーっとこちらを見てきている眼鏡のガキんちょ。
鈴木相談役が中に入れたらしいが、あんなに簡単に素性もわからん奴らを中に入れちまって良いもんなのか。
「ああ、あの方達はね、というかあの男の子なんだけど、何回かキッドから宝石を守ってるんだって。キッドキラーとか呼ばれてて。まあどっちにしろ、今回の防犯設備を全部用意してくれて、尚かつ明日からの『7つの秘宝展』を取り仕切ってくれる、鈴木相談役の言うことには逆らえないよ……」
「カスがぁ、オレ達は天下のボンゴレだぞぉ。もっと堂々としろぉ」
「そうなんだけどねぇ……。このまま鈴木相談役とのコネクション繋ぎたいし、あんまり文句は言いたくないよね」
「けっ、生意気に」
「スクアーロに迷惑かけてるのはわかるけどさ、よろしく頼むよ」
「殺るだけ殺るが盗まれても文句言うなよぉ」
「あれ、文字変換が……オレの気のせいかな……。今回は殺しとか絶対なしだからね?」
「へーへー、わかってらぁ」
改めて仕方なしに警護を引き受ける。
今回の手筈はこうだ。
鈴木次郎吉が取り入れた警備ドローンにこのフロアと上下三階ずつのフロアを警備させる。
一番大事な宝石近辺は、このオレが一人で守る。
と言うか、宝石はオレが持つ、らしい。
それぞれが大きい7つ一揃いの宝石だが、まあ戦う上で邪魔になるほどのものではない。
あんなもの売っぱらってしまえば良いのに、面倒くせぇ。
何より面倒なのは、偽物かどうかを確認すると言って、オッサンどもがオレの頬をこれでもかとばかりに引っ張ってきたことである。
まだ頬がじんじんする。
ぜってぇ赤くなってんじゃねぇか。
やれやれとため息を吐いて、宝石を見る。
大空七属性を模した宝石は、こっちの事情も知らずに輝いている。
「お兄さん、これ全部持って守るんでしょう?」
「あ"?」
「ちょっ……コナン君!」
「どこに隠すの?」
「盗られないように隠すんだぁ。誰にも教えねぇよ」
くいっとパンツを引っ張られて、見下ろすとそこには眼鏡のガキがいた。
慌てて長髪の少女が止めに入るが、軽く手を上げて止め、しゃがんでガキの問い掛けに答える。
えー、っと不満げに言うガキをせせら笑い、逆に問い返す。
「お前ならどこに隠す?」
「え?んー……僕なら服の中に隠すかなぁ」
「あ"あ、そうだろうなぁ。オレもそうするよ……。といっても、それだけじゃまだ危ないよなぁ」
「え?」
「お"ら、そろそろ戻って大人しくしとけぇ。あのちょび髭がこっち睨んでんぞぉ」
「げっ」
慌ててちょび髭の元へ戻って行く眼鏡を見送り、時計を確かめる。
こそ泥どもの指定時刻は揃って夜の11時。
図ったかのように何から何まで同じってなると……、なんかもうこいつら獲物の取り合いで勝負でもしてるんじゃないだろうか。
指定時刻まであと30分。
そろそろ始めた方が良いだろう。
「刑事さん、鈴木相談役、そろそろ」
「ああ、そうじゃのう。ではスクアーロ警備長、宝石を持ってここで待機じゃ」
暗殺部隊なんて言えるわけないし、今日のオレはボンゴレの寄越した警備員、ということになっている。
「いざというとき動きやすいよう、服の中に隠しておきたいのですが」
「……うむ、その方が良いじゃろうな」
「それならば隠し場所は誰にも見られない方が良いでしょう。ルパンならあなたごと盗みかねませんが……、貴方も相当な手練れとか」
「私にはこんな若造がそんなにスゴいとは思えませんがねぇ」
「いえ、そんな大層なものでは。中森警部の言うように、まだ未熟者であります」
「ふ、ふむまあ、謙虚で好感の持てる男であることは認めますがな!」
うわ中森警部チョロい。
とにもかくにも7つの宝石は、服の中に潜ませることに決まった。
だがここで一つ問題が。
「しかし彼がもし、いや万が一ですが、ルパンやキッドの手先だったとしたらどうするんです?こー言っちゃあ難ですが、このロン毛君はボンゴレから寄越された警備員でしょう?こちらとしては信用するには少々情報が足りないと言いますか……」
「ふむ、毛利探偵の疑う気持ちもよぉくわかる。誰ぞ、彼に付き添って隠し場所を見ておいてくれないかね」
「あっ!あのオレ!オレが見てますから‼」
慌てたように手を上げ、沢田が主張するが、身内である沢田じゃあ周りの奴は納得しないだろう。
オレは沢田の手を掴んで降ろさせ、そして少し離れたところで見ていた眼鏡を呼んだ。
「え?僕?」
「あ"あ、このガキ……もとい、子どもならキッドだろうがルパンだろうが化けられないし、こんな子を仲間にすることもないでしょう。もしオレがこの子を人質に取って宝石を盗むなんてことがないよう、個室の前に人を用意しておけば良い。それでも不安ならば、そこの女の子を一緒に証人にしても良い。変装される可能性はあるが……、敵の仲間である可能性は極めて低い、かと」
「お、おう……」
「アッアッアッアッ!いや、お主が子どもを人質にとるような者ではないと信じよう!外に個室を用意しておる。そこで宝石を隠してくると良い」
「は、ありがとうございます」
頭を下げて、ガキに目を向ける。
「お前もそれで良いか」
「だ、大丈夫」
「え?良いの?スクアーロはそれで良いの!?」
「何でお前が慌ててやがる沢田ぁ」
ザンザスに知られなければ何てことはない。
知られたら何かプッツンされそうな気がするけれど。
アイツは今、部屋で酒飲んでるか風呂入ってるかのどっちかだから問題ない。
「んじゃあ行くぞぉ」
「うん」
とことこと着いてくるガキの歩調に合わせて歩き、個室に向かう。
さて、では文字通り、一肌脱ぐとするか。
「……え、マジ?」
「マジだマジ」
個室、服を脱いだオレを見て、顔を真っ赤にしたガキはなかなかに見ものであった、とだけ言っておこう。
右手、ルパン三世なる輩からの予告状。
指定してあるものはどちらも、ボンゴレの秘宝、『七色の天空(スカイ・ディ・セッテ・コロリ)』という、7つ一揃いの宝石だ。
「……」
「スクアーロ君?」
「今すぐその石壊せば解決するよな?」
オレの素晴らしい提案は無言で却下されたのだった。
* * *
某月某日、日本。
本日は快晴なり。
だがオレの心は酷い荒れ模様だ。
「キッドは空から来る!常に監視の目を絶やすな!」
「アッアッア!今日こそはあのこそ泥めを捕まえるのじゃ‼」
「ルパンがどんな手を使って来るかわからん!総員気を引き締めてかかれ‼」
「……帰ろう」
「ちょー!!!スクアーロ待って待って待って!」
立ち去ろうとしたオレの腕を、沢田ががっしりと掴んで引き留めようとする。
それを無視してずりずりと引きずりながら、沢田だけに聞こえるように文句を言った。
「うるせぇぞドカス。オレぁ暗殺部隊であって宝石のお守りなんて専門外なんだぁ!」
「そんなこと言わないでよ!というかあの濃ゆい人達の中にオレを置いていかないで!一人にしないで!」
「あー思い出したオレ今日ザンザスと箱根に行く予定があったんだった帰る」
「嘘じゃん絶対嘘じゃん!ていうかザンザスこのホテルのスイートにいるじゃん!デートならここですれば良いでしょう!」
「デートじゃねぇわカス!」
ごちっと拳を落とすが、リボーンの暴力……もとい、教育に慣れてる沢田はびくともしない。
沢田いわく『濃ゆい人』、キッド先任刑事だとか言う中森銀三、そして今回キッドが絡むと聞いてしゃしゃり出てきた鈴木財閥相談役の鈴木次郎吉、ICPOのルパン三世先任捜査官銭形幸一。
それぞれの獲物を捕らえるために熱を上げる男達の中に取り残されたら……、まあ、悲惨だろうな。
「……ちっ!くそ、イタリア帰る前に竹寿司でただ食いしてやる……」
「あ、ありがとうぅぅ!!!」
「友達の家が荒らされることに躊躇ねぇなお前は!」
こいつもまあ図太くなったものだ。
日本でのボンゴレの責任者として、あの濃ゆい男達と対等に渡り合っている辺り、成長したのだろう。
……身長の方はチビのままだが。
しかし解せぬのは端の方で固まってる奴らだ。
「ぬぁっ!はっはー!安心してください!この毛利小五郎がキッドもルパンもまとめて捕まえて見せましょう‼」
ちょび髭のオッサン……警察ではなく私立の探偵らしい。
有名人だと聞いたが、知らんな。
「キッド様が捕まるわけないじゃない!おじ様と言えども麗しのキッド様は捕まえられないのよ~!」
鈴木財閥の令嬢だとか言う茶髪の少女。
「もう、二人ともあんまり騒がないでよね!」
しっかりした令嬢と同じくらいの歳の長髪の少女。
「……」
さっきからジトーっとこちらを見てきている眼鏡のガキんちょ。
鈴木相談役が中に入れたらしいが、あんなに簡単に素性もわからん奴らを中に入れちまって良いもんなのか。
「ああ、あの方達はね、というかあの男の子なんだけど、何回かキッドから宝石を守ってるんだって。キッドキラーとか呼ばれてて。まあどっちにしろ、今回の防犯設備を全部用意してくれて、尚かつ明日からの『7つの秘宝展』を取り仕切ってくれる、鈴木相談役の言うことには逆らえないよ……」
「カスがぁ、オレ達は天下のボンゴレだぞぉ。もっと堂々としろぉ」
「そうなんだけどねぇ……。このまま鈴木相談役とのコネクション繋ぎたいし、あんまり文句は言いたくないよね」
「けっ、生意気に」
「スクアーロに迷惑かけてるのはわかるけどさ、よろしく頼むよ」
「殺るだけ殺るが盗まれても文句言うなよぉ」
「あれ、文字変換が……オレの気のせいかな……。今回は殺しとか絶対なしだからね?」
「へーへー、わかってらぁ」
改めて仕方なしに警護を引き受ける。
今回の手筈はこうだ。
鈴木次郎吉が取り入れた警備ドローンにこのフロアと上下三階ずつのフロアを警備させる。
一番大事な宝石近辺は、このオレが一人で守る。
と言うか、宝石はオレが持つ、らしい。
それぞれが大きい7つ一揃いの宝石だが、まあ戦う上で邪魔になるほどのものではない。
あんなもの売っぱらってしまえば良いのに、面倒くせぇ。
何より面倒なのは、偽物かどうかを確認すると言って、オッサンどもがオレの頬をこれでもかとばかりに引っ張ってきたことである。
まだ頬がじんじんする。
ぜってぇ赤くなってんじゃねぇか。
やれやれとため息を吐いて、宝石を見る。
大空七属性を模した宝石は、こっちの事情も知らずに輝いている。
「お兄さん、これ全部持って守るんでしょう?」
「あ"?」
「ちょっ……コナン君!」
「どこに隠すの?」
「盗られないように隠すんだぁ。誰にも教えねぇよ」
くいっとパンツを引っ張られて、見下ろすとそこには眼鏡のガキがいた。
慌てて長髪の少女が止めに入るが、軽く手を上げて止め、しゃがんでガキの問い掛けに答える。
えー、っと不満げに言うガキをせせら笑い、逆に問い返す。
「お前ならどこに隠す?」
「え?んー……僕なら服の中に隠すかなぁ」
「あ"あ、そうだろうなぁ。オレもそうするよ……。といっても、それだけじゃまだ危ないよなぁ」
「え?」
「お"ら、そろそろ戻って大人しくしとけぇ。あのちょび髭がこっち睨んでんぞぉ」
「げっ」
慌ててちょび髭の元へ戻って行く眼鏡を見送り、時計を確かめる。
こそ泥どもの指定時刻は揃って夜の11時。
図ったかのように何から何まで同じってなると……、なんかもうこいつら獲物の取り合いで勝負でもしてるんじゃないだろうか。
指定時刻まであと30分。
そろそろ始めた方が良いだろう。
「刑事さん、鈴木相談役、そろそろ」
「ああ、そうじゃのう。ではスクアーロ警備長、宝石を持ってここで待機じゃ」
暗殺部隊なんて言えるわけないし、今日のオレはボンゴレの寄越した警備員、ということになっている。
「いざというとき動きやすいよう、服の中に隠しておきたいのですが」
「……うむ、その方が良いじゃろうな」
「それならば隠し場所は誰にも見られない方が良いでしょう。ルパンならあなたごと盗みかねませんが……、貴方も相当な手練れとか」
「私にはこんな若造がそんなにスゴいとは思えませんがねぇ」
「いえ、そんな大層なものでは。中森警部の言うように、まだ未熟者であります」
「ふ、ふむまあ、謙虚で好感の持てる男であることは認めますがな!」
うわ中森警部チョロい。
とにもかくにも7つの宝石は、服の中に潜ませることに決まった。
だがここで一つ問題が。
「しかし彼がもし、いや万が一ですが、ルパンやキッドの手先だったとしたらどうするんです?こー言っちゃあ難ですが、このロン毛君はボンゴレから寄越された警備員でしょう?こちらとしては信用するには少々情報が足りないと言いますか……」
「ふむ、毛利探偵の疑う気持ちもよぉくわかる。誰ぞ、彼に付き添って隠し場所を見ておいてくれないかね」
「あっ!あのオレ!オレが見てますから‼」
慌てたように手を上げ、沢田が主張するが、身内である沢田じゃあ周りの奴は納得しないだろう。
オレは沢田の手を掴んで降ろさせ、そして少し離れたところで見ていた眼鏡を呼んだ。
「え?僕?」
「あ"あ、このガキ……もとい、子どもならキッドだろうがルパンだろうが化けられないし、こんな子を仲間にすることもないでしょう。もしオレがこの子を人質に取って宝石を盗むなんてことがないよう、個室の前に人を用意しておけば良い。それでも不安ならば、そこの女の子を一緒に証人にしても良い。変装される可能性はあるが……、敵の仲間である可能性は極めて低い、かと」
「お、おう……」
「アッアッアッアッ!いや、お主が子どもを人質にとるような者ではないと信じよう!外に個室を用意しておる。そこで宝石を隠してくると良い」
「は、ありがとうございます」
頭を下げて、ガキに目を向ける。
「お前もそれで良いか」
「だ、大丈夫」
「え?良いの?スクアーロはそれで良いの!?」
「何でお前が慌ててやがる沢田ぁ」
ザンザスに知られなければ何てことはない。
知られたら何かプッツンされそうな気がするけれど。
アイツは今、部屋で酒飲んでるか風呂入ってるかのどっちかだから問題ない。
「んじゃあ行くぞぉ」
「うん」
とことこと着いてくるガキの歩調に合わせて歩き、個室に向かう。
さて、では文字通り、一肌脱ぐとするか。
「……え、マジ?」
「マジだマジ」
個室、服を脱いだオレを見て、顔を真っ赤にしたガキはなかなかに見ものであった、とだけ言っておこう。